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暗闇のオアシス [ヘレン・ブルックス]

SHALOCKMEMO1279
暗闇のオアシス Dark Oasis 1994」
ヘレン・ブルックス 竹本祐子




HQB-743
16.07/¥670/200p

R-1257
96.07/¥640/156p


 原題は「暗いオアシス」
 舞台:モロッコ
 ヒロイン:サマンサ・キトゥン(キット)(25歳)/ファッションデザイン会社経営/175センチの長身,細身で短髪,グレーの瞳/
 ヒーロー:ジェラール・デュモン(35歳)/モロッコの実業家/茶褐色のつややかな髪,褐色がかった金茶色の瞳,高い頬骨,まっすぐな鼻,官能的な唇,190センチ以上の長身/
 「いわゆる一般的な見方からするとずば抜けた美人というわけではない。」少年のようなスリムな体,きっちり短くカットされた髪,ノーメイクでアクセサリーなし,それでもジェラールはキットに惹かれてしまいます。モロッコの市場でひったくりに殴られ記憶を失ってしまったキット。偶然通りかかった実業家のジェラールが助け,病院に運びます。バッグも盗まれ,記憶も失い,身分を証明するものをもっていないキットは自分が誰かも分かりません。(それでもキットという名前は思い出したんだっけ?)記憶喪失ものは,どこまでの記憶がないか,あるいはどの部分の記憶が無いかでストーリーの作り方は違ってくるのでしょうね。本人が何を覚えているのか,そして何がきっかけで記憶を取り戻すのかということも興味あることですが,記憶が無い間に起こったこともその人生の一部であり,その後の人生,記憶が回復したときに大きな意味を持ってくるのですが,それはまるで前世と現世,そして来世を行き来するタイムトラベラーのようなものかもしれません。そんな意味で記憶喪失ものとタイムトラベルものは共通点が多く,いろいろ起こってくる食い違いが読者にハラハラドキドキ感をもたらすのがなんとも良いですね。
 さて,ホテルに宿泊していた客が行方不明になったということで警察が紹介してみるとイギリス人でサマンサ・キトゥン,25歳ということが判明します。さらにデイヴィッドという婚約者がいることも。実はキットはデイヴィッドの不倫現場を見つけたキットは婚約を解消してモロッコに一人で傷心旅行中だったのです。男性に傷つけられたことによる過度の不信感。それが記憶喪失の原因ではないかという医師の診断が当たっているのですが,それも含めてキットには記憶回復の兆しは見えないままです。しかし体力の回復までジェラールの屋敷に留まるように説得され,キットも数日間屋敷に留まりながら,モロッコのいくつかの場所に観光に連れて行ってもらうのです。初めて出会った人にどうしてここまで親切にするのか,と普通ならば思うところですが,記憶の回復と体力の回復,そしてイギリスに帰ってもさてどこに行ったら良いのか,それすら見えてこないキットにとっては,ジェラールの申し出は何よりありがたいことでした。何度か誘惑ぎりぎりのところまでジェラールは水を向けるのですが,なぜかキットは初めは誘いに乗りそうでいながら土壇場で恐怖の表情を浮かべることに,ジェラールは過去にきっと大きな心の傷を受け,それがキットの態度に表れるのではないかと考えます。その原因が婚約者のデイヴィッドではないかと思っているジェラールですが,実は原因はもっともっと深いところにありました。それは,母の再婚相手,つまり義父の仕業だったのです。暴力こそ振るわれませんでしたが,ことあるごとにキットを非難し自信を喪失させることを言い続けられ,すっかり女性としての自信を失ってしまったキットでした。デイヴィッドはそれに対して毒にも薬にもならない男。つまりキットにとっては安全な男だったのです。それが,出かけた先で子供が親から虐待されているところを目撃してしまったことで,キットの記憶が深いところからわき上がってきたのでした。そしてジェラールの妹とその婚約者と四人でレストランにディナーに行ったとき,ジェラールの元恋人の超美人と出会ってしまいます。この出来事がジェラールを愛してしまったことをキットに気付かせ,しかも女性としての自信をますます喪失させることになります。振り切るようにイギリスに帰ったキット。ルームメイトのデイヴィッドの妹エマは兄のデイヴィッドよりもキットの味方をしてくれ,イギリスでの昔のような安定した生活が始まりました。
 ジェラールからはプレゼント攻勢と手紙攻勢が始まります。しかしキットはジェラールの思いに応えられないとはっきりと言ってしまうのです。やがて近づいてくるクリスマス。ジェラールからの連絡もしばらく途絶えてしまうのでした。果たしてクリスマスに奇跡は起きるのでしょうか。モロッコのエキゾチズムと継父からの間断無き虐めに深い心の傷を負ったキットの,愛による癒やしの物語です。


タグ:ロマンス

とっておきのキス [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1278
とっておきのキス A Kiss for Julie 1996」
ベティ・ニールズ 竹生淑子




HQSP-111
16.05/¥540/206p

R-1386
98.04/¥672/156p


 原題は「ジュリーへのキス」
 ヒロイン:ジュリー・ベックワース(26歳)/セントブラーボ病院秘書/澄んだ緑色の目,褐色の髪,大柄だがスタイルが良く美人/
 ヒーロー:シモン・ファン・デル・ドリースマ(?歳)/血液学専門医,教授/オランダ人,2メートル近くある長身,淡い色の金髪,目はブルー/
 またまたベティ・ニールズです。今月すでに4冊目でしょうか。父のベックワース医師が心臓麻痺で突然亡くなり,住む家以外の財産はほとんど無く,兄は実習医,弟は大学生,14歳の妹,そして母と使用人とが残されたベックワース家。ジュリーの病院秘書としての給料で母,妹,使用人のラスコンと自分の4人の生活を支えていかなければなりません。豊かな暮らしではなくなりましたが,親子4人が仲良く肩を寄せ合いながら暮らしています。病院の秘書という職業,余りぴんときませんが,自分が行く大きな病院でも秘書という存在を余り見かけないせいでしょうか。ヒーローが教授ですので秘書がいてもおかしくないのですが,病棟の回診に医師と共に立ち会って供述筆記やカルテの整理など,日本では普通看護師の仕事のように思うのですが,仕事が専門化しているヨーロッパですから,そんなシステムになっているのかもしれません。作者の作品には時々登場する職業です。前のボスの教授が体調が悪く引退してしまい,代わりにやって来たのがシモン。きびきびと仕事に打ち込み,次々と仕事を言いつけるシモンに,ジュリーは緊張しながらも手際よく仕事をかたづけていきます。その様子にシモンは感心するのですがそんなことを一言も言わずに仕事を続けるのです。いつも素っ気ない返事に自分が嫌われているのではないかと思い込むジュリー。その背景には患者にはすごく丁寧に受け答えするのに自分にはいつも素っ気ない言葉しかかけないこと,オランダでの講演出張に同道させられたのに,長い車の移動の間はほとんど会話がないこと,オランダの病院で見かけた長身の美女にシモンが愛情のこもった態度で接していたことなどから,自分を嫌っていると思い込み,自分がシモンに惹かれているにもかかわらず期待してはいけないと自分に言い聞かせなければならなかったからでした。大きな事件としては病院で火災が発生し,古いカルテを捜していたジュリーが屋根裏の倉庫に閉じ込められてしまったとき,天窓を壊してシモンがジュリーを引き上げてくれ,かすり傷で済んだことが挙げられます。それまで何度もジュリーの家を訪れジュリーの家族と食事を共にしたり,母と妹も含めてショッピングやオペラに誘ってくれたりと,普通であれば恋人以上のことをシモンはしてくれていたのですが,ジュリーはそんなシモンの行動を自分に対する好意の表れだとは見抜けませんでした。ただ自分たちの経済的苦境を哀れんでくれるだけだ,オランダには愛し合う相手がいるのだと思い込んでいるのです。火災の翌日ジュリーの家を訪れたシモンを外に送りに来たジュリーの母はシモンに娘をどう思っているのか率直に尋ねると,「愛していて結婚したいと思っている」という言葉が返ってきます。こんなときにもジュリーの母の素晴らしいところは使用人のラスコンとちょっと情報を交換し合うだけで大騒ぎしない,ましてやジュリーには何も言わないところです。やがて二人の関係は落ち着くところに落ち着くでしょう,と考える辺りがすごく大人の対応です。ベティ・ニールズ作品の非常に洗練されているのはこんなところではないでしょうか。一人ジュリーだけが知らずに周囲を周到に固めていくシモン。そしていつものごとく終わりは突然に・・・。


タグ:ロマンス

ロマンスは想定外 [ジェシカ・ハート]

SHALOCKMEMO1277
ロマンスは想定外 Hitched ! 2012」
ジェシカ・ハート 上村悦子





 原題は「引っ掛け」
 ヒロイン:フリス・テイラー(28歳)/土木技師/計画づくりの天才,白くて薄い肌ですぐに赤くなる/
 ヒーロー:ジョージ・チャロナー(32歳)/敷地管理人,大銀行頭取の息子/ほっそりした体つき,くすんだ金髪,真っ青な目/
 ウェラビー・ホールの新しい会議場とビジターセンターの建設工事の現場監督を務めている女性土木技師フリス。母を亡くし,頼りになるのは自分だけ。実業家の父からは疎まれ,義理の妹とは仲が良いものの社交界の寵児である妹サフロンに世間の注目は全部集まってしまうし,二人は似てもいない。話しかける相手は仕事の相手か「オードリー」と名づけた自分の愛車だけ。そんなフリスに,いつもふらっとやって来ては自分をからかうジョージ・チャロナーに腹を立てながらも,次第に惹かれていってしまいます。ジョージも学生時代の自堕落な生活がたたり,一族に迷惑をかけたと言われ勘当同然に家を追い出されたところを爵位を継いだ親友のウェルビー卿が拾ってくれ,とりあえず彼の領地の管理人に収まったのでした。ジョージは女性が誰しも振り向くハンサム青年。目立たず,普段は土木現場にいて,女性らしい服装もしていないフリスにしてみればそんなジョージが自分に目を向けるはずがないと,ジョージの誘いをことごとく断るのですが,ジョージはそんなフリスの中に女性らしさや自分の誘いに乗ってこないことへの関心がますます高まっていくのでした。フリスの義妹サフロンの結婚式の付添人のリーダーが急に式に出られなくなり,代わりに義姉のフリスにその役割を頼んできたフリス。混乱し泣きじゃくるフリスにウェルビー卿が感嘆の目を向けひたすら慰めようとします。初めはその申し出を断るフリスですが,今までもサフロンの頼みを結局は引き受けてしまうフリスでした。今回もジョージの提案でウェルビー邸で式の前のパーティを開くことになり,その計画をするフリスですが,パーティ当日自分をエスコートする男性がいません。ジョージがその役割を引き受けてくれますが,その見返りとして自分を世話し可愛がってくれていた祖母の誕生パーティに一緒に行ってくれと頼まれます。こうして互いに惹かれ合いながらも計画にない恋愛,婚約,結婚,という筋道を踏みたくない二人。一時的な便宜的な恋人となるのですが・・・。
 劣等感を抱え,人生の計画をきちんきちんと積み重ねて生きてきたフリスが,ジョージとの交流によって人間らしさを取り戻していき愛に生きるようになる成長譚です。最後のジョージの決断がスケールが大きく読者を驚かせます。そして最後の二人の会話がいかにも気が利いていて読後感のいい作品です。


タグ:イマージュ

魅惑の黒い瞳 [キャスリン・ロス]

SHALOCKMEMO1276
魅惑の黒い瞳 The Boss's Mistress
( Mistress Material 2 ) 1998」
キャスリン・ロス 久坂 翠




HR-289
10.09/¥600/156p

R-1680
01.05/¥672/156p


 原題は「ボスの愛人」
 ヒロイン:ローラ・テイラー(32歳)/インテリア・デザイン・コンサルタント/スイカズラと薔薇の匂い,長い黒髪,豊かな胸,ほっそりした腰/
 ヒーロー:ローガン・パワーズ(37歳)/多国籍企業経営者/角張った顎,黒い瞳/
 電子書籍で復刊で6月に出た作品です。オフィスものはちょっと離れていたように思い,読んでみました。面白かったです。シングルマザーと買収した会社の新社長との出勤途中のちょっとしたきっかけから始まり,会社での出会い,そして恋愛へと発展的に二人の導線が交わっていくところがなんとも心地よく,まさにロマンス小説の王道を行く作品だと思いました。二人の子供を抱えるシングルマザーのローラの恋愛に慎重なのに,ヒーローのローガンに惹かれていく様子,かつて妻に裏切られ二度と結婚しないぞと思っていたローガンが出会ったときからローラに惹かれ,二人を応援していく子供たちやローラの母,そして会社の面々,ローガンの妹など周囲のあたたかい人々の視線で二人が自然に結ばれていく様子がホンワカした雰囲気を醸し出しています。ちょっと言いお話を聞いた,という感じの愛らしい作品です。舞台がアイルランドのダブリンとニューヨーク。大陸を挟んで生活する二人,そして二人の子供と母親を抱えたヒロインということで未来はないように思えるのですが,愛は全ての障害を克服する,ということのようです。


タグ:ロマンス

月明かりのタバサ [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1275
月明かりのタバサ Tabitha in Moonlight 1976」
ベティ・ニールズ 森 香夏子





 原題は「月明かりのタビサ」
 ヒロイン:タバサ(タビー)・クローリー(25歳)/主任看護師/平凡な顔立ち,低い鼻に大きな口,榛色の目,茶色の髪/
 ヒーロー:マリウス・ファン・ビーク(38歳)/オランダ人整形外科専門医/スタイル抜群,長身,彫りの深い顔立ち,ライトブラウンの髪,秀でた額,穏やかなグレーの瞳/
 「tabitha」をどうして邦訳ではタバサとしてしまったのだろうか。編集部に聞いてみたいところですが・・・。作者らしい看護師と年の離れたオランダ人医師という設定です。病院の医師が転んで両膝を怪我してしまいしばらくの間オランダ人医師が代診でやって来ます。病院では医師や周囲の看護師たちから絶大な信頼を寄せられている主任看護師タバサ(タビー)は15歳の時母が亡くなり,それから5年後に父が再婚。20歳で見習い看護師だったタビーは病院のある町から50キロほど離れた大聖堂のある町の実家チッドレイクには週末の休みの時ぐらいしか帰宅できないでいます。その父も亡くなり,家には継母と連れ子のリリスだけになっています。家は父が自分に残してくれたはずなのに継母は自分のものだと主張。継妹のリリスは誰しも振り向くような美貌の持ち主で,父亡き後継母はタビーと自分の娘リリスをしょっちゅう比較し,目立たない仕事ばかりの愚かな娘と貶めるようなことを平気で言うようになっています。他人の前では一応小声で言うだけですが,家族だけになると平気でタビーを非難しています。かつて家政婦をしていたメグもたちまち家から追い出してしまい,タビーは病院の近くのアパートでメグと一緒に暮らしているのでした。意地悪の継母と外見ばかり気にする姉妹というまさにシンデレラ的設定。おとぎ話を地で行くストーリー展開です。パーディでヒーローと踊る場面も登場し,そしてスタイル抜群で仕事が出来るタビーは泳ぎも得意。アウトドア派のタビーですが読書も好きでヒーローとは趣味もしっかり合います。しかし自分は継妹と比較して目立たず美しくもないとすっかり自信を失っているヒーローを継妹が追いかけているのも苦々しくは思っていても,いつも自分が身を引いてしまいます。そんなタビーに自信を持たせるためにヒーロー,マリウスはいくつかの企画をします。怪我をした病院の医師ビル・レイナード夫妻や病院に運び込まれた自分の恩師ジョン・バウにも協力を仰ぎ,タビーの自信回復作戦を実行しますが,果たしてそれは成功するのでしょうか。ベティ・ニールズ流現代のシンデレラ物語です。今回作品整理をしながら何冊か作者の作品を購入しましたので,合間合間に読んでいきたいと思います。


タグ:イマージュ

王と不器用な愛人 [アビー・グリーン]

SHALOCKMEMO1274
王と不器用な愛人 An Heir Fit for a King
( One Night with Consequences 11 ) 2015」
アビー・グリーン 結城玲子





 原題は「王にふさわしい跡取り」
 ヒロイン:レイラ・アマール・ラクシュミ・ヴェルギーズ(?歳)/調香師,「ハウス・オブ・レイラ」経営者/かすかにオリーブ色がかった肌,通った鼻筋,ふっくらした唇,華奢な顎,高い頬骨,黒髪,エメラルド色の瞳,170センチ以上の長身,ベジタリアンだが魚は食べる/
 ヒーロー:アリクサンダ(アリックス)・ソール・アルマリック・サン・クロワ(?歳)/サン・クロワ国国王,実業家/グレーの瞳,浅黒くオリーブ色がかった肌,高い頬骨,官能的な口元,彫りの深い目鼻立ち,太く黒々とした眉,180センチ以上の長身,短く刈り込んだ黒髪/
 本作のヒロインはロマンス作品には余り登場しないインド系の美女でパリのヴァンドーム広場のホテル・リッツの向かい側のビルにある香水店「ハウス・オブ・レイラ」の経営者です。母が若い頃未婚の母となり,自立して生きることを余儀なくされたレイラが母が残した建物で始めた店舗です。店舗の上階のフラットに住み,向かいのホテルの様子が店からもフラットからも見渡せる絶好の場所にあります。ある日ロールスロイスから降り立った男性,それがヒーローのアリックスでした。アリックスはレイラの店にやってきて愛人にふさわしい香水を注文します。母が愛人として実父から捨てられた過去を持つレイラは「愛人」という言葉に敏感に反応してしまい,さりげなくちょっと意地悪な商品を紹介するのですが・・・。そしてロールスロイスから送れて降り立った有名なモデルにも冷たい態度を取ってしまいます。その後店を閉めてフラットからホテルの上階を見ていると,先ほどのアリックスがあのモデルと部屋にいるのが見え,思わず双眼鏡で様子をうかがってしまうのですが,カーテンが閉められ,その後の様子は分からないでしまいます。翌日ホテルから香水を届けて欲しいと注文があり,高級スイートに行ってみると注文主は昨日のアリックスでした。自分にふさわしい香水を注文されたレイラ。この時すでにレイラはアリックスのこれまで出会ったことがないほどの男性的魅力を感じてしまいますが,かつて婚約者に捨てられ,男全般に対する信用を母子二代に渡って失ってきたレイラはその思いを必死で振り切ろうとしますが,しかし自分の体はその決意と反対の方向に反応してしまうのでした。昨晩レイラはアリックスの正体をインターネットで調べ上げ,短期間で次々に相手を取り替えてしまうプレイボーイだという知識を得ていたのですが・・・。アリックスもまた一度見た瞬間からレイラのエキゾチックで男性を虜にしてしまう美しさに惹かれてしまうのでした。アリックスは実はサン・クロワ国の国王,しかも亡命中の国王だったのです。現在は資産運用で資産家となり何不自由なく生活をしていましたが,祖国では今の軍事政権から王政に復活しようとする動きがあり,その国民投票が数週間後に行われようとしていたのでした。現政権にアリックスの復活の動きが読まれてしまうと邪魔をしようとする動きが活発化するため,アリックスは敢えて政権に興味が無く女性を筆禍得取っ替えしている遊び人だと思わせるためにプレイボーイの生活をしていたのでした。祖国には主席補佐官のアンドレス・バルサクを中心に王政復活のための準備が着々と進められていましたが,例のモデルをアリックスがすぐに追い出してしまい,レイラに興味を持ったことを知らされて,アリックスが本気で政権復帰後の王妃捜しをしていることを知るのでした。食事に誘ったり,自分に所有するカリブ海の島で休暇を過ごしたりとレイラを次々に籠絡する手段を繰り出すアリックス。しかしレイラはアリックスが誰にも伝えていない国王としての本当の望みや過去の忌まわしい事件について,なぜか話してしまう上手な聞き手であり,そして王妃にならないかという誘いにも全く興味を示さないのです。このレイラの態度に逆に魅力を感じ,また思いどおりにレイラの気持ちを自分に向けられないことにいらだつのです。アリックスと関係を持つまでまだ経験の無かったレイラですが,かつての婚約者にも深い関係を伸ばし伸ばしにしてきて,始めて自分から進んで身を任せたレイラは,その結果の妊娠にも自分一人で責任を取ろうとします。母と同じ愛人と呼ばれることにはなりたくないと思いつつも,自分の体の中で育つ命を実感したとき,母の気持ちを理解できるようになるのでした。アリックスが補佐官アンドレスと話していた,自分を利用しようとしていたことを立ち聞きしてしまったレイラ。アリックスに怒りの余りアリックスの元を去ろうとしていたのですが,逆に両親揃ったところで子供を育てようという言葉にまたもや負けてしまい。遂には結婚することを承諾してしまうのでした。愛のない便宜的結婚。しかしそれも運命だと諦めかけていたとき,新聞にアリックスとレイラの記事が載ってしまいます。その記事にはレイラの実父であるフランス大統領候補者の名前も,そしてアリックスの王権復帰も,妊娠のことも・・・。父のことを知らせなかったとアリックスは怒るのですが,レイラもまた王権復帰のことを自分に黙っていたことを責めるのでした。二人の別れが決定的になろうとしたとき,アリックスは自分が父と弟を殺された過去のことから人を愛する気持ちを失っていたことに気付くのでした。
 背筋を真っ直ぐに伸ばし堂々と王妃としてパーティに顔を出すレイラには,やはり政治家の娘として血が流れており,周囲の人々も魅了する美しさと暖かさを備えており,ベストヒロインだと思います。MB版の表紙モデルさんはちょっと大人っぽ過ぎて,レイラの雰囲気には合いません。HQ版=邦訳版のモデルさんの方がレイラの上品さや愛らしさを充分に表しているように思います。2014年からのアビー・グリーンの新作邦訳はすべて読んでいますが,本作は作品群の中で群を抜いて完成度が高くロマンス作品としての王道を行く秀作だと思います。


タグ:ロマンス

雨の日の出会い [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1273
雨の日の出会い Never the Time and the Place
(ベティ・ニールズ選集 9) 1985」
ベティ・ニールズ 片山真紀




I-2424
16.06/¥710/156p

I-1709
04.10/¥672/156p


 原題は「しかるべき時としかるべき場所」
 ヒロイン:ジョゼフィン(ジョー)・ダウリング(25歳)/婦人科病棟看護師長/グレーの瞳,優しい口もと,大柄で大きな目/
 ヒーロー:ユリアス・ファン・タクス(34歳)/外科医/ブルーの目,野性味を帯びたハンサムな顔立ち,短く刈られた白髪交じりの頭,立派な鼻,/
 親友のサー・フォーサイスを訪ねる途中田舎の道を車で走っていたユリアスは,雨の日の道路の真ん中で犬と共にいる一人の女性と出会います。それが運命の女性ジョゼフィンでした。婚約者に去られた沈んでいたユリアスとその時は婚約中だったジョゼフィンはロンドンのセント・マイケルズ病院で再会します。婦人科病棟の医師ドクター・ブルが出張で留守にする2カ月間,代診を務めることになり,オランダから来たのでした。外科の専門医としてオランダばかりでなくイギリスでも医師免許を持ち,時折講義や手術を依頼されるユリアスは,どんな女性からもうっとりと眺められ,診察を受けた患者からも厚い信頼を受けていきます。あの雨の日に出会って良い印象を持たなかったジョゼフィンも患者に対する真摯なユリアスの対応には感心し,信頼を寄せるようになって行きます。ところで婚約中のジョゼフィンですが,相手の医師マルコムとの結婚式を目前に控えていたにもかかわらず,自分の都合に合わせるよう勝手に物事を進めていくマルコム,そして義母となるマルコムの母とはそりが合わず,結婚を目前にして不安に日々を過ごしていました。患者とその夫たちの様々な関係を日々見ているうちに,このまま結婚しては自分は幸せにはなれないと気付くのでした。ジョゼフィンの両親もこの結婚には反対こそしないまでも余り乗り気ではありません。1週間ほど会えなかった間についにジョゼフィンはマルコムとの婚約を解消すべきだという結論に達し,それをマルコムに思い切って告げたのでした。ところがマルコムは嘲りの言葉と共にそれをアッサリと認め,去って行ってしまうのです。どうやら,このマルコム,マザコンの典型のような男だったようです。二人の婚約解消は瞬く間に病院中に知られることになります。周囲が気を遣ってくれ,ユリアスも打ち合わせと称して食事に誘ってくれたり,休暇を取るべきだと強く勧めたりとジョゼフィンに何かと気を遣ってくれる様子に,ジョゼフィンもなにか期待めいたものを感じるようになります。しかし,病院内ではあくまでも医師と看護師長という枠からはみ出るようなことはしたり言ったりすることがありません。プライベートなときは優しい言葉をかけられても仕事場ではまた冷たい態度に戻るユリアスにジョゼフィンは期待と落胆を何度も繰り返すのでした。そして休暇に入ろうとしていたジョゼフィンにユリアスは「結婚してくれないか」とささやくのでした。聞き間違えかと思ったジョゼフィン。急には応えられないだろうからしばらく考えてみてくれと言うユリアスの言葉に戸惑うジョゼフィン。そしてドクター・ブルの出張期間が終わり,ユリアスも病院を離れる日がやってきました。あの申し出に返事をしなければならないタイムリミット。ジョゼフィンはユリアスのことを何も知らないことに不安を覚えつつも承諾してしまうのでした。マルコムの時はあんなに自分を気遣ってくれたことはないということと,どんな女性からも好かれるユリアスとの違い,そしてかつて婚約していた女性とはどうなっているのかということ,オランダで暮らさなくてはならなくなるという結婚後の生活,そして何より「愛しているから結婚」というのではなく,互いに気軽に話ができ,忙しい医師の仕事も理解してくれているという都合を優先させた結婚理由を不安に思ったのでした。ユリアスが去った翌週,ジョゼフィンが実家に帰ってみるとユリアスが実家の居間で父と話しているのに驚きます。父も母もユリアスとジョゼフィンの結婚に大賛成の様子。そしてその時,近所で大きな事故があり医師である父に出動要請の電話があります。ユリアスやジョゼフィンも一緒に事故現場にいき救出と治療に当たるのでした。この時改めてジョゼフィンはユリアスの有能さと彼を信頼していることに気付きます。婚約期間は短く数週間後に結婚式をジョゼフィンの実家のある村の教会であげることになりました。ダウリング家とファン・タクス家,そしてセント・マイケルズ病院の同僚たちも参加して幸せな一日,そしてオランダにフェリーで渡った二人ですが,その数日後ヨークで開かれる夫の仕事について行くのがハネムーンの代わりになりました。散策や買い物で日中過ごすジョゼフィン。ひょっとしてここで元婚約者と出会い二人の結婚にひびが入るのでは?と深読みをしてしまいましたが,そんなことはなく,二人のハネムーンは充実の内に終わります。そしてユリアスのオランダの家の豪華さ,200年以上も代々続いてきた家柄の長男としてのユリアスに圧倒されてしまうジョゼフィンですが,ユリアスはここで何度か「話がある」と言いながらその度に邪魔や用事が入ってしまい,その「話し」が語られないまま何日か過ぎてしまいます。ひょっとしてすでに子供がいるとか?とまたもや深読みしてしまうのですが,ユリアスの話しは実は原題の「しかるべき時としかるべき場所」でということだったのです。その内容は読んでのお楽しみです。
 いかにもベティ・ニールズらしさに満ちあふれた,静かであたたかい作品です。


タグ:イマージュ

シンデレラになった家政婦 [マリオン・レノックス]

SHALOCKMEMO1272
シンデレラになった家政婦 The Earl's Convenient Wife 2015」
マリオン・レノックス 川合りりこ





 原題は「伯爵の都合のいい妻」
 ヒロイン:ジーニー・マクブライド(旧姓:ロックラン)(29歳)/家政婦兼秘書/女らしい体つきをした小柄の女性,顔にはそばかす,肩まである淡いブラウンの巻き毛,頬にはえくぼ,グリーンの目/
 ヒーロー:アラスデア・マクブライド(37歳)/第十六代ダンケーン伯爵/190センチ近い長身に漆黒の髪,人目を引くたくましい骨格/
 本作の主人公はなんと言ってもスコットランド西部に位置する島の自然です。ヒーロー,ヒロインの行動を通して,自然に厳しい中で美しい風景や鳥やラッコといった動物たちが大活躍し,主人公たちの気持ちを代弁するだけでなく,あるべき姿を教えてもくれる,まさに自然に学ぶことを目の前に提示してくれる作品です。作者の深い自然や動物に対する敬愛の気持ちや深い洞察力が無ければ本作はできあがらなかったことでしょう。
 さて,冒頭ではアラスデアの祖母アイリーンの遺言公開の場面から始まります。遺産相続の条件はアラスデアと従兄弟アランの未亡人でダンケーン城の家政婦だったジーニーとの1年間の結婚生活。それが出来たら会社の経営権と領地はアラスデアに,ダンケーン城はジーニーにという内容でした。1年間の結婚生活が完了しなかったり,30日以上別居生活送ればその時点で二人には何も残らず,会社と領地の売却した金額を全額動物愛護団体に寄付するという条件つきなのです。便宜的であれ結婚しなければすぐにでも二人とも路頭に迷うことになります。しかしジーニーが金銭目当てで従兄弟と結婚したと思い込んでいたアラスデアはすぐにでもジーニーを説得できると思っていたのですが,ジーニーはこの話を断ろうとするのです。慌てて秘書にジーニーのことを調査させることにしたアラスデア。ところがジーニーが欲深い女性ではなく,近隣の人たちからも祖母からもとても好かれており,さらに不幸なことに最初の夫を海難事故で亡くしたばかりか,放蕩者だった従兄弟をも失ってしまい,さらに未亡人になってからも祖母の世話と城をB&Bとして繁盛させていた働き者であることが分かります。改めて素直で見てみるとジーニーの目立たないけれどもその内面の美しさと太陽が輝くような笑顔の持ち主であることに気づき,自分の思い込みが如何に誤っていたかに気付くのでした。そしてジーニーは自分が3度目の結婚生活を了承しなければ,アレスデアがこの美しい領地と会社を失ってしまうことが余りに気の毒でこの条件を呑むのでした。しかし自分を信用していないアラスデアと本当の夫婦としての生活だけはどうしても我慢が出来ず,互いに出来るだけ接触を避けるという条件で結婚を了承するのでした。
 奇妙な二人の結婚生活が始まります。途中いくつかのぶつかり合いがあるものの,アラスデアが少しずつ自分に歩み寄ろうとしていることが分かり二人はまるで本物の夫婦のように暮らすようになり,数ヶ月が経ちます。ところがアラスデアの会社で大きな問題が持ち上がり,しばらくその問題にかかり切りになるアラスデア。ところがどんな問題が持ち上がっているのかアラスデアはジーニーに何も語ろうとしません。結局今でも自分を信用してくれないのだと思ったジーニーは,再びアラスデアを避けるようになって行きます。普通の作品であれば,二人の気まずい雰囲気に気付いた周囲の友人たちがどちらかに助言をして問題を解決させようとするのですが,本作の特徴はそれをスコットランドの自然や動物たちにさせていく点です。幼少の頃を過ごし,その後エジンバラで仕事一辺倒で過ごしてきたアレスデアが人間的な感情を取り戻し,ジーニーの本当の優しさに気付き,その幸せを願っていくまでの成長譚が後半,静かにそして確かなテンポで語られていきます。強い風の吹く荒々しいスコットランドの海岸に経つ二人のあたたかい心の交流が素晴らしく語られる傑作です。MB版の表紙のジーニーの飾り気のない,そして意志の強そうなきりっとした美しい笑顔がとても印象的で,素晴らしい表紙です。


タグ:イマージュ

ナニーの秘密の宝物 [キャット・シールド]

SHALOCKMEMO1271
ナニーの秘密の宝物 The Nanny Trap
( Billionaires and Babies 41 ) 2013」
キャット・シールド 長田乃莉子





 原題は「ナニーの罠」
 ヒロイン:ベラ・マカンドルーズ(28歳)/幼稚園教諭,臨時のナニー/深い森の中の湖のような静謐な美しさ,濃い褐色の髪と色白の肌,中西部アイオワ州出身の素朴な娘,ふっくらした頬,形の良い唇,薄い青色の瞳/
 ヒーロー:ブレイク・フォード(?歳)/投資顧問会社CEO/青灰色の瞳,金持ちでハンサムで魅力がある/
 邦訳版表紙のモデルさんはきっとレイチェル・ベイリー「ナニーが恋した大富豪(SHALOCKMEMO857)」と同じ人ですね。明るい表情といかにも幼稚園教諭らしい愛らしさにあふれています。本作はキャット・シールドの初邦訳作品で,感動のディザイアです。作者はミネソタ在住,ロマンス作家協会ゴールデンハート賞受賞のディザイア作家というプロフィールです。本シリーズには3作上梓しているようで,本作はその第1作となります。他にレディ・オリヴィア・ダーシーがヒロインの「Royal Heirs Required(2015)」,未亡人サヴァナ・コールドウェルがヒロインの「The Black Sheep's Secret Child(2016)」があるようです。いずれ翻訳されるのが期待される作家です。
 ニューヨーク,マンハッタンのセント・ヴィンセント幼稚園の門のところから本作は始まります。夏休み前の最後の日,園児たちを送り出す教師のベラのもとをブレイクが訪れ,息子のナニーとして夏休みの期間中来てくれないかと頼みます。奥さんは?離婚した。と事情を話すブレイク。ベラはヴィクトリアとブレイクのフォード夫妻の依頼で代理母として夫妻の息子ドルーを出産したのですが,出産後ヴィクトリアの頼みで一家とは一切かかわらないようにしてきたのでした。8人兄弟姉妹の長女としてベラは常に弟妹たちの面倒を母に変わって見てきていたのですが,独立したいという気持ちが強く田舎からニューヨークに出てきたのでした。ところが長女のかなしさからか,弟妹たちから経済的に頼られる存在になってしまい,何かお金の必要なことがあるとベラの携帯がメールを受信することから逃れられないのです。しかも嫌々ながらもなんとか使用としてしまう自分に嫌気も差していたのですが・・・。ブレイクの頼みを断ろうとしたベラですが,そんなことを考えている間にも妹や弟から何百,何千ドルものお金が年とかならないかと催促が入ります。今回の数ヶ月のナニーとしての仕事にかなり高額の報酬が払われることが分かっていたベラは,断ることが出来ない状況に追い込まれます。原題の「ナニー・トラップ」は,この状況を表していると思います。なにかと家族に頼りにされてしまい,常に他人のために生きてきたベラ。子供が多すぎるために常にあくせくと働くことだけに生きてきた母の様子を見ていたために,自分の子供も結婚も当分は要らないと思いながら,結局は代理母として出産し,しかもその子供は自分の卵子を使って出産する,つまり実子でありながら他人に渡さなければならない子だという皮肉以上の出来事になりながらも,依頼人の妻ヴィクトリアに,子供が混乱するからもう顔を見せないで欲しいと言われてそれに従ってしまうベラの複雑な心境に思わず涙がこみ上げてしまいます。究極の状況に追い込まれながらも,つい他人のことを考えて自分を押し殺してしまうベラの悲しい性(さが)に同情以上の感情移入をしてしまう,そんな作品です。
 さて,ブレイクの元妻ヴィクトリアとその親友であるブレイクの妹ジーナが次々とベラにプレッシャーをかけてきますが,それをブレイクに告げても詮無いこと,結局は自分とブレイクがどんな選択をするか,ということになるのです。そして,ドルーがベラの実子だと書類を見つけて知ってしまったブレイクもまた,ベラにそのことを問いただすことが出来ずにいるのです。それを問い詰めればベラが出て行ってしまうのではという恐れからです。そしてベラに結婚を申し込むブレイク。それが妻という名の子供の世話をする24時間体制のナニーに過ぎないと,愛のない便宜的結婚だと考えたベラは,ついにブレイクに断ってしばらく考えてみたいからと実家に要ってくるといいつつニューヨークの親友に相談に行くのです。ベラに去られて数日後,ブレイクはヴィクトリアの訪問を受け,元の鞘に収まりたいというヴィクトリアの本性を知ってしまいます。そしてベラをあしざまに言うヴィクトリアの言葉によって自分が如何にベラを愛しているかに気付くのでした。その後はハッピーエンドに一直線になるのですが,ここまでの二人の気持ちのすれ違いの緊張感がたまらなく素晴らしいイチオシ作品です。キャット・シールドのストーリーテラーぶりと心理描写の見事さが光る作品,これからの翻訳が楽しみです。


タグ:ディザイア

屋根裏の聖母 [シャロン・ケンドリック]

SHALOCKMEMO1270
屋根裏の聖母 Claimed for Makarov's Baby
( Bond of Billionaires 1 ) 2015」
シャロン・ケンドリック 中村美穂





 原題は「マカロフの赤ちゃんのための要求」
 ヒロイン:エリン・ターナー(?歳)/元秘書,カフェの店員/緑色の目,茶色の髪,ホッソリとした体/
 ヒーロー:ディミトリ・マカロフ(36歳)/実業家,ロシアの新興財閥/金色の髪,ファベルジュと盆栽を収集,彫りが深く威厳のあるロシア系の顔立ち/
 左のMB版とHQ版を比較するとこれは,もう明らかにHQ版の勝ちですね。ヒーロー,ヒロインのイメージがMB版ではすっかり損なわれてしまっています。シャロン・ケンドリック作品は「シンデレラは似合わない(SHALOCKMEMO1187)」で,ロキシーというとても魅力的なヒロインを読みましたですが,もうあれから三カ月も経っていたのですね。さて,本作は連作「Bond of Billionaires」の第1作。次作「The Sheikh's Christmas Conquest(2015)」のヒーロー,ジャズタランの国王,サラディン・アル・メクタラも本作に登場します。
 ヒロイン,エリン・ターナーはかつて新興財閥(オリガルヒ)ディミトリ・マカロフの秘書として働いていた時期がありました,ディミトリの仕事中毒,そして無軌道な私生活について行けずに,辞職したのですが,もっともそのきっかけになったのは出張から帰国したはずなのに連絡が取れなくなったディミトリを心配して家に行ってみると,見知らぬ美女がいるのに驚きます。女性を追い出したディミトリはエリンを求め,秘書とボスの関係を超える関係を持ってしまいます。秘書としてこれ以上やっていけないと,エリンは辞職を願い出るのですが,アッサリとうなずかれてしまったのでした。数年後,エリンは妹と二人で小さなカフェを経営し,カフェの上階の屋根部屋で,ディミトリとの子レオと二人暮らしをしてきたのでした。そして,カフェの経営を安定させ,レオの将来の生活資金を確保するため,同性愛者のシコと偽装結婚をしようとしていたところに,ディミトリが現れたのです。いずれレオの存在は知られてしまうかもしれないと覚悟していたエリンですが,レオを隠していたことを非難され,レオに会わせろと要求するディミトリに,レオが混乱しないように少し時間が欲しいと必至に頼み込むエリン。富豪である自分に経済的援助を求めず,独力で息子を育てようとするエリンを,ディミトリは敬意を感じたのでした。エリンの居場所をディミトリに教えたのは妹のタラでした。レオが次第に大きくなり父親の存在を知りたがる時期がやがて来ることを心配したタラが,エリンとディミトリの関係修復を願ってしたことなので,エリンはタラを責めることが出来ませんでしたが,やはりレオに突然ディミトリに会わせパパだよと教えることは絶対に避けたいことでした。レオは丁度その時間幼稚園に行っている時間で,ディミトリとエリンがリムジンで待っていると,レオが幸せそうにカフェに帰っていく姿を目にし,レオの将来についてあれこれと思いを巡らせるディミトリでした。二人はそのままディミトリの契約相手である中東の国王に会うため,エリンを秘書として連れて行くことになります。この中東の国王が次作のヒーロー,サラディン・アル・メクタラです。やむを得ずディミトリに従って行かざるを得ないエリン。そして彼の国で,乗馬の名手であるサラディンの挑戦を受けて乗馬勝負に挑むディミトリを,危険を承知で仕事にのめり込む昔の姿を見たエリンは怪我のないことを祈るばかりでした。しかし案の定,サラディンの馬が突然前足を挙げたときに助けようとしたディミトリが全身打撲を負ってしまいエリンの心配は的中するのでした。君が去って以来自分は変わったというディミトリですが,エリンは言葉とは裏腹にディミトリの本来の姿は変わっていないのではないかとディミトリを信用することは出来ませんでした。このことがきっかけで契約はうまくいき,帰国後,遂にレオとディミトリは対面を果たします。これほど優しくなれるかと思えるほどディミトリはレオに優しく接し二人は意気投合してしまいます。この姿に多少の嫉妬を交えながらもエリンはレオの将来についてディミトリと交渉しようと決意するのでした。そしてディミトリの古里ロシアへの休暇旅行。そしてエリンはディミトリがなぜこれほどまでに仕事にのめり込み,永続的な関係を結ぼうとしないのか問い詰めていきます。やはり両親の虚飾の結婚生活がその背景にあることが分かり,エリンは少しディミトリを理解できたような気がするのでした。さて二人の関係はどうなるのでしょうか。そしてレオの将来は・・・。
 自分の生活を含め,秘書以上の思いをディミトリに捧げてくれるエリンの気持ちが次第にディミトリの生活や人生観を変えていくことが克明に描かれた秀作です。そして息子を愛し,ディミトリにタイしても影響力を与えていくまさに聖母のような存在,そんなエリンの姿が素敵です。


タグ:ロマンス

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