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億万長者の無垢な薔薇 [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1445
億万長者の無垢な薔薇 Carides's Forgotten Wife 2016」
メイシー・イエーツ 中 由美子





 原題は「カリディスの忘れられない妻」
 ヒロイン:ローズ・タナー・カリディス(23歳)/主婦/淡いブロンドの髪,華奢な体つき,すらりとした首筋,かすかに上を向いた鼻先,ピンと伸びた背筋,大きな青い瞳/
 ヒーロー:レオン・カリディス(33歳)/企業家/黒い瞳,/
 記憶喪失ものです。しかも,かなり作者の愛に対する哲学的な主張が随所に見られるかなり固い作品という感じがしました。離婚寸前だった,というより政略結婚的に式は挙げたものの,夫は全く妻を顧みず純潔のまま2年を過ごしたローズは,夫が交通事故に遭ったという知らせを聞き,夢中で病院に駆けつけます。「存在感があり,力強くてカリスマ性があった」夫のレオン・カリディスがベットに横たわっている姿にローズは離婚を切り出せないまま,夫を伴って家に帰ります。10歳の年齢差のある夫にかつて憧れを抱いていたローズ。もし「彼が死んだら,その喪失感は耐えがたい」と父を亡くしたローズに頼れるのはレオンだけだったのです。しかし全く自分を省みず好き勝手に外で過ごしているレオンとこれ以上結婚生活を続けても自分の孤独は癒やされないと,自立することを決意したローズでしたが,この夫の怪我,そして記憶喪失によって,夫婦間に新たな関係が築けるかも知れないという希望が生まれたのです。いずれ完全に記憶が戻れば再び夫は自分から離れていってしまうかも知れないという恐怖と,それでも今だけは夫は自分を頼り切っているという状況との間でローズの心は揺れ動きます。幼い頃に母を亡くし,ずっと父の言うとおりに生きてきた内気で本好きで引きこもりがちだったローズ。一方どうしようもないプレイボーイだった夫。夫が父の会社を永久に所有するには5年間の結婚生活が必要だという婚前契約期間はまだ2年しか過ぎておらず,夫が離婚に応じるはずがないとはわかっていたものの,彼に会社も屋敷も手に入れさせても,自由を手にしたいという気持ちを抑えきれなくなっていたローズにとって,夫の世話をする今の状況は夫との関係を修復できる唯一で最後の機会かも知れないのです。自分の気持ちはどうだったんだろうか。本当に10歳年下の幼妻に関心がなかったのだろうか。これほど魅力に溢れた女性に関心がなかったなどとは信じられないとレオンはローズを誘惑したい気持ちに駆られます。「私が知っているのは,あなたが父の下で働いていたことだけ。卒業を待たずに働き始めて十代の頃は使い走りみたいな仕事もしていたようね。父の目にとまってからは後継者として指導を受けていたわ」というローズの言葉に対してもなんの記憶も戻ってきません。父はなぜ,自分にレオンを与えたのだろうか。今になってみればその真意を父に聴いておけば良かったとローズは思いますが,レオンに手に触れられただけで「体に稲妻が走り,体中がパチパチと音を立てると息が詰まり膝が震え」るほどの衝撃を受けるほどうぶなローズには,まさにこの機会にもっと夫を知りたいという気持ちが湧いてくるのでした。「それなら今から事実を作ればいい。僕らが新しい人生を歩めないはずはない。君が話してくれた夢は,僕も気に入った」と迫る夫の言葉にローズもあやうく自分の気持ちを明かしそうになりますが,夫の周りにいた女性たちへの嫉妬心も湧いてきます。そして夫の欲望の対象になることで再び自分の自由が失われるのではないかという怖れの気持ちが再度強くなっていくのでした。会社のスタッフや友人たちには幸い記憶喪失の件は知られていません。事故による怪我を理由にしばらくは二人きりの時を過ごしていますが,体力的には回復してきた夫の誘惑についに応じてしまうことでかつて描いてきた夫への憧れが今でも失われておらず,夫を愛していることに気づかされるローズ。「レオンは男性としてのすべての要素を兼ね備えていた」「ローズが求めてきた男性像はレオンが規準だったのだから」と,レオンの情熱を自分への愛だと信じかけたところで,地味で本好きな少女だった自分がカリスマ性を持つ夫に本当に愛されるはずがないとローズは気づいていきます。少しずつ細かい記憶を取り戻しつつある夫が再び自分から離れていってしまうという喪失感と,周囲の女性たちへの嫉妬心の間で苦しむローズ。そんな時二人の前に現れたのは,赤ん坊を連れた女性でした。そしてその赤ん坊は夫レオンの子供だというのです。絶望感に陥ります。その赤ん坊イザベラは見るからに夫の子供であることが分かるほどそのDNAが感じられる女の子でした。「あなたが浮気をしていたときも,辛いなんて絶対に言わなかった。あなたが差し出すものだけを私は受け取った。あなたが床に投げつけたパン屑すら私は舐めた。だって私は悲しみに暮れた情けない奴隷だから。でももうあなたの奴隷なんかじゃない」と心の痛みを吐露するローズ。こんな言葉を夫に投げつけたことなどなかったローズでした。「彼女は自分を憎んだ。レオンを憎むのと同じくらいに。こんなときでも彼を求める自分を憎んだ。自分を苦しめる男性に,慰めてもらおうとする自分を憎んだ。しかしレオンの記憶の中によみがえってきたのはかつて結婚していた妻と同時に失った一人息子マイケルでした。この事実はローズは知らなかったのです。そしてレオンの記憶と深層心理の中にある,人を愛すると失ったときの衝撃は倍になって自分に返ってくることから幼妻ローズを愛してしまわないように,自分の心を守るためにわざとローズに触れなかったことに気づいていくのです。幼子イザベラには罪はない。少なくとも夫の子ではあるのだ。自分が育てなくてだれがイザベラの面倒を見ることができるのか。と父にも夫にも捨てられたローズはイザベラを愛さずにはいられなくなるのでした。二人の住む屋敷には亡き母が作った小さなバラ園がありました。クムゾン・ローズが咲くそのバラ園の存在こそローズという名前の由来だったのです。そこで夫の心の闇を知り,その理由を考え続けたローズは,ついに愛を獲得するために戦う決心をするのでした。一方でレオンの側に,記憶が戻るにつれて如何に自分がローズを傷つけてきたかに気付き,自分は無垢で純真なローズを傷つけまいと逆にローズを避けてしまっていたことを知ります。自分などはローズにふさわしくないのだと。さて二人の心は本当に寄り添うことができるのでしょうか。愛を恐れる気持ちからレオンは立ち直れるのでしょうか。すれ違った二人の深層心理に迫り,最後には愛の勝利を高らかに歌うメイシー・イエーツ渾身の作品です。


タグ:ロマンス
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