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夜風はひそやかに [ジャッキー・ダレサンドロ]

SHALOCKMEMO501
夜風はひそやかに Sleepless at Midnight 2007」
ジャッキー・ダレサンドロ 宮崎 槇





「メイフェア・シリーズ」第1弾。リージェンシー時代,医師の娘サラとその姉の未亡人キャロリン,富豪で伯爵の一人娘ジュリアン,貴族の娘エミリーの四人は,「ロンドン婦人読書会」なる組織を作り,定期的に集まっては1冊の本を巡って女性らしい感想を述べあう楽しい仲間です。最初に選んだ本はシェリー夫人の「フランケンシュタイン」。夫を亡くして落ち込んでいた姉を励ますため,サラは,「完璧な男性」を四人で作ろうと持ちかけます。四人でその条件を出し合い,サラはそれに自分なりの条件を付け加え,ハウスパーティに集まっていた男性たちからシャツや靴などそれぞれ1品を借りて「完璧な男性の人形」を作ることにしたのです。そのとき,サラの頭の中には,当家のホストであるラングストン卿マシュー・ディヴェンポートのことが浮かんでいました。リンダ・ハワードの「ミスター・パーフェクト」もこんな設定ではなかったでしたっけ?
サラは,美貌の姉とは違い,「あけすけな物言いをし,褐色の瞳と黒い髪をもつ,背が高く眼鏡をかけた典型的な美人とほど遠いオールドミス」で,すっかり結婚話などはないものとあきらめていました。しかも友人のジュリアンやエミリーも相当な美人。さらにジュリアンに至っては経済的にも恵まれているという男性にとっては結婚対象としてはこれ以上ない条件の持ち主です。ある夜,ラングストン卿のシャツを借りようと部屋に入ったところに,卿が帰ってきて,とっさにカーテンの陰に隠れたサラが目にしたのはラングストン卿の入浴シーンでした。気づかれないうちに部屋を出ようとしたサラでしたが,卿にナイフを突きつけられ,逃れることができなくなります。しかし,当意即妙の答えで,卿の部屋を去ることができたのですが,その時の記憶からは逃れることができなくなってしまいます。卿の肉体はまさに完璧な男性だったのです。
卿は夜な夜なシャベルをもって家の外に出て行きます。偶然それを目にしたサラは,卿が何か秘密をもっていると確信します。さらに,村の鍛冶屋の男が殺害されているのが発見され,サラは卿が犯人ではないかと疑いをもって卿の跡をつけます。卿には大型犬のダンフォースが常に付き従っていますが,サラはあっというまにダンフォースと仲良しになってしまいます。サラは美貌にこそ恵まれませんでしたが,ラテン名で植物の名前を覚えているとか,人物が今にも動き出しそうに見えるすばらしいデッサンを描くことができたりと,すばらしい才能を持っていました。そのことに気づいたラングストン卿は,次第にサラに惹かれていきます。しかし卿には領地を守るため財力のある娘と結婚して子孫を残すという義務があるのでした。サラと卿の思いは悲劇に終わるのでしょうか?そして卿の父が残した遺言の遺産は本当に存在するのでしょうか。


本書はとにかく細部にわたる書き込みと,サラとラングストン卿の丁々発止のことばの応酬,さらにサスペンスたっぷりの筋立てなど,多くの要素が融合し,すばらしい作品に仕上がっています。また,章ごとに独立した出来事がきっちりと書かれ,周回小説のような楽しみも味わえます。仮に斜麓駆は各章に次のような表題をつけてみました。
第1章 サラ,3人の美女とロンドン婦人読書会を設立し,完璧な男性を作ることを宣言する
第2章 サラ,ロンドン婦人読書会で完璧な男性の条件をまとめ,ラングストン卿の秘密を探ることを決意する
第3章 サラ,朝の散歩で犬のブラッドリーとその飼い主のラングストン卿に出会う
第4章 サラ,ブラッドリーと庭で遊び,ラングストン卿の秘密を疑う
第5章 サラ,ディナーでジャンセン氏との会話に大いに盛り上がる
第6章 サラ,ラングストン氏の部屋に侵入し,ラングストン卿のシャツを手に入れる
第7章 サラ,他の3人と人形の着衣を集め,ラングストン卿の兄妹が亡くなった話に大いに同情する
第8章 サラ,ラングストン卿と冗談を言い合い,互いの家族のことを語り合う
第9章 村の鍛冶屋が殺害され,ラングストン卿とサーブルック卿がサラのことを話し合う
第10章 ラングストン卿,サラの入浴中に部屋を訪れる
第11章 ラングストン卿,サラに夜の庭の穴掘りの理由を語る
第12章 ラングストン卿,サラに父の遺言の秘密を語る
第13章 サラ,バラ園でラングストン卿の庭の穴掘りを手伝い,湖でラングストン卿の幼少のことに心を動かされる
第14章 ロンドン婦人読書会が開かれ,サラ,ラングストン卿に人形の秘密を明かす
第15章 サラ,ラングストン卿と一夜を過ごす
第16章 ラングストン卿,サラとの結婚を考える
第17章 サラとラングストン卿,バラ園の穴掘りを共同で進め,互いの気持ちを伝えあう
第18章 サラ,ラングストン卿のプロポーズを受け入れる
第19章 大団円。村の鍛冶屋の殺害犯人がサラとラングストン卿に襲いかかるが,一難を逃れ,ラングストン卿の父の遺言の秘密が明かされる
エピローグ サラの飼い犬とラングストン卿の飼い犬が出会う
いかがでしょうか?
また,サラと卿のことばの応酬として後半何度も登場するのは,サラが「全く理解できませんわ」ととぼけるとマシューが「ご心配なく,僕が二人分理解しているから」と答える場面です。思わず読者の笑みを誘う,とても気の利いた台詞ですね。このシリーズは他の3人の美女たちがヒロインとなるシリーズものの第1作として,はじめにサラが選ばれたことに,作者の慧眼が光る期待作です。


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