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シークの孤独 [テレサ・サウスウィック]

SHALOCKMEMO1468
シークの孤独 To Catch a Sheik
( Desert Bride 1 ) 2003」
テレサ・サウスウィック 小池 桂





 原題は「シークをつかまえて」
 ヒロイン:ペネロピ(ペニー)・コリーン・ドイル(22歳)/宮廷の秘書,幼児教育とビジネスの学位所有,アメリカ人/小柄な体,卵形の小さな顔,黒縁の大きな眼鏡,美しくなめらかな肌,腰の辺りまであるブロンドの髪,細いウエス尾,すらりとした脚のライン,ふっくらした唇/
 ヒーロー:ラフィーク・ハッサン(29歳)/エル・ザフィール王国王子,内務兼外務大臣/身長187センチ,黒い瞳,ややウエーブのかかった短い黒髪,高い頬骨,筋の通った鼻,角張った顎,広い肩とがっしりした胸板/
 ハッサン3兄弟のロマンスのミニシリーズ第1作です。8月にこのシリーズの第2作「シークの憂鬱」がディザイア傑作選から出る予定なので,シルエット・ロマンス版のKINDLEを発見したので読み始めました。このすでに配刊が停止しているシルエット・ロマンス・シリーズは多くが再刊されるようになってきていますので,あえてそろえようという気はありませんが,しばらく邦訳から遠ざかっていたテレサ・サウスウィック作品が再び活発に取り上げられるようになってきたので,KINDLE化されているものは少し手に取ってみたいなと考えた次第です。彼女の作品にはとても魅力的なヒロインたちが多いように思っているので,楽しみです。さて,余談ですが,このシリーズで英語タイトルになっているシークの綴りは「Sheikh」ではなく「Sheik」と最後の「h」が省かれています。それがMB版,つまり英国のペーパーバック版の表紙を見ると「h」が入っているようです。まぁこの辺はかなりおおらかなのでしょうね。元々アラビア語の音化を図った英単語でしょうから。
 さて本作ですが,ヒロインのペニーは母親を亡くしその遺言に従って幼稚園の経営を夢見る大学を出たての女性。幼稚園開設には莫大な費用がかかることから,エル・ザフィール王家の条件の良い募集に応募し見事にファラ・ハッサン王女(国王の妹)の秘書に採用されます。ところでこの秘書募集の条件というのがまた一風変わったもの。「不美人であること」というのです。目立たずに自分を特別美しいわけではない並みの容姿だと思っているペニーは「その条件ならわたしにぴったり」と自信をもって応募したのでした。ペニーが高額の給与を望む理由はさらにありました。母親が残してくれた遺産をもとに幼稚園開設の準備をしていたペニーはさらに効率の良い投資があると男性に騙され,婚約までしながらついに裏切られ,お金だけ持ちにげされてしまったのでした。傷心の思いを抱きつつも,母の遺言を果たすために前向きに生きて行こうとエル・ザフィールにやって来たペニー。そこで出会ったのがプレイボーイと名高い王子ラフィークでした。一目でラフィークに引かれるペニーですが,一介のシングルマザーの子供の時分と片や王子のラフィークでは身分の違いが明確で,しかも自分は採用の条件の「不美人」であることに自信をもっている容貌。とても釣り合わないということは分かっていました。ところが・・・。
 相手が王子であろうが,歯に衣を着せずずばりと舌鋒を繰り出してくるペニーにラフィークは新鮮な魅力を感じてしまったのでした。そして王女の秘書としてエル・ザフィールにやって来たペニーをラフィーク付きの秘書として変更してしまったのです。というのも,以前こどもたちのナニーがラフィークに興味を抱きすぎて裸で彼のベッドにいることが発見されてしまい,危うくスキャンダルになるところだったため即刻解雇され,それに替わる秘書は「不美人」であることという風変わりな条件の由来となったのです。現在の年配の秘書は国王に取り上げられてしまい,そのためラフィークには現在秘書がいなくなっていたのでした。不美人を条件に採用されたペニーであればラフィークの仕事に支障がないという理由で,初めは王女付きだったペニーをラフィークは許可を得て自分の秘書に転勤させたのでした。そこでペニーは問われるまでにこれまでの不幸な生い立ちと,幼稚園開設という壮大な夢を語ることになってしまいます。そしてラフィークはそれに感動と強い興味を覚えます。しかも,小柄で子供っぽく見え,不格好な黒縁の眼鏡をかけたペニーを守ってやりたいという気持ちが強くわき上がってきたのです。これまで付き合ってきた女性とはまったく異なるペニーに興味を抱く自分に戸惑うラフィーク。翌日から二人の仕事は始まります。有能な事務能力を示すペニー。そんなペニーを王室一家はあたたかく迎え入れてくれるのでした。国王からも「実に爽やかな女性だ」と褒められてしまいます。ラフィークには兄のファリーク王子と皇太子のカマルがおり,下に妹のジョハラ王女がいます。さらに国王の妹のファラ王女,ファルーク王子の双子の子供たちヌリとハナと一堂に会した晩餐の場で,予定されている慈善舞踏会,その前にアメリカからやってくる大使館員を招いた晩餐会の企画など大きな仕事があり,それらにペニーも参加して手伝うようにと言われるのですが,正式な晩餐会にでられるようなドレスをもっていないことを正直に告げると,ラフィークはパリへの出張にペニーを連れていき,ワードローブが一杯になるほどの衣装一式を購入してしまうのでした。いわば必要経費だからと説得され,断ることができなくなったペニー。そして乗馬に連れ出されたときラフィークから受けたキス。そんなラフィークの行動の真意を測りかねているうちに大きな舞踏会がやって来てしまうのですが・・・。あえて舞踏会用にとパリでラフィークに買ってもらったドレスを選ばずに,裏方に徹しようとするペニー。ラフィークもまたファラ王女からペニーを誘惑しないように釘を刺されているのですが,次第に強くペニーに引かれてしまうのでした。さて,舞踏会でシンデレラさながらのペニーの運命は・・・。
 3兄弟のロマンスの第1作で主な登場人物が出そろいますが,本作を通じてどうやらファラ王女が遠回しで3兄弟に人を愛することを教えていこうとしている雰囲気が感じられます。三男ラフィークがその罠にはまっていく様子がとても自然で,傲慢なラフィークがペニーに言い負かされていくストーリーはとても爽やかです。ロマンスの王道を行くシンデレラストーリー。オススメです。


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ボスとナニーの契約結婚 [テレサ・サウスウィック]

SHALOCKMEMO1358
ボスとナニーの契約結婚 MarryingTheVirginNanny
( Nanny Network 1 ) 2009」
テレサ・サウスウィック 中野 恵





 原題は「無垢なナニーの結婚」
 ヒロイン:マーガレット(マギー)・メアリー・シェパード(?歳)/「ナニーネットワーク」所属のナニー,養護施設「グッド・シェパード」出身者/ダークブルーの瞳,長いブラウンの髪,大きすぎる口,甘く愛らしい美しさ/
 ヒーロー:ジェイスン・ギャレット(?歳)/「ギャレット・インダストリーズ」経営者/黒い巻き毛,黒い瞳,すばらしい笑顔/
 実に5年ぶりとなる作者の訳本です。ハーレクイン・スペシャル・エディションでの発行の多い筆者ですから,受け側となる日本側のレーベルがなく,かつてのNシリーズがあれば毎年順調に訳本が出ていたのでしょうか。2014年以降「Bachelors of Blackwater Lake」シリーズを初め,精力的に作品を上梓している作者ですので,いずれまた翻訳もなされていくのでしょう。でもN版がなくなったので,シルエットを中心にしているD版が中心になるのでしょうね。
 さて,ナニーものの好きな斜麓駈としては,本作はとても楽しく読めました。舞台はラスベガス。ナニーであるヒロインの出自が児童養護施設で,両親が誰かは全く不明,でも大学卒でそれなりの格好をすれば地味だけれど美しいという設定です。上流階級では,自分の子供を預けるナニーに施設出身者を嫌がるという傾向があるように思うのですが,修道院でも修行したというヒロインの言葉で,決して身持ちが悪い人ではないという保証になったのでしょうね。望まない妊娠で出産した恋人との間の子供,初めは産まない選択をしようとした相手に十分なお金を払ってなんとか親権を確保し,相手には親権放棄をさせたヒーローのジェイスン。しかし生後1カ月ほどの息子に愛情を注いでくれるナニーはなかなかいませんでした。もうすでに数人がクビになってしまっています。そんなとき所属する派遣会社から直接面接にやって来たマギーが,富豪である自分よりも赤ちゃんを優先しようとしてはやばやと泣き叫ぶ赤ちゃんをすぐになだめてしまった様子を見て,ジェイスンはちょっと安心します。しかも自分は6週間しかここで働けないと,すでに期限を切ってしまうのです。雇う側が期限を切るならまだしも雇われる側から期限を切られてしまったことについて,ちょっとむっとしたジェイソン。しかし手際よく赤ん坊の世話をするマギーの様子を見てジェイスンは直感的にこの人は信頼できると思うのでした。これほどの大金持ちで家政婦や料理人を雇っているのにもかかわらず住み込みなのはナニーだけ,ってこれちょっと変ですよね。普通家政婦は少なくとも住み込みでしょ。かつて恋人に裏切られ,雇い主にも裏切られた経験をもつマギーは,乳幼児専門のナニーとして,情が移ることを嫌い6週間を期限とすることを自分に課していたのでした。物語中盤でこの当たりの事情が明らかにされますが,まぁ二人の出会いはまずまずだったようです。そしてその間にますますマギーへの信頼と魅力に取り憑かれたジェイスンはなんとかして6週間以降もマギーを引き留めようとします。最終的な方法は,契約結婚。結婚はするけれど,外部には知られないようにすること,そしてマギーの役割はあくまでもナニーとしての仕事,ただ長期にわたることから結婚という手法をとるということに過ぎない。見返りは? 毎週土日にボランティアしているかつて自分を育ててくれた養護施設のシスターたちが,建物の修理をしないと当局から廃止命令が下されるかも知れないと悩んでいることをなんとかしたいと思い,その資金をジェイソンが提供することを条件として結婚に承諾するのでした。勿論生前契約を交わし,すべては弁護士の作成した書面で明確に規定された結婚です。思いの外に立派に修理されようとしている施設の建物に安心するマギーですが,気になるのは,一緒に住んでいるジェイソンが自分に対する欲望を感じているようなのに自分をナニーとしてしか扱ってくれないこと。そしてなにより恋愛を恐れているように思えることでした。両親とも数回の結婚離婚を繰り返し身を落ち着けることがない様子の中で育ったジェイソンに取ってみれば,安定は愛の中ではなく書面の中にあると感じてきたことは悲しいながらも事実でした。一方両親の名前すら知らず,自分の名前も自分の世話をしてくれた二人のシスターの名前と施設名苗字にするというまさしく愛を知らずに育ったにもかかわらず,常に子供たちや他人の世話をしようと愛に溢れた性格に育った様子を見て,ジェイソンにはマギーは理解できない女性だったのでしょう。そして欲望を覚えつつも二人の結婚に愛を持ち込むことをひたすら耐える,というかどうやって愛すればいいかわからないというのが本音だったのだと言えます。そんなジェイソンの態度にマギーは悩み,シスターに相談したり,ナニー派遣会社経営者のジンジャーに打ち明けたりしてきたのですが,最後はなんといってもジェイソンとの二回の深い関係で妊娠が分かり,それを打ち明けたところが冷たい言葉を浴びせられたところですっかり落ち込み,施設に逃げ帰ってしまうのでした。息子のブレイディに対する愛情の深さを見ていて,きっと自分の妊娠を喜んでくれるだろうと期待していたマギーにとってジェイソンの冷たい態度は何にも勝り心を傷つける言葉だったのです。曰く「僕たちの関係は,合意と契約の上に成立しているはずだ。契約に基づいて君がすべきことは,ブレイディの面倒を見ることであって,あの子に弟妹を与えることじゃない」。ジェイスンは結婚が全くビジネスの一形態に過ぎないと言わんとしたのでした。
 ともに両親の行動に嫌気がさしていても,ジェイソンのように父親が生きており,例え関係が悪くても会うことができることは幸せなことなのですし,自分を捨てたと思っていた母親が実は自分を引き取るための弁護士費用を貯めるために,3つも仕事を掛け持ちしていたことを知ったあともなかなかマギーへの愛に気づけなかったのに対し,一度も親の顔も名前を知らずに,しかもぜんそくの持病を持っていたために養子にもいけなかったという社会的弱者であったマギーが愛情深く,思慮深い女性に育ったことを,ジェイソンがそれは愛の力の差だと気付くまでそれほど多くの時間はかかりませんでした。最後はとても温かい終わり方をする秀作です。


タグ:ディザイア
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