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思い出の中の結婚 [キャサリン・スペンサー]

SHALOCKMEMO1363
思い出の中の結婚 A Costanzo Baby Secret
( Claiming His Love-Child 1 ) 2009」
キャサリン・スペンサー 鈴木けい





 原題は「コスタンツォの赤ちゃんの秘密」
 ヒロイン:メイブ・コスタンツォ(28歳)/記憶を失った妻/脚が長く歯並びのいい澄んだブルーの瞳,身長175センチで均整の取れた体,ブロンドの髪,カナダのバンクーバー出身/
 ヒーロー:ダリオ・ガブリエル・コスタンツォ(?歳)/大企業「コスタンツォ・インダストリ・デル・リコルソ・インターナショナリ(リゾート開発会社)」上級副社長/身長188センチ,がっしりした体,ブロンズ色に焼けた肌,豊かな黒い髪/
 好きな記憶喪失ものということで手にしました。交通事故で逆行性記憶喪失となり事故から1カ月後の9月4日に意識を回復したメイブ。 脳科学辞典によると「逆行性健忘 (retrograde amnesia) とは、発症以前の、過去の出来事に関する記憶を思い出すことの障害である。ここでいう出来事とは本人の生活史上の経験であっても、本人が生活してきた時代における社会的な事実であってもよい。すなわち、発症以前に本人が経験し、覚えているはずの出来事を思い出すことができない状態である。しかしながら、どの程度の期間の逆行性健忘があるかの評価は必ずしも容易ではない。というのも、その個人の過去の記憶を正確に証明することは困難であり、世俗的な事象を対象に過去の記憶を確認しようとしても、個人の関心の度合いが異なるためである。」とあります。いまはネットでいろいろと調べることができて便利になりましたね。でも記事の信頼性は保証の限りではありませんから,まぁそんなものかという程度の認識で本作を読む分には十分ではないでしょうか。ヒロインのメイブを診察していた医師は夫のダリオに対して「忘れていることを無理に思い出させようとしてはいけない」「子供がいる事実も明らかにするべきではない」「夫とは言え今は他人同然の存在なので夫婦生活も控えて欲しい」などと助言するのです。この対応が本人にとって良い方向に向かうのかどうかもわかりませんが,医師は平均的,一般的,つまり過去の事例から類推して診断や助言をするだけですから個別のものに対してどこまで正しいかということはわからないものだと思います。ですから医師の診断や助言を鵜呑みにして対応してしまうと間違うことだってあるのだろうと言えます。まだまだ脳科学では解き明かされていないことの方が多いのですから。作者はそのことをうまく利用してストーリーを作り上げるわけですから,少なくとも上記のような一般的な記憶喪失(障害というべきだと思いますが)の定義については当然調べていて,その曖昧さや個別的な部分に焦点をあてることでフィクションを作り上げていくのだろうと思います。読者としてはそのことにうまく騙されたふりをして読み進めないと,楽しんで読むことができなくなるわけですので,SFやファンタジーを読むときと同様にまぁこんなものだろうと思ったほうがいいわけです。
 さて,ヒロイン,メイブが事故を起こしたきっかけは,イタリアの島パンテレリアから,子供を連れて本土に渡ろうと連絡船に乗るために車で出かけたところ,運転していた男性フランス系カナダ人イブ・ゴーシエが急に意識混濁し海に落ちてしまったという大事故でした。しかしメイブはこの間の事情はすっかり記憶を失っているのです。病院に現れた夫のダリオも,退院したのちに帰った邸宅にも記憶を呼び覚ますものはありません。いつ記憶を取り戻すのかが作品の中心の謎ですが,本作では記憶障害の原因は愛息セバスティアーノを事故で失ってしまったとメイブが思い込んでいたことによるものだという事実が後半まで明かされません。(ちょっとネタバレかも知れません)。当時夫婦の間に吹きすさんでいた離婚の危機が,これに拍車をかけていくのです。そして記憶にない男性が夫であり,その男性に寄りかかるととても安心できるという本能的なメイブの心が,夫婦間の本来の愛情を再び築き上げていこうという意欲に繋がることでロマンスとしての筋が一本通る設定になっています。イタリアの名家であるコスタンツォ家に入った嫁メイブに対して冷たく接して来るダリオの母セレステ。唯一味方になってくれるのはダリオの妹夫妻クリスティーナとロレンツォ。これでもかと言うほど優しくしてくれる夫が,実は内面では事故当時メイブの乗った車を運転していた男性とメイブとの不倫の相手に違いないと思い込み,今一つ妻を信用し切れていないというアイロニー。そんな二人の心の置き所と周囲の人々との関係を中心にストーリーが展開していきます。なかなかよくできた設定だと思います。「地中海の黒真珠」と呼ばれ,水平線上にアフリカが見えるほど南に位置する島パンテレリア(シチリア島の南西100キロ,チュニジアから80キロ)と,ミラノのダリオのペントハウス,そして二人が出会ったポルトフィーノが舞台の中心になります。また二人が静養に出かけたチュニスの町中の様子など,細部もしっかりと描かれ,丁寧な作品だと思います。


タグ:ロマンス
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命のブーケ [キャサリン・スペンサー]

SHALOCKMEMO1343
命のブーケ Dominic's Child
( From Here to Paternity 1 ) 1996」
キャサリン・スペンサー 井上京子




K-426
16.09/¥670/156p

R-1726
01.11/¥672/156p


 原題は「ドミニクの赤ちゃん」
 ヒロイン:ソフィー・カスン(27歳)/景観設計士/金髪で灰色の目,長い脚/
 ヒーロー:ドミニク・ウィンター(35歳)/建設業者/広い額,黒髪,鼻骨を折った跡,強烈で断固とした横顔,緑色の目,長身/
 「「さあ,ブーケよ,ソフィー」エレインが手渡してくれた。」白百合の美しいブーケが象徴するエピローグに描かれているこの場面が,本作の邦題になったことは言うまでもありません。すれ違った二人の気持ちとは裏腹にソフィーのお腹の中で順調に育ってきて,帝王切開で産まれたライアン。ドミニクとソフィーのこの男の子が産まれ,二人の結婚式が三人での式になった最後の場面が,いかにもロマンス小説らしい幸福感と安堵感に満たされたクリスマスのカナダ,パーマーズタウンでの一幕です。初めは行方不明になったウェクスラー夫妻の一人娘バーバラの身を案じるドミニクとソフィーの口論から始まります。夫妻の家のエクステリアを設計するソフィーと,バーバラの婚約者で建設業者のドミニク。ソフィーはドミニクの独善的でどんなときにも冷静さを失わない性質を好きになれませんでしたが,逆に男性らしさにあふれたドミニクに惹かれてしまっていることも頭の片隅に残っています。しかし,自分に責任のない,いえ,無責任で我が儘なバーバラの失踪の原因を自分に着せられるのに納得できないでいるソフィーですが,ドミニクはそんなソフィーの気持ちにはいっこうに頓着せず言いたい放題をいっています。ところが,泥酔したドミニクを慰めたくなり,そしてそのまま二人は深い関係に陥ってしまうのです。その結果の妊娠。妊娠検査薬を買ってきたその晩,再度ソフィーの家を訪れたドミニクによって,速く検査したらどうかと無慈悲な要求をされ,それでも気になっていた検査を済ませると按の情の陽性反応。ソフィーもまたかつてある男性と付き合い,無垢ではありませんでしたが,あまりに無神経なドミニクの言動に腹を立てながらも,どうしてなのかドミニクの言うとおりに自分が行動してしまいます。初めはこのソフィーの情けない行動にイライラしながら読み進めていくことになるのですが,やがて,幸せな日々を過ごすソフィーとドミニクの元に,バーバラが突然生き返ったようにやってくるのです。すでに妊娠の結果二人はウェクスラー夫妻の了承も得て結婚を間近にしていたのですが,バーバラの出現と私妊娠したのよという告白に,ソフィーは自分が身を引くことが当然とばかり,ドミニクの元を去って身を隠したのです。双子の兄ポールとその妻ジェニーの元へと。ソフィーは両親には妊娠のことは話しておらず,打ち明けたのは親友のエレインと兄夫妻だけでした。ドミニクとの婚約が破れた今となっては,両親の元に帰ることもできません。イギリスに身を隠したソフィーは鬱々と日々を過ごしているのでした。一方バーバラの嘘に振り回され,ソフィーに去られてしまったドミニクも親友の弁護士から背中を押され,ソフィーを再び手に入れるために,ある計略を巡らし,同時にソフィーの両親からソフィーがイギリスの兄夫妻の元にいるらしいと言う情報を得て,一通の手紙をソフィーの元に送るのでした。かつて住んでいたパーマーズタウンの家で待っていたソフィーは突然腹痛に襲われ・・・。
 プライド同士のぶつかり合い,そして愛されなかった過去を持つドミニクがソフィーへの純粋な愛に気付いて行く過程が丁寧に描かれています。我が儘なお嬢様で美貌のバーバラに比べて,職業人としての落ち着いた雰囲気と美しい脚線美をもつ平凡な女性ソフィーの対比が,本作の雰囲気を作り上げていきます。めずらしいカナダ・ロマンスの独特の雰囲気が本作の魅力です。


タグ:ロマンス
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