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シンデレラの秘密の契約 [スーザン・マレリー]

SHALOCKMEMO1202
シンデレラの秘密の契約 Accidentally Yours 2008」
スーザン・マレリー さとう史緒





 原題は「ふとしたことからあなたのもの」
 舞台:ワシントン州シアトルとその近郊
 ヒロイン:ケリー・サリバン(歳)/シアトル近郊の町ソングウッドの「ヘア・バーン」の美容師,シングルマザー/ギラン・バレー症候群の息子コーディの母/元チア・リーダー,コミュニティ・カレッジ1年の1学期で中退。/金髪にブルーの瞳,中肉中背,可愛らしい顔立ちで至って健康そう。
 ヒーロー:ネイサン・キング(38歳)/不動産会社「キング・インベストメント・グループ」経営/背が高くて,肌がこんがりと日に焼けた,大金持ち。海軍基地のあるブレマートン生まれ。
 ヒロイン,ケリー・サリバンの年齢が読み取れませんでしたが,夫を事故で亡くし,その時お腹に宿っていた息子は難病のギラン・バレー症候群という病にかかり,ゆっくりと死に向かっていっています。息子が9歳であるという年齢を考えても,30歳前後ということでしょう。この息子コーディの病を治すため,何度も研究所の近くに引っ越しを繰り返し,やっと,新薬開発の可能性のある研究所のあるソングウッドの町に越してきます。しかし,研究所で電気系統の故障から爆発事故があり,研究所は休業状態になってしまいました。ケリーがそこの研究者ドクター・アブラム・ウォレスを訪ねると研究所の再開には1500万ドル(約17億円)もの資金が必要である言われてしまいます。腕が良いとは言え,美容師に過ぎない自分にこんな資金を融通する手立てはありません。そこで同じ病気で息子を亡くした富豪のネイサン・キングに資金提供をお願いしに行く,というのが物語の始まりです。「鮫をも震え上がらせる男」という異名をもつ冷酷なネイサンに対して,ちょっと裏技を使ったものの,全力で目的に向かってぶつかっていくケリーに,はじめは相手にしないネイサンですが,次第にケリーの事情が分かり,さらに彼女の息子を思う気持ちや前向きに物事に取り組み,決して諦めない強さに心を動かされたネイサンは,現在進行中の巨大ビル開発の市の許可を得るため,研究所への資金提供の代わりにケリー親子の協力を条件にした取り引きを持ちかけるのでした。ネイサン側の弁護士ジェイクが信用できそうな人だったこともあり,ケリーはこの契約にサインします。もうこの時点でケリーに対するネイサンの恋は始まっていたようです。ケリーもまた人生の全てを息子に賭けるという気持ちと,ネイサンに頼りたいという気持ちの板挟みに苦しみますが,息子を元気づけるために「ワンダー・ママ」に扮して想像できないような行動を取ることや,研究所のスタッフのリンダと協力して,町の活性化にアイディアを出すなど,とにかく八面六臂の活躍をします。この生き生きと活動するケリーに町の人たちやネイサンの運転手や弁護士が次第に巻き込まれていき,一番巻き込まれたネイサンが昼も夜もケリーを忘れられなくなってしまうというストーリー展開はとてもすっきりしており,しかも楽めるジェットコースター・ストーリーになっていきます。これに,ネイサンをしつこく付け狙い自分を大手新聞社に売り込もうとする記者や,悲惨な状況で心を病んでしまったネイサンの妹などがからみ,複数の物語が同時進行するという中編特有の物語が展開されていきます。久しぶりのMIRA文庫でしたが,通常156頁のHQシリーズでは味わえない物語の深まりを,味わうことが出来ました。


タグ:ロマンス Mira
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プリンセスの初恋 [スーザン・マレリー]

SHALOCKMEMO893
プリンセスの初恋 A Royal Baby on the Way
(世紀のウエディング 1) 1999」
スーザン・マレリー 霜月 桂





ウィンボロー王国,ウィンダム家には4人の王女たちがいました。長女のアレクサンドラ(アレックス)は王家では男子しか後を継げないという法律があるものの,議会で女王も認めるような議論がされつつあることを知っており,男子がいない現状では自分が王位を継ぐことになることになるかもしれないと思っていました。幼い頃から父王から帝王学を少しずつ学びつつ,義務と国への忠誠を自らの一番の課題と考えていたのです。そんな時,王家にアレックスの兄に当たる男子がいるという投書が届きます。国王夫妻は現在在位20年の祝賀行事の件で忙しく,しかも,もし投書の内容が間違っていたら両親に大きな衝撃を与えると考えたアレックスは妹たちと相談して,姉妹だけで兄を捜そうと決意しました。アメリカに渡った4姉妹。アレックスだけが先に兄がいたと思われる施設に調査に出かけ,学校で同じ年頃だったとされるミッチ・コールトンの牧場に宿泊することになります。ミッチは初めはアレックスが本物の王女であることを信じられませんでしたがその優雅で堂々とした態度やボディガードたちが牧場で生活することが警備上大いに問題であることで自分を責めているのを見て,本物の王女だとするアレックスの言葉を信じ,宿泊場所として提供することにしたのです。家政婦のベティは王室ファンで,ベティが喜ぶことも理由の一つでした。ミッチにとってアレックスは一般的な王女とは全く異なる存在でした。アレックスもまた自分を一人の女性として扱ってくれるミッチに感謝し,男らしく誇り高くカウボーイとして自分の仕事を愛しているミッチに初めて男性としての魅力を感じるようになります。二人がおずおずと少しずつ近づき,それでも互いの環境の違いから将来の二人の関係を思い描くことが出来ずに葛藤する様子が,とても愛らしく,微笑ましく,王室ものを読むときの醍醐味でもあります。アレックスの優雅さ,上品さ,そして王女としての誇り高さ,一人の女性として悩む姿に共感を抱かせられ,最後の急展開もとても心地よい傑作です。シリーズがまだKINDLE版が本作しかでていないので続きを読みたくて,紙版を買うべきか迷ってしまいます。


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愛を忘れた大富豪 [スーザン・マレリー]

SHALOCKMEMO647
愛を忘れた大富豪 Lone Star Millionaire 1999」
スーザン・マレリー 高木明日香





 サブリナ・イニスは石油関連企業の実力者カル・ラングトリーの秘書。プレイボーイとしても名高いボスのカルに,かつて想いを寄せたこともありますが,今はカルにとっては欠かせない秘書として自分の心を封印して務めています。そんなカルに実は本人も知らなかった娘アナスタシアがいたことがわかり,カルは自分の元に引き取ることを決心します。本当のところ自分の存在すら知らなかったカルに対して,父親として認めるにはアナスタシアはすでに成長しすぎていました。独身生活を謳歌しており,肉親に対して「愛」をどう表現していいかわからないカルは,サブリナに助力を頼みます。数週間の休暇を取り,アナスタシアとの生活を始めようとしているカルと,二人の親子関係をとりあえず整えようと奮闘するサブリナ。サブリナには弟妹が小さいときに面倒を見ていた経験があり,アナスタシアはカルをパパと呼ぶようになるのでしたが・・・。
 カルへの想いが再燃したサブリナは自分の愛に気付かないカルとアナスタシアの板挟みになり,やがて二人の元を去ろうと決意するのですが,「愛」とはなにか,人を愛するとはどういうことか,どうすればよいかをスーザン・マレリー風に読者に伝えられた傑作です。


シークに買われた花嫁 [スーザン・マレリー]

SHALOCKMEMO626
シークに買われた花嫁 The Sheik and the Bought Bride
(アラビアン・ロマンス 13) 2009」
スーザン・マレリー 平江まゆみ





サマー・シズラー2011「愛が燃える砂漠」所収。
「Desert Rogues」シリーズの14巻。
ヴィクトリア・マッカランはエルデハリア王宮でプリンスの秘書を務めているが,そこに目の上のたんこぶの父親が登場し,プリンス・ケイテブと賭けをしていかさまを見破られ,投獄されようとします。これ以上父親に未練もないヴィクトリアですが,投獄されたままでは今後の自分の仕事にも差し支えます。そこで,プリンス・ケイテブの言うことは何でもしますと取引を申し出て,父親を許してもらおうとしますが・・・。プリンス・ケイテブの条件は6ヶ月間愛人契約を結ぶというものでした。プリンスに惹かれる思いもあるヴィクトリアは承知しますが,連れて行かれたところはプリンスの王宮のハーレムだったのです。
砂漠の国で,ヴィクトリアは古いしきたりにとらわれずに,様々な女性たちの自立のための提案をします。プリンスの利害とも合致し,さらにシークたちの理解を得ながら,砂漠の国でヴィクトリアは独自の地位を築いていきます。こうと思ったら頑固一徹を通すヴィクトリアの活きのいい活躍に思わず喝采を送りたくなる傑作です。
 


シークと純真な秘書 [スーザン・マレリー]

SHALOCKMEMO620
シークと純真な秘書 The Sheik and the Virgin Secretary
(アラビアン・ロマンス 10) 2005」
スーザン・マレリー 中野 恵





「サマー・シズラー 2011 恋がきらめく王宮」所収。スーザン・マレリーの砂漠の王宮の物語。今回は舞台はすべてアメリカ国内であり,異国情緒は登場人物にもほとんど感じられない。
ということで,シークものとは厳密には言えないかもしれません。
企業の経営者でシークのラフィクは,砂漠の国ルチア・セラーのプリンスです。バハニア国やエル・バハール国とも親戚関係になっているルチア・セラーですが,プリンスはアメリカで企業経営に携わっており,帰国するのも数年先と考えています。
ラフィクの秘書,カイリー・ヘンドリックは,エリックとの結婚式を前に,エリックの浮気の現場を目撃してしまい,直前に結婚式をすっかりキャンセルしてしまいます。そして,自分の今後を考えたとき,エリックから受けた心の傷跡を癒すことと,エリックに復讐するために,雇い主ラフィクの愛人にしてほしいと,ラフィクに懇願します。これまで秘書としてしかカイリーを見てこなかったラフィクは,ハンサムで富豪,しかもプリンスということで,花婿候補としては引く手あまた。しかしまだ結婚には早いと考えています。エリックへの復讐というカイリーの言葉を受けて,カイリーを女性として注意深く見てみると,改めてその意志の強さと女性的な美しさに気付くラフィクでした。しかし,カイリーと会話している中で元フィアンセのエリックとカイリーの間にはまだ男女の関係が成立しておらず,カイリーがバージンだと知ったラフィクは,愛人の申し出よりも,カイリーとの関係に慎重に,カイリーを傷つけないように最大限の配慮をするのでした。

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砂漠に降る雪 [スーザン・マレリー]

SHALOCKMEMO579
砂漠に降る雪 The Sheik and the Christmas Bride
(アラビアン・ロマンス 11) 2007」
スーザン・マレリー 渡辺千穂子





 引き続き「アラビアン・ロマンス」です。本作の舞台はバハニアではなく隣国のエルデハリア王国ですが,バハニアの国王ハッサンも登場します。エルデハリアの国王ムクスターもハッサンと同じく妻を亡くしていますが,6人の息子もそれぞれ立派に成人しています。妹のプリンセス・リーナも夫を亡くし,宮殿に帰ってきていますが,ハッサンの息子たちがみな幸せな結婚をしたという噂を聴き,我が息子たちにも幸せな結婚をさせたいと考えていたところで,良い嫁を見つけてくれるようリーナに依頼します。最初に選ばれたのは国の内政を主に担当しているプリンス・エイサド。ある族長に一族の子供であるからと連れ去られようとしていた3人の娘を離れ離れにさせないために敢然と立ち向かった勇気のある女性教師ケイリーン・ジェイムズをひょんなことから助けたエイサドは,3人の娘を養子として宮殿に住まわせ,家庭教師としてケイリーンを雇うことにします。母親が16歳でケイリーンを出産し,祖母に預けられたにもかかわらず,育児放棄した祖母に修道院に預けられ,修道女見習いとして成長してきたケイリーンですが,愛情深く修道院で育てられ,たくましく立派な教師として成長し,25歳になったところです。一方プリンス・エイサドは宮殿で何不自由なく育ってきたものの,母親の記憶があまりなく,愛情を含めた感情は男を弱くするものだと思い込んで育ってきました。3人の娘たちは,自分が守らなければという思いはあったものの,愛情が必要だというケイリーンの言葉は今一つピンときません。
 国王ムクスターに良縁をと依頼された叔母のリーナですが,実は自身がバハニアのハッサン国王を男性として意識していたことに気付き,ハッサンはエルデハリアを訪れます。こちらはサブストーリーとしては面白いのですが,バハニアとエルデハリアとの関係が敵対するものか友好的なのかはあまりはっきりとは示されないため,ちょっとボケ気味の感じがします。
 そして,エイサドとケイリーンの間には互いに深い感情が交流し合うのですが,エイサドはケイリーンや娘たちを「愛している」という言葉がなかなか口に出せないまま,終盤まで引っ張ります。愛情深く,美形で,困難に立ち向かう意志の強さと頭のよさを兼ね備えたアイリーンですが,やはり修道院で育った自分がプリンセスとして王族の間で生活するということにはいつまでたっても自信が持てず,砂漠の国を訪ねてきた自分の実の母にも愛情を期待できず,娘たちと宮殿を去るのでした。
 エイサドは,ケイリーンに愛を告げることができるのでしょうか。クリスマスを目前にした砂漠の国に,奇跡は起こるのでしょうか。用意された結末はとても感動的です。


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楽園の恋をもう一度 [スーザン・マレリー]

SHALOCKMEMO578
楽園の恋をもう一度 TheSheik and the Bride Who Said No
(アラビアン・ロマンス 9) 2005」
スーザン・マレリー 高木明日香





 アラビアン・ロマンス・バハニア王国編の最終巻です。皇太子ムラトのロマンスの相手は,なんと元婚約者。
 そして,10年の歳月を経て再びバハニアを訪れることになったダフネ・スノーデン。スノーデン家はエグゼクティヴを志向して上流階級との交際を常に心がける両親のもと,ダフネの姉ローレルの娘,ダフネの姪がムラトとの結婚を言い出します。まだ18歳の姪と34歳のムラトでは釣り合いが取れず,皇太子妃になることは将来の王妃になることを十分に理解していたダフネは,自分だけがバハニアに残り,姪をアメリカに帰してしまいます。かつてムラトを愛してはいたものの,皇太子妃になる決心がつかないまま婚約を破棄してしまったダフネを,ムラトはかつてのハーレムに連れて行き,スノーデン家から嫁を迎えるという謎の言葉を残してハーレムを去っていきます。
 ある日,乗馬の途中で落馬し,怪我で意識を失っている間に,ムラトはダフネとの婚姻を済ませ,スノーデン家からの嫁だと宣言します。誰しもが皇太子としての自分の言うことを聴くという育ちをしてきたムラトにとっては,ダフネもいずれは自分の言うことを聴くはずだと信じて疑いません。
 砂漠への巡回にダフネを同行したムラトですが,二人の意見はすれ違うばかり。業を煮やしたダフネはヘリコプターで王宮に戻ってしまいます。結局盗賊の都へもたどり着きませんでした。奥方を花のように扱うべしという長老の進言を謎の言葉として受け取ったムラトは,ダフネへのこれまでの言動を振り返り,ダフネを自由にすると宣言します。
 ムラトの孤独と,ムラトへの愛に板挟みになったダフネは,妊娠していないとわかるとアメリカへの帰国を決意します。そして,離陸する瞬間・・・


 二人の心の動きが克明に描かれ,ロマンス小説としては丁寧すぎるほどの心理描写とストーリー展開がバランスよく構築されたシリーズ最高傑作です。一つ難を上げるとすれば,盗賊の都でムラトの妹たちやその夫たちとの心の交流が描かれれば,結末もずいぶん違ったものになっただろうと思われること。それにはあと30ページは必要だったのでしょうね。


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砂漠のウェディング [スーザン・マレリー]

SHALOCKMEMO500
砂漠のウエディング The Sheik's Secret Bride
(アラビアン・ロマンス 3) 2000」
スーザン・マレリー 野原 房





記念すべきSHALOCKMEMOのNo500は本書になりました。2003年の9月にNo1を上梓してからほぼ6年間で500冊を読了したことになります。年間約83冊強,月平均7冊弱となります。もちろん100ページ程度の短編から600ページを超す大作まで様々ですので,冊数で比較するのはあまり意味がないのかもしれませんが,一応の目安にはなると思います。仕事の関係で忙しく,月0冊というときもありましたし,逆に10冊を超える月もありましたが,6年前には月5冊,年間60冊を目標としていたので,目標はクリアできたのではないかと思います。今月にはBK1の書評の鉄人にも認定され,読後感を,丁寧に残してきたことに意味があるように思います。それまで,いわば読み散らかしていたものを何とか整理しようと考えて,蔵書リストを作ろうと始めたホームページですが,蔵書量が読書量を遙かに超えている今日,最近はリスト作りそのものよりも,読んだものの方に自分の養分となることを感じ始めています。はじめは数行しか読後感を書けず,もっとも読書メモというつもりであったので,そのことは特に問題視していませんが,ストーリーを示し,気に入ったヒーロー,ヒロイン像,そして作家諸氏や訳者諸氏の思いやねらいにまで思い至るようになってきたことは,自分の精神的成長と読むことによってますますロマンス小説にのめり込むという好循環をもたらしています。


さて,本書は,スーザン・マレリーのシークもの,架空の砂漠の国エル・バハール,隣国のバハニアを舞台にしたアラビアン・ロマンス・シリーズ(原題では「Desert Rogue (砂漠の詐欺師)」シリーズ)の1冊で,本書はその第3巻です。Desert Rogue Series には,バハニア王国を舞台にした3部作もあり,互いに登場人物が関連しています。2000年から作品が書き続けられ,今年13巻目が発表されているようです。そんなシリーズの中で,本書はエル・バハールのカーン王家の3人の王子たちをヒーローにした三部作の第3巻となります。長男で皇太子のマリク,次男ジャマール,三男カリール,そして三人の父ギボンと祖母ファティマがどの作品にも登場します。しかし,面白いことに,三男,二男,長男の順に物語は書かれています。三人のお相手になるヒロインたちは元秘書のドーラ,教養学校の卒業生ハイディ,そして本書のヒロイン,リアナはなんと子連れの教師と,そろいも揃ってプリンセスには縁遠い女性たちです。物語の設定としてスーザン・マレリーは,砂漠の王国の王子たちとプリンセスにはなりにくい女性たちを組み合わせることで,エル・バハールという歴史の深い国と現代とを結びつけようとしており,この設定はかなり成功しているように思えます。
エル・バハールの皇太子マリクは皇太子として育てられるために4歳で親元から引き離され,母親の保護と愛情を感じることなく成長します。さらに政略結婚で娶された前妻に裏切られ,「愛する」ということばを素直に口にすることができなくなっています。そんなマリクが偶然出会った,エル・バハールのアメリカンスクールの教師として子連れで赴任したリアナとその娘ベサニー。マリクとリアナは偶然エル・バハールに到着した飛行機の中で出会いますが,互いを一目見た瞬間強く惹かれる,運命的な出会いをします。この,運命的な出会いは,ロマンス小説には欠かせない設定ですね。読者は自分にはとうてい訪れないだろう美男美女の運命的な出会いをロマンス小説の中で疑似体験し,ひたすらロマンティックな気持ちをもち,ため息をつくことになるのですが,そのカタルシスこそがロマンス小説がもつ最大の魅力の一つでしょう。マリクはリアナ母娘を宮殿に住まわせますが,一国の皇太子が子連れの自分に惹かれるはずがないと考えるリアナは当初の条件だったアメリカンスクールの宿舎に移り,マリクから離れようとします。しかし,マリクはリアナを何とか宮殿にとどめようとし,さらにベサニーが馬が好きだと知ると自ら乗馬を教え,すっかり味方につけてしまいます。その後,砂漠の民の招待を受け,キャンプに出かけたマリクとリアナは,砂漠の民の方法で結婚式を挙げられてしまい,ロマンティックな雰囲気の中でベッドをともにしますが,それは法的な拘束力を持つ合法的な結婚を意味しました。そのことを後で知ったリアナは,無理矢理結婚させられたと感じ,なんとかアメリカに戻ろうとしますが,ベサニーはすっかりエル・バハールが気に入り,マリクに愛情を感じているため,母親を説得しようとします。残る,帰るの二つの気持ちの狭間でリアナの心は揺れますが,最後はマリクからついに「愛している」のことばを引き出し,ついにエル・バハールに残ることになります。
空港の飛行機の中で物語が始まり,最後も飛行機の中で終わるというにくいばかりの設定もあり,ロマンス度が高すぎるきらいもありますが,十分に楽しめる1冊です。


ハーレムの夜 [スーザン・マレリー]

SHALOCKMEMO490
ハーレムの夜 The Sheik's Kidnapped Bride
(アラビアン・ロマンス 1) 2000」
スーザン・マレリー 藤田由美





スーザン・マレリーのシークもので前回読んだのは「シークの国のシンデレラ(SHALOCKMEMO477)」でした。これはバハニア国の隣国エルデハリア王国が舞台となっており,女性の自動車修理工マギーがヒロインでした。本作「ハーレムの夜」はアラビアン・ロマンスの第1巻としてハーレクイン・プレゼンツ(P-195),スペシャル・エディション(N-861)でもすでに発行されており,3度目の刊行となりますが,それだけ繰り返し版形を変えて出版されるというだけあって,いわゆるハーレクインとしてもお勧めの一作ということになるのでしょうか。
原作では「Desert Rogues」として12作出ているようですが,「シークの国の・・・」が最新刊になるようですし,本作が第1巻として丁度対極にある作品ということになるようです。表紙のうつむき加減のブルネットの美女に惹かれてしまうエル・バハール王国のプリンス,カリール・カーンは,ドーラ・ネルソンが空港でウェディングドレスをまとったまま置き去りにされているのを見かねて,ジェットにのせますが,丁度仕事のできる秘書を探していたところであり,ニュー・ヨークでの仕事の間,臨時に彼女を秘書に雇います。
しかし,何日か仕事を一緒にしてみて秘書としての彼女の能力に舌を巻き,幼いころからのいいなづけとは結婚したくない理由があり,口実的にドーラを結婚相手としてアメリカで結婚式を挙げてしまいます。エル・バハールのような首長国で王子が勝手に結婚できるのかということに大いに疑問を感じるものの,近代化を進める上でも,法的に許されるようになっていたのかもしれませんが,国に連れ帰ったドーラの素晴らしい仕事ぶりに,国王である父も兄たちもいつしかドーラを家族として認めていくようになります。しかし,ドーラとしてはどさくさまぎれに結婚を了承してしまったものの,勝手にすべてを決めてしまうプリンス・カリールのやり口を許せず,いわゆる家庭内別居(宮殿に住んでいるのですから宮殿内別居とでもいうのでしょうか)を頑なに守っていきます。いつかは,プリンスが自分を愛していると言ってくれることを信じて…
砂漠の国の美しい風景と孫の嫁に砂漠の国に生きる王子の妻としての心構えを説く皇太后ファティマの頼もしい活躍が読みごたえのある中編です。

あと,10作で500冊に到達するSHALOCKMEMOです。7月中にはなんとか新しいステージに入れるでしょうか・・・


シークの国のシンデレラ [スーザン・マレリー]

SHALOCKMEMO477
シークの国のシンデレラ The Sheik and the Pregnant Bride 2008」
スーザン・マレリー 瑞野はるみ





久方ぶりにコンテンポラリーを手にしました。スーザン・マレリーの作品を読んだのも1年半ぶりになりますので,このブログでは初登場です。
本作はハーレクイン・プレリュードのVOL3「砂漠に降る雪」の続編になりますが,著者の「アラビアン・ロマンス」シリーズの関連シリーズとして,バハニア王国の隣国エルデハリア王国が舞台となっているようです。
エルデハリア王国の王子カーディルの要請で,ロールス・ロイスの修理にやってきたのは,うら若き女性マギー・コリンズでした。父とともに修理工場を経営していたものの,最近父が亡くなり,一人残されたマギーは工場も他人に売却してしまい,経済的にも困っていたところだったのです。幼いころ母を亡くし,遊び場として自動車工場のなかで父にまとわりついて育ったマギーは,普通の女の子と違い,車のことなら興味津々でも,ファッションや宝石などには全く興味がなく,いつもTシャツに繋ぎ姿のため,自分の女性としての魅力には全く気付いていないという長身の女性でした。大切なロールスのクラシックカーの修理を任せるために腕のいい職人をアメリカから呼んだと思っていた王子のもとに妙齢な女性がやってきたので,すぐに帰ってくれと言ったカーディル王子でしたが,マギーの車を愛する真剣な言葉と,王子に阿らないちょっと変わった言動に興味を覚え,修理を任せることにします。
折しも,国王である父から身を固めて後継ぎを残すようにしつこく求められていた王子は,マギーにある提案をします。二人が付き合っているように装い,結婚話が出たら,婚約を破棄してマギーはアメリカに去る。その間のビジネスライクな付き合いに対して高額の報酬を約束する,という契約上の交際はどうかと。初めは王宮のしきたりなど全くわからないマギーはその提案を受け入れるべきか迷いましたが,帰国後の生活のことを考えると,断りきれない提案であることから,OKの返事をします。それからは国のあちこちで二人が親密な様子がマスコミに流れますが,マギーの幼馴染で父を亡くした後一晩だけ関係をもったジョンの子供を妊娠していることがわかって愕然とします。原題の直訳「王子と妊娠した花嫁」が,これで,なるほどとうなずけます。



マギーの相談相手になるのは,別の王子の秘書のアメリカ人ビクトリア・マッカラムですが,「王子と呼ばれる人たちは恋に落ちたりしないのよ。差しだされたものを受けとって,先へ進むだけ。誰かに心をささげる必要なんてないんだもの。」というビクトリアの恋愛観,処世観が,ちょっと悲しく,自分の子供でないことを分かっていながらマギーに結婚を申し込んで断られたカーディル王子が,兄のケイテブ王子に何が不満なのかわからないと相談した時,「愛しているといったか?」と問われて,初めて自分の気持ちに気付くあたりが,男女の恋愛の機微を巧みに表現していて,読後さわやかな感じをもてる作品です。


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