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夢に想うは愛しき君(ド・ウォーレン一族の系譜 2)  [ブレンダ・ジョイス]

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夢に想うは愛しき君 The Stolen Bride (deWarenne Dynasty 8) 2006」
ブレンダ・ジョイス 立石ゆかり





 ブレンダ・ジョイスの最大シリーズ「ド・ウォーレン一族」シリーズの邦訳第2弾です。
 邦訳第1弾「仮面舞踏会はあさき夢」でも書きましたが,このシリーズはなぜか第1作から翻訳されず,第7作から翻訳され始めました。詳細はわかりませんが,想像するに,第1作からの数作と,第7作からの数作はおそらくヒーロー,ヒロインたちの世代が違うのかもしれません。これは,第1作目の「The Conqueror」が翻訳されてみないとわかりませんが,アイルランドを舞台としている本シリーズの第1作が「征服者」ですから,かなり歴史的に古い時代(11世紀後半)を背景にしているのではないかと思われます。
 さて,第7作目の前作では,時代は19世紀初頭,ド・ウォーレン家の長男ティレルとフィッツジェラルド3姉妹が中心のストーリー展開でした。古い名家にありがちで,第8作の本書では,ティレルの妹でウォーレン家の末娘,エレノア(エル)と,異母兄ショーンの激しい愛が描かれています。
 4年間家族にもまったく連絡を絶っていたショーンが突然現れたのは,エルの結婚式のわずか2日前でした。イングランドの上流階級の息子との結婚を前にエルは,幼い頃からあこがれの気持ちを抱いていたショーンの出現で,結婚を取りやめようと考えます。そして,式の直前,ショーンとともに出奔します。まさに映画卒業を思わせるこの直前逃亡で,物語は盛り上がりますが,この4年間ショーンが何をしていたのか,エルに対する気持ちはどうなのか,そして,4年間の中でも投獄されていた2年間以外にショーンがなんとしても言いたがらない2年間は何があったのか。周囲の兄弟たちを巻き込んで,次第にその秘密が明かされていきます。
 それにしても,エルの気持ちの変化と,ショーンがエルへの愛に気づいていくのに,なんと多くの時間と出来事が費やされるのでしょうか。読者はまさにイライラ状態が数百ページにもわたって続きます。そして,アイルランドとイングランドの確執,常識と激しい愛のせめぎあい,親子・兄弟の関係,宿敵との対決などが最後の十数ページであっけなく解決し,エピローグに至ってしまう点など,ちょっと納得の行かない思いをする読者も出てくるのではないかと思いますが,カタルシスの解消という点で,あえて筆者が狙ったストーリー展開だとすれば,まさしくその術中にはまることになると思います。
 これは,読む側にも忍耐と大人の完成を要求する作品なのかもしれません。


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仮面舞踏会はあさき夢(ド・ウォーレン一族の系譜 1) [ブレンダ・ジョイス]

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仮面舞踏会はあさき夢 The Masquerade (de Warenne Dynasty 7) 2005」
ブレンダ・ジョイス 立石ゆかり





ブレンダ・ジョイスの作品は本邦初訳のようですが,すでに40作以上の作品があり,本作品は「ド・ウォーレン一族」の物語の第7作目に当たります。
なぜ,第1作目から翻訳されなかったはわかりませんが,一族の長男ティレルのロマンスを描いていることから,なにか意図があったのかもしれません。
シリーズはすでに11作目を数えており,作者のHPによると,2009年には次の作品が用意されているようです。全11作については,そちらを参照してみてください。
舞台はアイルランド。南部アイルランドの町や北部のダブリン,ロンドンなど,めまぐるしく舞台は移動しますが,旅行中の様子はほとんど描かれず,貴族の屋敷前の馬車に乗り込むところから,細かな描写は一切避けて,すぐに目的地に着いて次のストーリーへと進行していきますので,まるで舞台のお芝居を見ているかのような描かれ方がされています。エリザベス・アン・フィッツジェラルドは3姉妹の末っ子。純真で上品で,本好きな乙女ですが,幼少のころ水にはまったところをティレル・ド・ウォーレンに助けられ,ティレルを王子様として尊敬し,愛情を抱いていました。その後何度か助けてもらったことから,自分の中で愛を育んでいたのですが,身分の違うティレルが自分を振り向いてくれようはずもなく,やがて,大金持ちの令嬢ブランシュ・ハリントンとティレルの婚約の噂が聞こえてきました。ブランシュは,絶世の美しさを誇り,気品とどんなときにも落ち着いた態度を示す,ティレルにはふさわしい婚約者です。しかし,仮面舞踏会に,3姉妹で出かけた折,姉のアンナに服が汚れたので交換してほしいと頼まれ,汚れた服で帰宅したエリザベス(リジー)でしたが,後日アンナの様子がおかしいことに気付きます。実は,アンナはすでに愛する人との婚約が決まっていたにもかかわらず,娼婦と勘違いしたティレルとその夜,一夜限りの関係を持ってしまい,妊娠してしまったのでした。そのことを隠すため,アンナとリジーは叔母のもとに身をよせ,アンナは密かにティレルとそっくりの男の子を出産,リジーは愛するティレルの忘れ形見であるその子エドワード(ネッド)を自分の子供として育てることにして家に帰ったのでした。いくつもの秘密を抱え,苦しむリジーですが,ネッドヘの愛,ティレルへの愛,姉たちへの愛,両親への愛と幾つもの愛のはざまで,苦しみながらも,ついに,ティレルの愛を獲得していくのです。
ティレルは,ウォーレン家の長男として,愛による結婚よりもブランシュとの政略的結婚を選ばざるを得ず,リジーを愛人としてしばらく家に置くことにしますが,ブランシュの方にも,幼いころに暴徒に取り囲まれ,母親を亡くしてしまうという悲劇を体験し,その後全てをなげうって自分を育ててくれた父親から離れて結婚することに心から納得することはできないのでした。
とまぁそんなわけで,結局ティレルはブランシュとの婚約を解消し,リジーと結婚するわけですが,後半,リジーにずっと付添い,励まし続ける姉のジョージーも,おばの甥でティレルの友人ローリーとめでたく結婚し,3人の娘たちの相手探しに奔走していたリジーの母の望みも完成することになります。
都合のいい展開といえばそのとおりですが,終始読者はリジーとティレルの懊悩にずっと寄り添い,最後に胸のつかえを下ろすことになるという,ロマンス小説の王道をしっかり踏まえた佳作になっています。


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