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はじめての愛を知るとき [ジェニファー・アシュリー]

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はじめての愛を知るとき The Madness Lord Ian Mackenzie 2009」
ジェニファー・アシュリー  Jennifer Ashley  jennifersromances.com 村山美雪





 家庭内暴力。いわゆるDVは夫婦間のものだけではなく,親兄弟間でも発生するもののようです。ロマンス小説を読んでいると,親に虐待を受けるという暗い過去を持つ人々が目白押しに出てきます。現代の抱える大きな心の病であり,人々の共感を生みやすいからでしょうか。



 本作に登場するヒーロー,イアン・マッケンジーも,ヒロインのベス・アッカリーも父親からの虐待を幼少時代に受けています。シリーズになっている「マッケンジー一族」の四兄弟は,その父である公爵が自分の妻であり四人の母の命を奪ってしまうのですが,それを目撃していた幼い四男のイアンを,病院送りにしてしまい,長兄のハートが父公爵の没後にやっと病院から取り戻すまで,病院でも虐待を受け続けていたのでした。しかし,イアンは一度見た書物・文字などを写真を写すように記憶してしまい,音も一度聞いたものを忠実に再現できるという特殊な能力を持っていました。人間は忘れることができるため脳を休めることができかろうじて心のバランスを保っていられるのですから,すべてを記憶できるイアンがときどき情報を整理できずに精神のバランスを崩したようなふるまいをしてしまうのは当たり前のことだったのかもしれません。こんな能力を自分も持っていたらすごいだろうなと思える半面,自分もこんな風であったならとっくに気がふれていただろうなとも想像できます。イアンの兄たち,ハート,キャメロン,マックも弟のこんな特技・特徴をよく知り,大切に思っていたのでした。ところで,このマッケンジー一族はスコットランドに広大な領地をもち,同時に権力をももつ名家だったのですが,先祖代々変わり者の家系として知られ,近寄りがたい存在でもあったようです。そして父公爵の妻殺し,さらには5年前のハートの所有していた娼館での娼婦殺し,そして最近起こったもう一人の娼婦殺しの犯人としてスコットランドヤードの刑事から目をつけられていたのがイアンだったのです。
 ヒロインのベスは,もともと貴族ではなく,ロンドンの下町で貧しい生活を送っていたのですが,夫に先立たれ,コンパニオンとして仕えた夫人が死後ベスに遺産を残したため,豊かな未亡人相続人として社交界でも注目を集める美貌の女性でした。ある中国製の磁器を売る店で二人は出会います。イアンの方は自分が人を愛することのできない性格であると思い込み,ベスを相続人として利用しようとしている貴族から護りたいと考え,突然求婚します。一方ベスはマッケンジー一族を執拗に追いかける刑事のフェローズからイアンを助けてあげたいと思い,結婚は断るもののイアンの誘いを受けて一緒にいたいと思う気持ちは止められませんでした。
 二人の気持ちは,家族や周囲の人々との関係で少しずつ近づいていきます。このストーリー展開や二人の気持ちの変化の描写の巧みさが,本書を四つの賞を受賞するほどの傑作に仕上げているところだと思います。アメリカ最大のロマンスサイトAARで最優秀作品賞始め四冠を達成した好著,本書はお薦めの1作です。そして,さらに三男,次男,長男がヒーローを務めるマッケンジー一族シリーズの翻訳が待たれます。


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