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ふたりきりの花園で [トレイシー・アン・ウォレン]

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ふたりきりの花園で Seduced By His Touch 2009」
トレイシー・アン・ウォレン 久野郁子





 トレイシー・アン・ウォレンの作品は二見文庫から7冊訳出されていますが,すべて,久野郁子さんの訳です。既読は「昼下がりの密会」のみですが,「ミストレス・トリロジー(原題ではTrap Tolirogy)」,そしてこの「ブラエボーンのバイロン一家」シリーズが訳出されています。バイロン一家シリーズの第1作はメグ・アンバーリーとバイロン家の次男ケイドのロマンスですが,ふたりは本書にも時折顔を出します。本作ではバイロン家の三男,ジャックが賭博で被った多額の借金の返済のため,実業家の娘グレース・デンバーズとの結婚を余儀なくされてしまうものの,やがてグレースの知的で才能あふれ,秘められた美しさに気づき,ジャックがグレースを愛し始めた矢先,グレースが,実は借金の肩にプロポーズされたことを知る,という設定で,ふたりの間の関係に読者がやきもきするように物語が展開していきます。
 イギリス摂政時代の上流階級の女性は自活の道はあまりないのですが,グレースには花や動物を本物そっくりに描くという才能があり,それをまとめた画集が売れるという設定になっています。百科辞典だけではなく,写真がまだ一般的ではなかった(まだ発明されていなかった?)時代には写実的な絵画は貴重なものだったことは,荒俣宏氏などにより日本でも紹介されていますが,まさに芸術的な写実の絵は繊細な女性によって描かれたものが当時はたくさんあったのかもしれません。しかし,女性の名前で紹介されるものは少なく,女性も仮の男性の名前で出版していたのでしょうね。


昼下がりの密会 [トレイシー・アン・ウォレン]

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昼下がりの密会 My Fair Mistress 2007」
トレイシー・アン・ウォレン 久野郁子





トレイシー・アン・ウォレンの新シリーズ。
19世紀初頭のイギリス摂政時代で,対仏戦争のことがあまり出てこない作品は少ないと思いますが,ヒーロー,ヒロインの心理描写と運命に翻弄される二人のロマンスを中心に描かれている本作では,対仏戦争の社会に落とす影よりも,イギリス階級社会の影の方を多く描いていると思います。
伯爵家の長女ジュリアナは年の離れた夫を亡くし,未亡人になっています。弟のアラートン伯ハリー・デイビスは賭けごとで財産と領地を失くしかけますが,妹マリスの社交界デビューの年でもあり,ジュリアナはハリーの借金と伯爵家の体面を保つため,ハリーの借金の相手である実業家レイフ・ペンドラゴンの許を訪れ,借金の猶予を願い出ます。借金返済の代わりにレイフが申し出たのは,借金の棒引きの代わりにジュリアナとの6ヶ月間の愛人契約でした。「ドラゴン」と呼ばれ,借金相手には非情になれると噂のレイフに対して,自分の人生よりも弟や妹の困難を救おうと,ジュリアナはレイフの申し出を受け入れるのでした。
借金返済のためにレイフの許を訪れたジュリアナでしたが,夫とは違うレイフの愛のテクニックに思わず自分を失ってしまったジュリアナは,次第にレイフを愛するようになり,レイフもまたジュリアナのことを考えると仕事が手に付かなくなってしまうのでした。
社交界にデビューしたデイビス家のマリスは,上流階級の独身紳士から次々に招待を受けますが,財産のないウェリング大佐に好意を抱きます。一方本編最大の敵役であるミドルトン子爵セント・ジョージの強引な誘いを断れず,ジュリアナとマリスは子爵邸の舞踏会に参加することになります。子爵邸で先祖代々の肖像画を見ていたジュリアナは子爵の父がレイフにそっくりであることに衝撃を受けます。実はレイフはミドルトン子爵の異母兄だったのです。自らは庶子であり,貴族社会に受け入れられないため,波止場の沖仲仕見習いから財産を築いてきたレイフでしたが,もともとは貴族の出自であり,貴族の教養も身につけていたのでした。一方,嫡出ながら父親が自分や自分の母親よりも愛人とその息子を愛していたことに強い恨みを抱いていたミドルトン子爵は,父親を毒殺し,さらには,その日のうちにレイフの母親を家から追い出し,さらにはレイフと結婚する予定だったパメラを仲間ら4人と共謀して暴力をふるい,自殺に追い込んだのでした。そんな血も涙もないミドルトン子爵の悪行に復讐するために,レイフは長い時間をかけて子爵の仲間たちを破滅に追い込もうとしてきたのでした。ジュリアナが,その子爵邸の舞踏会に出かけたと知ったレイフは愕然としますが,ほとんど人に話さなかった過去の出来事をジュリアナにはなぜか打ち明けてしまうのでした。ジュリアナをほとんど自分のもの,自分を愛するようになったと感じたレイフは,子爵の魔の手からジュリアナを守るため,わざとジュリアナに別れを告げるのでした。(以下ネタバレがあります)
レイフと別れた後,ジュリアナは彼の子供を身籠っていることに気付きます。まさしく運命でしょうか。姉の様子がおかしいことに気付いた弟のハリーは,レイフのもとを訪れ,決闘を申し込みますが,レイフに一蹴されてしまいます。しかし,レイフは自身が庶子であることで傷ついたことから,子供の将来を思い,ジュリアナとの結婚を考えます。しばらくぶりに会ったレイフを愛する気持ちを失くしていなかったジュリアナも承諾し,短期間で結婚します。しかし,社交界に受け入れられるためには,レイフは貴族の爵位を50万ポンドで買い,そのことをジュリアナには言わないでいたことから,二人の結婚生活はまたまたぎくしゃくとしてしまいます。
まったく,はたから見ている読者はやきもきさせられるばかりですが,このあたりのストーリーの運びにすっかり読者はのめり込んでしまいます。
さて,敵役のミドルトン子爵はいよいよ財政的に行き詰まり,ついにはジュリアナを誘拐し,自分の悪行を友人がつづった日記と2万ポンドを要求します。ジュリアナは子爵のすきを見て手を縛っている紐を外し,外に逃げ出しますが,身重の体で遠くまで逃げられるはずはありません。すぐに子爵につかまってしまいますが,そのとき,レイフと友人のイーサンが駆けつけます。レイフは日記と金は近くに埋めてきたと偽りを言い,子爵とともに森の方にいきますが,チャンスを見つけて子爵に襲いかかり,すったもんだの揚句,ナイフで子爵の胸を深々と刺して,敵を討つのでした。
それからは,ジュリアナと出産の苦しみが十数時間続き,ついに二人の愛の結晶キャンベル(キャム)の誕生となります。
さて,この新シリーズ「ミストレス三部作(原題ではTrap Trilogy)」は,レイフの二人の友人イーサンとトニーがヒーローとなっているそうです。だいたい,どの三部作でも1作目より2作目のほうが安心して読めることが多いので,次作がさらに楽しみです。


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