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禁じられた城の秘密 [ジェニファー・セント・ジャイルズ]

SHALOCKMEMO461
禁じられた城の秘密 Midnight Secrets 2006」
ジェニファー・セント・ジャイルズ 上中 京





原書の表紙には金髪碧眼の顎のシュッとしまった美女が映されていますが,本書に登場するヒロイン,キャシーや失踪したその親友メアリーが,斯くもあったかのように表現されています。しかし,訳書の表紙はご覧のとおり,あえて後ろ向きの姿が映されており,なにか謎めいた感じを表しているかのようです。ペーパーバック版やKINDLE版の装丁に近いものがあります。
帯には「妖しき幻想と官能の世界,これぞゴシック・ロマン」と書かれており,いやが上にも,興味をそそられる,「ゴシック・ロマン」という表現が本書全体を見事に言い表しているようです。しかも作者の冒頭の謝意にも,ゴシック・ロマンを意識して本書を描いたことが記されています。
オックスフォードに居住するアンドリュース家には3姉妹がいましたが,それぞれ,星座にちなんだ名前が付けられていました。長女はカシオペア(キャシー),次女はアンドロメダ,三女はジェミナイ。しかも3人ともそれぞれ特殊な才能を持った少女たちだったのです。本書は長女のカシオペア(キャシー)のロマンスが中心ですが,夢に現れた人が必ず死ぬという不気味な能力でした。次女のアンドロメダは触れた人の心が読めてしまうというものです。次女のロマンスは次作の「竜ひそむ入り江の秘密」に記されているようですので,後の楽しみとしましょう。
何度もキャシーの夢には海辺の嫌いな親友のメアリーが溺れてしまうという夢が登場します。そのことを不審に思ったキャシーは,メアリーが家庭教師として赴いたキルダレン城のある町を訪れ,憲兵隊長(この当時は田舎町の治安は憲兵が守っていたのでしょう)に親友の死因の調査を依頼しますが,一向に埒が明きません。オックスフォードでは,キャシーは雑誌の人生相談を記事にするという仕事をするという自活した女性だったのですが,城でメイドを捜しているという情報を聞きつけ,自らメイドに身をやつして城の門を入ります。女中頭のフライ夫人は遠慮会釈なくメイドにきつく当たる人だということは聞いていたのですが,父親が亡くなって経済的に困っており,スキャンダルから逃れるためにメイドの仕事をしたいという言訳を考え出し,城のメイドとして勤めることになります。しかし,他人の人生相談に回答を書いていたとはいえ,実際のメイドの仕事の厳しさや下層の人々がどんなに厳しい生活にも耐え,どんな考え方を持っているかなどは全く分かっていなかったことが,初日の生活だけでも身にしみるほど体験したのでした。しかし,新入りのキャシーに助言し,なにかとフライ夫人からかばってくれる村の娘ブリジットが,親友として城での生活を支えてくれました。
キルダレン城の主はショーン・キルダレン。引退したダートレイヴン伯爵の双子の弟ですが,兄のブラックムア子爵アレグザンダー・キルダレンは町の反対側の城に住んでおり,8年前,一人の女性を兄弟で争って兄が弟を傷つけたことから仲たがいしたままであり,さらに昼間は全く姿を見せず,夜になると城にあるドームにこもっていることから,バンパイアではないかとうわさされる怪しい男性です。このあたりの設定で,ゴシック・ロマンの雰囲気はかなり感じられ,引き込まれていきます。
その後も,苦しい生活に耐え,親友メアリーのことを捜査するキャシーですが,真相に迫る手がかりが全く得られないまま,キルダレン城に住む伯爵の庶子の若者や奇妙な行動をとるフライ夫人の息子,城主の愛妾かと思われるプルーデンス夫人と盲目の娘レベッカなど,様々な人々が登場し物語に華を添えますが,ヒーローであるショーンとキャシーの関係が次第に接点を増やし,キルダレン城を取り巻く秘密も次第に明らかになってくるなど,クライマックスに向かって次々に事件が起こり,一気読みを可能にしてくれます。登場人物一人一人の人物造型や描写がとても丁寧に描かれているにも関わらず,ストーリーがテンポよく進み,しかも,不気味な様子や風景の美しい情景描写にも優れており,まさに傑作と言える作品です。
メアリーの死の真相は最後に明かされますが,真犯人が果たしてその人物なのか,また,過去の謎が残されたまま次作への期待を込めて,ハッピーエンドを迎えるという終わり方も,実に見事です。お薦めの一作。


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