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純白の朝はきらめいて [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO674
純白の朝はきらめいて Married by Morning 2010」
リサ・クレイパス 平林  祥





 リサ・クレイパスのハサウェイ家シリーズの第4弾です。本作ではハサウェイ家の長男レオが,イギリスに戻ったところ,家庭教師のキャサリンがすでに妹たちの心をつかんでおり,家政婦以上に家の柱的存在になっていたことに驚きを感じたところから物語が進行します。自分の過去を一切語らないキャサリンに,レオはなにか秘密があることを感じ取りますが,質問には一切答えないキャサリン。しかし,妹たちのレディとしての立ち居振る舞いに対する教師としての指導ばかりでなく家の中がきちんと整理されていることに文句のつけようもなく,過去を明かさないからといって首にすることもできません。さらには文庫表紙にあるように美しい金髪と整った顔立ち,スタイルの良さは,女性としての魅力にあふれています。次第にその魅力に惹かれていくのを感じながらも,顔を合わせると互いに対立する言葉を掛け合うふたり。しかしキャサリンの方も,自分の過去に対する恐れ,そしてハサウェイ家を出されたらという不安から,レオの申し出に対しては心のなかではイエスと叫んでいても,口に出して言うことはできません。ところが,あるパーティでキャサリンの過去を知るレオの放蕩時代の仲間ラティマー卿がキャサリンに迫ってきます。次第に明らかになってくるキャサリンの過去,そして恐れの謎が明らかになるにつれ,ふたりの関係は急速に接近していきます。
 とんでもない冒険譚にあふれたハサウェイ家の面々が時々顔を出し,その強烈なキャラクターを示すのもシリーズものの楽しみの一つです。特に本作ではポピーの夫ハリーがすばらしいアシスト役を務めます。


愛する道をみつけて [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO666
愛する道をみつけて A Deal With the Devil 2004」
リズ・カーライル 川副 智子





 リズ・カーライルのヒストリカルロマンスを読了しました。リズといえば,ヴィレッジブックスでの翻訳が多かったようですが,ここ2作,二見文庫から翻訳が出ているようです。
 オーブリーは姉の死後その息子のイアンとともにカードウ城の家政婦として元軍人のエライアス・ロリマー少佐の面接を受けに行きます。実はオーブリーの父は少佐の元部下であり,戦争で少佐の命を救うために犠牲になったのでした。戦争後の後遺症で生きる気力を失っていた少佐は,城や領地の経営には全く見向きもせずに,城も荒れ果て放題でしたが,オーブリーはかつて覚えた城や領地の経営にその能力を発揮し,さらに少佐の生きる気力をとりもどそうとにわざと口答えし,健康を気遣うのでした。オーブリーと,少佐の間にはいつしか友情とも呼ぶべき感情が湧いていきます。しかし,少佐はある朝銃で撃たれて殺されてしまうのでした。一方,少佐の甥で本来の領主でもあるウォルラファン伯爵ジャイルズは,今や議会で重要な地位を占め,政治家として押しも押されぬ存在でしたが,家政婦となったオーブリーからカードウ城の窮状を訴えるの手紙には適当な返事を返すだけで本気で取り組もうとはしませんでした。叔父の突然の訃報を受け取ってカードウ城に戻ったジャイルズは,すでに手紙で知っていたオーブリーが,年老いた家政婦ではなく,若く美しい娘であり,ミセス・モントフォードという名前に惑わされていたことに気がつきます。しかも,夫を亡くし一人息子のイアンと職を探してカードウ城にやってきたという話にはなにか秘密があるように思えてならないのでした。少佐と同じく雇われ人でありながら歯に衣を着せぬオーブリーの言い方に最初は腹を立てたジャイルズでしたが,カードウ城の窮状や塔が倒れて叔父がけがをしそうになったところをイアンが助けてくれた話を聞き,次第にオーブリーがカードウ城にはなくてはならない存在であること,多くの秘密を抱えているのにオーブリーが信用できる女性であることを直感し,次第にオーブリーに惹かれていきます。また,イアンが素直で賢い少年であることを見抜き,イアンと遊ぶことにも心の居場所をみつけるのでした。
 不審な死を遂げたロリマー少佐の事件を解決するために治安判事のヒギンズが捜査に当たりますが,なかなか犯人らしき人物が現れてきません。そんなとき,少佐が大切にしていた高価な懐中時計がオーブリーの部屋から見つかり,疑いがかけられていくのですが,ジャイルズは真実を語ろうとしないオーブリーが犯人であるとはどうしても思えないのでした。ジャイルズが事件解決のためロンドンから招いた元警部のマックスと友人のケンブルが到着し,徹底した捜査が行われるのですが,二人が暴いた真実とは・・・。物語の終末近く,タイトルになった“Devil”,そして「道をみつけて」の意味が示されます。。
 ヒストリカルには欠かせない執事や秘書,メイドたちの存在もたっぷりと描かれ,楽しめる作品ですが,なんといっても自分の秘密を抱えながらも毅然として,そして時に愛らしいオーブリーのヒロインぶりが圧倒的な存在感を示す作品です。


待ちきれなくて [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO631
待ちきれなくて The Reluctant Performer 2002」
リンゼイ・サンズ  Lynsay Sands  lynsaysands.net 上條ひろみ





NHKでドラマ化もされたミステリ小説に「覆面作家は二人いる」というのがありました。本作のヒロインも覆面作家として,小説ではなくコラムニストなので覆面コラムニストというのが正しいかもしれませんが,プロフィールを明かさずペンネームで執筆する謎の人物という職業(というよりはフリーのライターというべきでしょうか)をもっています。しかも時代はリージェンシー。まだ上流階級の女性が職業をもつということが一般的ではなく,せいぜいあるとすれば,家庭教師かコンパニオンといった上流階級の中の子女の教育か未婚の女性の付き添いぐらいの所だったのでしょう。社交界にこの職業のことが知られたら出入り禁止という厳しい状況だったはずです。そんなことをいっていられない状況がヒロイン,マーガレット(マギー)・ウェントワースにはあったのです。もともとG.W.クラーク(このGWが何の略なのかは明かされませんが)というペンネームでコラムを書いていたのはマギーの兄,ジェラルドだったのですが,ナポレオン戦争で落命してしまいます。マギーは自分と一緒に暮らし続けていた使用人たちを路頭に迷わせて一人田舎の一軒家に引っ越すわけにはいきません。この覆面コラムニストの職業で収入を得,なんとかロンドンの屋敷を維持することができていたのです。時に,戦争から戻ってきた兄の友人たち,ラムジー卿ジェイムズとマリン卿ロバートは,ボウ街の探偵を雇って戦友であり事後を託されたジェラルドの妹を探しますが,探偵が持ち帰ったのはとんでもない情報でした。それは,マギーが今をときめく娼館の謎の女性レディXだというのです。実はマギーはコラムの取材で娼館のマダム・デュバリーの許可を得てメイジーという娘に話を聞きに行っていただけなのですが,そこにやってきたジェイムズに拉致され,ジェイムズの屋敷に幽閉されてしまいます。幽閉とはちょっと大げさですが,「隠されて職業」というキーワードが二人の会話の中で微妙なすれ違いを生じさせ,互いに勘違いしたまま二人の微妙な生活が始まります。このすれ違いは,何度かマギーの身に不思議な出来事が起こる中で,その捜査を継続していたボウ街の探偵の勘違いが判明することとなりますが,そんな勘違いをしたことを断固として許せないのになぜかジェイムズに惹かれていくマギーと,ぎくしゃくしそうになった二人の間を取り持つジェイムズの叔母レディ・バーロウがとてもいい味を出し,愛らしい憎めない女性たちとして描かれている,読後感のさわやかな一作です。


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運命の夜に抱かれて [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO630
運命の夜に抱かれて A Wild Yearning 1990」
ペネロペ・ウィリアムソン  Penelope Williamson 木下淳子





1991年度のリタ賞受賞作。
18世紀初頭,アメリカ開拓地に暮らす人々の日常と厳しい自然やその美しさ,先住民族との共存を背景に,3人の男女のロマンスを真摯に描いた傑作。作者ペネロペ・ウィリアムソンは,エリザベス・ランバート,ペン・ウィリアムソンの別名による作品を含め,12作のヒストリカルロマンスを執筆しているうち,本作と次作「Keeper of the Dream」がリタ賞を連続受賞しているカリフォルニア在住の作家です。
ヒロインのデリアは父からの虐待に耐え,酒場で働く女性ですが,耐えきれなくなってきたところに医師タイ・サヴィッチの花嫁募集の知らせに応募し,メイン州の開拓地メリー・ミティングに向かうのでした。当地へ赴任する牧師夫妻の妻で心優しいエリザベスとの友情や,デリアとタイの心の葛藤が前半描かれていきます。タイは白人の医師という顔と,先住民アブナキ族の族長の息子という顔の両面をもっており,自分は本当はどちらの世界に属するのかという悩みを抱えています。
やがてメリー・ミーティングに着いたデリアは,前妻に先立たれた二人の子持ちナットとの結婚を承諾し,幼いティルディや言うことを聞かない長女メグの世話をしながらナットとは寝室を別にするという奇妙な新婚生活を送ります。ナットは前妻メアリーを忘れられず,デリアはタイにひそかに想いをもっていたのでした。
やがてやってくる先住民の侵略。ナットやデリア,エリザベスなどがドリームと呼ばれるアブナキ族の次期指導者に連れ去られ,ナットは頭の皮を剥がれてしまい,デリア達は奴隷としてテント生活を余儀なくされます。後半はアブナキ族の集落に舞台を移し,デリア達を追ってきたタイの戦いと,心の葛藤,そしてタイとデリアのロマンスの進展が綴られます。
厳しい冬を乗り越え,新たに生まれたエリザベスの赤ん坊を加えた一行がメリー・ミティングについてみると,衝撃の事実が待ち構えているのでした。
さまざまな困難に出会いながらも,自分の愛を信じてしっかり生きていくデリアの姿に勇気をもらい,感動を覚える読者も多いことでしょう。まさに表紙絵に描かれている整った顔立ちで意志の強そうな鼻と目をもつ豊かな黒髪の美女がデリアのイメージですね。


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騎士から逃げた花嫁 [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO621
騎士から逃げた花嫁 From This Moment On 2002」
リン・カーランド  Lynn Kurland  lynnkurland.com 旦 紀子





De Piaget series」の第2弾です。
勇猛果敢で知られる騎士コリン。イングランドで最も怖ろしい騎士とも言われるコリンの元へ嫁ぐように定められたソロングのエレオノールは,兄の拍車と鎖帷子を盗み,騎士見習いの少年の振りをしてメニュレイ・シュル・メールの娘,シビルとともに,花嫁の付き添いとしてイングランドに渡ります。しかし,嫁ぎ先が自分が逃げ出した相手であるコリンであるという運命の悲劇が待っていました。
本作では3人の魔女やド・ピアジェ家の人々,関連するシリーズの面々も登場し,登場人物の多さがこのシリーズの特徴といってもいいでしょう。しかし一人一人の作中の役割や性格がかなり明確に描き分けられているので,混乱することなく読み進められていくことを取り上げても,リン・カーランドの筆力の素晴らしさが実感できるのではないかと思います。
イングランド一の剣の使い手で,無骨な顔立ちのコリンに対して,その秘められた優しさと愛らしさに気付いていくエレオノール(男装のアンリ)ですが,コリンもまた,少年の外見にとらわれずに見つめたときのエレオノールの美しい顔立ちと,勇敢な気立てに敬意を感じ,自分から逃げだした花嫁が実は少年の格好をして自分の手元にいることに気付いたとき,自分が嫌われていないことを祈るのでした。
 表紙のモデルのようにエレオノールは凛々しく中性的な魅力を持った外見をした女性なのでしょう。しかしコリンが外見だけではなくエレオノールの女性ながらも自分を律し,男性にも負けない勇敢な態度に完全に参ってしまうのです。そして心を許しあったのちの二人の会話がとても魅力的です。
 敵役のエティエンヌとエレの義母マリーの根性の悪さには全く嫌気がさしてしまいます。

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時を越えて乙女に口づけを [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO611
時を越えて乙女に口づけを The Very Thought of You 」
リン・カーランド  Lynn Kurland  lynnkurland.com 旦 紀子





前作「夢の騎士にふたたび」につづく,マクラウド・シリーズの第2弾です。前作でジェイミー・マクラウドと結婚したエリザベスの兄,アレックスがヒーローです。アレックスがジェイミーの作成したと思われる地図の×印がついた箇所に避暑にでも行くように行ってみると,フェアリー・リングと呼ばれる植物の繁茂状況でした。そこに立ってみると,なんと12世紀にタイムトラベル。女性ながら鎖帷子で全身を覆い,長剣をもつ女領主マーガレットの城に連れて行かれます。父や兄たちを相次いで亡くし,マーガレットは密かに10年間も領地を管理し,立派に治めていたのでした。その豊かな領地を狙い,隣国の残忍で領地管理の全くできないブラックウォルド領主ラルフに,その秘密を嗅ぎつけられ,ここ1年間はマーガレットに結婚を迫りつつも,マーガレットの領地ファルコンバーグをゲリラ的に襲撃していたのです。
義弟ジェイミーから多少の剣術を指南されていたとはいえ,所詮現代人のアレックスですが,ファルコンバーグの人々から慕われ,ついにはマーガレットの関心も買うことになり,互いに深く愛する気持ちが芽生えていきます。しかし,表面的にはふたりはいつも言い合いを続け,互いに自分の言い分を譲りません。しかし後半には二人の言い合いは互いを思いやることから出てくるものだという風に微妙に変化していきます。そのあたりの変化が読者を物語に大きく引き付ける一因になっているように思います。
 再びフェアリー・リングを通って1996年のジェイミーとエリザベスのスコットランドの城に世話になる二人ですが,マーガレットは,アレックスが現代に残りたがっていると思い,単身12世紀に戻ります。この時間と空間の門は,ただ願うだけでは移動ができず,なんらかの歴史的必然が働かないと,そう簡単には開かないようです。現代と中世の移動の必然性を筆者は歴史的事実とからみあわせ実にうまく説明しています。その辺のほころびがない点からしても,ロマンス小説とSF小説の見事な融合と言える作品に仕上がっています。リン・カーランドの多くの作品を訳されている旦 紀子さんの訳が冴えわたる一作です。特に,前作にも登場する吟遊詩人。本作のホルドリックの傑作な人物造型は,ちょっと例を見ない,現代のお笑い芸人にも通じる素晴らしさです。
次作が訳されていませんが,是非続きを読みたいものです。


夢の騎士にふたたび [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO610
夢の騎士にふたたび A Dance Through Time 1996」
リン・カーランド Lynn Kurland  lynnkurland.com 旦 紀子





 約600ページの大部です。4日ほどで読了しましたので1日当たり150ページのスピードで読んだことになります。大部ではありますが,好きなタイムトラベルもの,さらにはスコットランドとアメリカ・ニューヨーク,14世紀と20世紀末という時と場の対比が面白く,すんなりと読めたと思います。まさにゴールデンウィークにふさわしいエンタテインメントでした。
 歴史好きの小説家エリザベスは,ある夜,「ここへおいで」という男の声を聞きます。夢の中で現れる巨大で黒髪と緑の瞳をもつ男,それが中世1311年からエリザベスを呼ぶジェイミーことジェイムズ・マクラウドの声でした。心に森のイメージを想い浮かべているうちに,エリザベスは中世スコットランドのジェイミーの城の近くの森にすでに到達しているのでした。この森が人の願いを聞き時間旅行をさせてくれる場所だったのです。
 あとは,頑固でプライドが高く,初めはエリザベスを魔女と思いこみ地下牢に閉じ込めてしまうジェイミーが,次第にエリザベスに惹かれていく様子や,中世の生活に苦労しながらもジェイミーを心底信じ切っていくエリザベスの心の動きが丹念に描かれていきます。二人の互いをののしりながらも次第に惹かれあっていく部分に,さわやかさと読者を思わずニンマリさせてしまう作者の筆力が光ります。
 後半は,現代にやってきたジェイミーが,文明にどのように慣れていくか,またエリザベスの家族たちがジェイミーの,マクラウド家の頑固さとどのように折り合いをつけていくかが描かれます。そして最大の敵役,ノランが登場し,後は終末まで一気に冒険譚が始まります。
 機械文明の便利さに慣れ切った私たちが,機械を持たざる中世にタイムトラベルしたら・・・。それに近い生活を,大震災で数週間味わった直後だけに,率直に感情移入できる作品でした。


不埒な公爵のキスの作法 [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO598
不埒な公爵のキスの作法 The Wicked Ways of a Duke 2008」
ローラ・リー・ガーク  Laura Lee Guhrke  lauraleegauhrke.com 森なおみ





 ローラ・リー・ガークのガール・バチェラー(女相続人)シリーズの第2弾です。
 ロンドンのお針子プルーデンス・ボズワースは,郷士の叔父たちの家族の元を離れ,11年間お針子の仕事を続けてきました。当時のお針子の給金はとても少なく,月に一度叔父から送金されてくる仕送りを足しても爪をともすような生活でしたが,モリス夫人の下宿で仲の良い友人たちと気安く心地よい生活を送っています。仕立屋マダム・マルソーのお店から派遣されて,パーティ会場で,わがままな貴族令嬢のドレスの裾のほつれを直しているとき,マナーを無視して入室してきた男性が,令嬢の蹴飛ばした針箱の中身を拾ってくれながら励ます言葉をささやいてくれ,仕事が終わって帰ろうとしたときに外の路地で貴族の男性から言い寄られていた女性を助けに来たのが,彼でした。すっかり彼の魅力に虜になったプルーでンスですが,相手は貴族,しかも公爵。お針子の自分とは身分違いであることは言うまでもありません。
 しかし,数日後状況が変わります。父親に捨てられ,母の没後叔父のもとに引き取られたものの,叔父夫婦や叔父の娘たちに大切にされなかったため,自活しようとロンドンで暮らしていたプルーでンスですが,下宿を訪れた紳士たちから聞かされたのは,自分を捨ててアメリカに行った父親が実はアメリカのデパート王になり,遺産を全部彼女に残したということでした。しかもその額は年に100万ポンドだというではありませんか。ただし,遺産を手にする条件は1年以内に管財人たちの認める人と結婚すること,ということでした。
 ここまで来ると,もう話の筋は見えてきますね。プルーでンスが虜にされた公爵,リース・ド・ウィンターとプルーデンスは果たして恋に落ち,結婚にこぎつけるかということですが・・・
 以下,ネタばれがあります。

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天翔る白鳥のように [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO585
天翔ける白鳥のように Swan's Grace 2000」
リンダ・フランシス・リー 颯田あきら





 ホーソーン三兄弟の第2作ですが,第1作「家路を探す鳩のように」は未読です。本作では,前作のヒーロー・ヒロインも登場しないようですので,独立した作品として読んでもあまり問題ないようです。
 実は,帯の「ノーラ・ロバーツ絶賛」と「チェロ演奏家」に惹かれて本作を手にしました。おそらく,リンダ・フランシス・リーの本作を手にする人のほとんどがそうでしょう。ピアニスト,ヴァイオリニスト,チェリストなどの演奏家や作曲家などがヒーロー,ヒロインとなる作品は,結構多く見受けられますが,いずれも,心に深い傷を負った設定になっています。それが,ヒーロー・ヒロインの条件でもあると言えばそれまでですが,演奏や音楽の内容にそのことが深く関与しているのは当然のことだと思われます。そんな楽曲や演奏が実際にどんな響きをもたらすのか,実際に聴いてみたいという気がとてもします。
 さて,本作のヒーロー,グレイソン・ホーソーンは三兄弟の長兄。経済的に困窮するホーソーン家を立て直すために,全精力を使って弁護士として活躍する青年です。職業柄,自分をさらけ出すことなく,すべてをきちっとしてなければならないと思い込んでいます。ヒロインのソフィ・ウェントワースは,少女時代から天才チェリストとして名声があり,地元ボストンの演奏会場でデビュー演奏できるとプロデューサーに言われていたのに,演奏させられず,失意のあまり,ヨーロッパにわたり,奇抜な服装や演奏姿勢で人気を博したものの,三人の取り巻きも含めた生活費を稼ぐために毎日思い悩んでいるとき,父親からボストンに帰郷するように手紙をもらい,数年ぶりに帰郷したところです。ソフィもまた,実母を失い継母からも父親からも見捨てられたと思い込んでおり,愛を失った気持ちをもっています。
 帰郷したソフィを待っていたのは,実母から遺産として受け取った「スワン・グレイス」の家が自分の知らないうちにすでにグレイソンによって買い取られ,しかも自分とグレイソンの婚約までも決まっていたことでした。父親が金で本来娘のものである財産と,その結婚相手すら買うために家を売り払っていたことを知り,ソフィに残されたのは故郷でチェリストとして認められるかということだけ。バッハの無伴奏パルティータを弾くべきか,ヨーロッパで身に付けた奇抜な演奏法を見せるべきかさんざん悩みます。
 一方グレイソンは,ホーソーン家とウェントワース家というボストンでも由緒ある家同士の婚姻が必要だということを頭では理解しているものの,常に自分に逆らい,奇抜な行動ばかりするソフィがはたして自分の妻としてふさわしいかということに悩み,さらに父親から受ける冷たい視線の原因が自分の出生の秘密と関係あることを知ったとき,自分の中に全く思いがけない感情が生まれ,ソフィにも同じ悩みがあることに気付きます。この出生の秘密が「ホーソーン」という家名の意味なのか(いわゆる「緋文字」のこと)と,ここで,はたと思い当たりました。
 20数年を経たそれぞれの家の秘密をはらんで,ソフィとグレイソンのロマンスの行方がとても生き生きと描かれた傑作,まさに「NR」が認めるのも,うなづけます。


ひめやかな純真 [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO556
ひめやかな純真 To Tempt a Scotsman 2007」
ヴィクトリア・ダール Victoria Dahl victoriadahl.com 月影さやか





ヴィクトリア・ダールのデビュー作にして初邦訳です。
12歳からロマンス小説に目覚め,20歳にしてロマンス小説を書き始めたと言いますから,早熟なという言葉が当てはまるのではないでしょうか。
そして,本作のヒロインアレックス(アレクサンドラ・ハンティントン)の言葉の随所に現れる,自立し,男性と伍して生きようとする女性の姿に,すがすがしさを感じる傑作です。
本作183ページから184ページで吐き出されるヒロインの言葉,「アダムとイヴの物語を聞いたことがあるひとなら,良く知っているはずだ。罪に問われるのは常に女であることを。」は,男性中心社会,そして神の教えですら男性中心であることを見事に言い表しています。
ヒーローのコリン・ブラックバーンは,これまた,男性の見本と言われそうな人物。たくましく,筋肉質の体型。真面目で,すべてを背負ってしまおうとする,さらには女性は守られるべき存在であり,愛に疎い。これらの容姿と性質を根っから背負った人物として描かれています。
さて,義理の弟を誘惑して恋敵から殺される理由を作ったふしだらな女と思っていたアレックスに一目会った瞬間恋に落ちたコリン。本当は淡い思いだけで誘惑したように貴族社会で喧伝され,すっかり社交界へ出ることをあきらめてしまった上流貴族の妹アレックス。こんな,背景を互いに抱えた二人を,どのようにしてロマンスに導き,結び付けていくかが,著者の腕の見せ所です。途中ちょっとくどいかな,というところはありますが,若い作家が渾身の力を込めて描き上げた力作であることは十分に感じ取れる,お薦めのセクシーなヒストリカル・ロマンスです。


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