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ボスを落札 [レイチェル・ベイリー]

SHALOCKMEMO1365
ボスを落札 Bidding on Her Boss
( Hawke Brothers 1 ) 2015」
レイチェル・ベイリー 佐倉小春





 原題は「ボスに入札」
 ヒロイン:フェイス・クロフォード(?歳)/フラワーデザイナー/つややかな赤褐色の髪,ホルターネックのトップス,ダークブラウンの目,鼻にある薄いそばかす,形の良い唇/
 ヒーロー:ディラン・ホーク(?歳)/フラワーチェーンCEO/力強い顔,マホガニー色の黒髪,身長180センチ以上,グリーンの瞳/
 ホーク3兄弟のシリーズの第2弾です。長男アダム,次男リアム,末弟ディランのうち,次男リアムは前作「ナニーが愛した大富豪(SHALOCKMEMO857)」(Billionaires and Babiesのシリーズに分類しています)でリアムとラースランド王女イエンシン(イエナ)は結ばれました。末弟ディランとイエナのスタッフのダニエルが前作では関係が発展しそうに見えたのですが,意外や意外,本作のヒーローはディランであることはそのままですが,ヒロインは,ディランの会社の従業員ということになります。ラースランドが舞台のシリーズはいずれ別に描かれるのかも知れません。さて,本作のヒロインフェイス・クロフォードのこれまでの人生は,常に家族に見捨てられることを繰り返す人生でした。そのため愛を信じられなくなり,というより愛は長続きしないことを身をもって体験したため,ディランとの愛もいずれ冷めれば自分は再び孤独になってしまうというトラウマから,ディランを捨ててキャリアアップのためにニューヨークに渡ってしまうというストーリー展開です。ディランの長兄アダムは初め弟とフェイスの関係を心配しそれぞれに幾度となく忠告するのですが,二人の関係は次第に深まっていくことになります。また次兄リアムとイエナは初めから二人の関係の深まりを歓迎し,特にイエナはフェイスの友人にもなっていくのです。引き離しと後押し,兄弟からのこの相反する反応にディランははたしてどう対応していくのだろうか,それも本作を読み進める上で楽しみな点です。フェイスのこれまでの人生を端的に表した個所を見てみましょう。終盤でフェイスがニューヨークに逃れようとする場面です。「私のこれまでの経験で,愛は変わりやすいものだということを学んだの。私は生まれてからずっと,周りの人の興味が新しいものへ移っていくのを見てきたのよ。叔母は一年間は私を愛していたけれど,自分の子供が出来たら私を追い払ったわ。母は私を愛していたけれど,何か目新しくて楽しそうなことがあると,すぐに私を置いていってしまった。祖父と祖母も私を愛していたけれど,誰か他の人が私を預かってくれることになると,いつもホッとしていたわ。父は私を愛していたけれど,私と一緒に暮らせるような仕事を探してはくれなかった。ディラン,あなたも今は私を愛しているのかも知れないけれど・・・」という具合です。そのため愛よりも仕事に継続的意味を見出すためキャリアアップを願うフェイス。互いに惹かれ合いながら,初めは「社内恋愛禁止」のルールにより互いに自制し合い,そしてルールを破ってでも関係を深めざるを得なくなるほど惹かれ合い,そして関係を長続きできないものとして別れていく二人の切なさが本作の中心のストーリー展開と言えるでしょう。そして兄弟たちのアドヴァイスによりディランが決意したのは・・・。
 前作のイエナに続き,フェイス・クロフォードというヒロインが魅力的で存在感を示しています。レイチェル・ベイリーの作品には「億万長者の願い事」のデラなどとても魅力的なワーキングウーマンが登場し,ロマンティックさだけでなく骨太の女性たちの生き方が示されていて読みやすく心に残る作品が多いですね。


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億万長者と無垢な家政婦 [ジェニー・ルーカス]

SHALOCKMEMO1364
億万長者と無垢な家政婦 Sensible Housekeeper, Scandalously Pregnant
( Unexpected Babies 6 ) 2010」
ジェニー・ルーカス 杉本ユミ





 原題は「思慮深い家政婦はスキャンダラスな妊婦」
 ヒロイン:ルイーザ・グレイ(28歳)/家政婦/飾り気がなく,きちんとしていて地味,家事に有能,自分の感情は決して話さない,美しさを眼鏡と野暮ったい服の奥に隠す,黒く縁取られた大きな瞳,ほっそりした体,茶色い髪(濃い蜂蜜色の髪)/
 ヒーロー:ラファエル・クルス(38歳)/投資会社オーナー,アルゼンチン人/長身,広い肩,隆々とした筋肉,スタイリッシュな外見,黒髪,鋭い頬骨,高い鼻,日に焼けたオリーブ色の肌,明るい灰色の瞳/
 2010-2011年の作品の更新で,家政婦ものだということと,表紙イメージの美しさから興味を持ち手にしてみました。大正解でした。家政婦もの,清掃婦ものはシンデレラストーリーとしては設定が容易ですが,ヒーロー,ヒロインの人物造型が作品の質の善し悪しを決めると言っても過言ではないと思います。そういう点では,本作はなんと言ってもヒロイン,ルイーザ・グレイが全体を引っ張って,充実感,読後感を素晴らしいものにしてくれます。シンデレラストーリーというとヒロインの成長譚となりがちですが,本作は完成された大人のヒロインがヒーローを如何に変えていくかという逆成長譚というべきものになっているところに捻りの素晴らしさを感じます。常日頃は家政婦という日常でも華やかなハウスパーティでも,できるだけ目立たないでいようとする存在ですが,一端着飾ってみるとその美貌が光ってヒーローをメロメロにさせていくというパターンは踏襲しています。さらに抜群の家事能力,お店が開けるほどの料理の能力,さらには執事学校まで出ている客あしらいを含めた家事全般に精通したヒロイン,ルイーザが自分にとっては如何に重要な存在かということに気付かない富豪のラファエルを愛してしまい,ついにヒーローの誘惑に負け一夜を過ごしたのち,如何にヒーローの愛を獲得するために自分の能力と知性を発揮していくかという愛の物語です。脇役として,姉の婚約者を奪い,さらに傷ついて帰ってきた姉に対して余計なことをしてヒーローに居場所を知らせるという憎めない存在としてルイーザの妹ケイティ,そしてラファエルのボディガードでありながらルイーザを尊敬するエヴァン・ジョーンズ,ヒーローからその存在を認められていない母親のアグスティナなど,さらにはラファエルのライバルで女たらしのノヴロス,ラファエルのデート相手で頭空っぽのドミニクなど数を絞ったユニークな面々が登場し,二人の関係に微妙な影響を及ぼしていきます。
 日本語では家政婦としていますが,ハウスキーパーとはまさに家を舞台にした芸術家なのだということを納得させられる職業なのだなということが本作を読めば分かります。ジェニー・ルーカス作品はそれほど読んでいませんが,イチオシの作品です。


タグ:ロマンス
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思い出の中の結婚 [キャサリン・スペンサー]

SHALOCKMEMO1363
思い出の中の結婚 A Costanzo Baby Secret
( Claiming His Love-Child 1 ) 2009」
キャサリン・スペンサー 鈴木けい





 原題は「コスタンツォの赤ちゃんの秘密」
 ヒロイン:メイブ・コスタンツォ(28歳)/記憶を失った妻/脚が長く歯並びのいい澄んだブルーの瞳,身長175センチで均整の取れた体,ブロンドの髪,カナダのバンクーバー出身/
 ヒーロー:ダリオ・ガブリエル・コスタンツォ(?歳)/大企業「コスタンツォ・インダストリ・デル・リコルソ・インターナショナリ(リゾート開発会社)」上級副社長/身長188センチ,がっしりした体,ブロンズ色に焼けた肌,豊かな黒い髪/
 好きな記憶喪失ものということで手にしました。交通事故で逆行性記憶喪失となり事故から1カ月後の9月4日に意識を回復したメイブ。 脳科学辞典によると「逆行性健忘 (retrograde amnesia) とは、発症以前の、過去の出来事に関する記憶を思い出すことの障害である。ここでいう出来事とは本人の生活史上の経験であっても、本人が生活してきた時代における社会的な事実であってもよい。すなわち、発症以前に本人が経験し、覚えているはずの出来事を思い出すことができない状態である。しかしながら、どの程度の期間の逆行性健忘があるかの評価は必ずしも容易ではない。というのも、その個人の過去の記憶を正確に証明することは困難であり、世俗的な事象を対象に過去の記憶を確認しようとしても、個人の関心の度合いが異なるためである。」とあります。いまはネットでいろいろと調べることができて便利になりましたね。でも記事の信頼性は保証の限りではありませんから,まぁそんなものかという程度の認識で本作を読む分には十分ではないでしょうか。ヒロインのメイブを診察していた医師は夫のダリオに対して「忘れていることを無理に思い出させようとしてはいけない」「子供がいる事実も明らかにするべきではない」「夫とは言え今は他人同然の存在なので夫婦生活も控えて欲しい」などと助言するのです。この対応が本人にとって良い方向に向かうのかどうかもわかりませんが,医師は平均的,一般的,つまり過去の事例から類推して診断や助言をするだけですから個別のものに対してどこまで正しいかということはわからないものだと思います。ですから医師の診断や助言を鵜呑みにして対応してしまうと間違うことだってあるのだろうと言えます。まだまだ脳科学では解き明かされていないことの方が多いのですから。作者はそのことをうまく利用してストーリーを作り上げるわけですから,少なくとも上記のような一般的な記憶喪失(障害というべきだと思いますが)の定義については当然調べていて,その曖昧さや個別的な部分に焦点をあてることでフィクションを作り上げていくのだろうと思います。読者としてはそのことにうまく騙されたふりをして読み進めないと,楽しんで読むことができなくなるわけですので,SFやファンタジーを読むときと同様にまぁこんなものだろうと思ったほうがいいわけです。
 さて,ヒロイン,メイブが事故を起こしたきっかけは,イタリアの島パンテレリアから,子供を連れて本土に渡ろうと連絡船に乗るために車で出かけたところ,運転していた男性フランス系カナダ人イブ・ゴーシエが急に意識混濁し海に落ちてしまったという大事故でした。しかしメイブはこの間の事情はすっかり記憶を失っているのです。病院に現れた夫のダリオも,退院したのちに帰った邸宅にも記憶を呼び覚ますものはありません。いつ記憶を取り戻すのかが作品の中心の謎ですが,本作では記憶障害の原因は愛息セバスティアーノを事故で失ってしまったとメイブが思い込んでいたことによるものだという事実が後半まで明かされません。(ちょっとネタバレかも知れません)。当時夫婦の間に吹きすさんでいた離婚の危機が,これに拍車をかけていくのです。そして記憶にない男性が夫であり,その男性に寄りかかるととても安心できるという本能的なメイブの心が,夫婦間の本来の愛情を再び築き上げていこうという意欲に繋がることでロマンスとしての筋が一本通る設定になっています。イタリアの名家であるコスタンツォ家に入った嫁メイブに対して冷たく接して来るダリオの母セレステ。唯一味方になってくれるのはダリオの妹夫妻クリスティーナとロレンツォ。これでもかと言うほど優しくしてくれる夫が,実は内面では事故当時メイブの乗った車を運転していた男性とメイブとの不倫の相手に違いないと思い込み,今一つ妻を信用し切れていないというアイロニー。そんな二人の心の置き所と周囲の人々との関係を中心にストーリーが展開していきます。なかなかよくできた設定だと思います。「地中海の黒真珠」と呼ばれ,水平線上にアフリカが見えるほど南に位置する島パンテレリア(シチリア島の南西100キロ,チュニジアから80キロ)と,ミラノのダリオのペントハウス,そして二人が出会ったポルトフィーノが舞台の中心になります。また二人が静養に出かけたチュニスの町中の様子など,細部もしっかりと描かれ,丁寧な作品だと思います。


タグ:ロマンス
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アラビアの花嫁 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1362
アラビアの花嫁 An Arabian Marriage
(華麗なる転身 1) 2002」
リン・グレアム 漆原 麗




HQB-758
16.10/¥670/208pp

R-1857
03.04/¥672/156p


 原題は「あるアラビアの結婚」
 ヒロイン:フレデリカ(フレディ)・サットン(24歳)/ナニー/豊かな金髪,青緑色の瞳,身長163センチのほっそりした体でクリーム色の魅惑的な胸と砂時計のような体型/
 ヒーロー:ジャスパー・アル・フセイン(30歳)/クアマール国皇太子/暗い金色の瞳,豊かで青みがかった黒い髪,見事な体格,ブロンズ色の肌,傲慢そうな鼻,罪作りなほど美しい口/
 アラブのキリスト教国クアマール王国。皇太子のアディルはどうしようもない放蕩者で,何度も結婚離婚を繰り返し更には婚外子まで・・・。一方その弟ジャスパーは自分には皇位継承は回ってこないものと思っていましたが真面目で堅物。ところがアディルが放蕩の末に急逝してしまい,ジャスパーは思いがけず皇位継承することになってしまいます。アディルの子供たちはみな女子でしたが,婚外子で男子がいることが判明します。ベネディクト,愛称ベンを産んだのは,アディルの不倫の相手エリカ・サットンという若い女性でした。国王が老年に差し掛かりいよいよジャスパーが皇位継承すれば皇太子としてそのアディルの婚外子ベンを探し出さなければなりません。国王ザフィル・アル・フセインはジャスパーにその役割を割り当てます。イギリスにいると思われるエリカとベンの行方が分かり,ジャスパーが自分で向かいます。さて,一方エリカは自分でベンを産んだものの,従姉妹のフレデリカ(フレディ)・サットンに子供を預けっぱなしで,スキー場の事故で命を落としてしまいます。ややこしいことにエリカ・サットンのセカンドネームはフレデリカ。姉妹の大伯母の名前を摂っていたのです。つまりジャスパーの得ていた情報には本来二人のフレデリカ・サットンがいたのが分からなかったため,ジャスパーはフレディをエリカと勘違いしてしまったという事情が絡んでくるのでした。放蕩者の兄にふさわしい身持ちの悪い女性とフレディを思い込んでいたジャスパーは,なにかと冷たい対応をとるのですが,どうも実際に会ってみるとフレディがちょっとしたことで顔を赤らめたりする仕草に純真さを感じ,なぜか惹かれるものを感じてしまいます。フレディもまた会ったとたん,ジャスパーのあまりにも男らしく頼りがいのある姿に強く自分が惹かれ,そして愛する甥のベンを取られてしまうのではという恐怖からなにかとジャスパーに反抗的な態度を取ってしまうのです。今後のことを話し合おうとしていた日の朝にベテランのナニーがフレディの元を訪れ一日慣れるためにベンを連れ出すことに同意しますが,夜にジャスパーがやってくるとすでにベンはクアマール国に向かう飛行機に乗っているというではありませんか。フレディ(エリカ)を説得してからベンを連れて行こうとしていたジャスパーですが,国王の命令で軍の人たちによってベンは連れ去られ,ジャスパーには軍を動かす権限がないためどうしようもなかったと申し訳ない様子で話すのでした。フレディはなんとしても不安でいるだろうベンに会わなければという思いで,突拍子もない提案を思いつくのです。自分が一人でクアマールにいっても宮殿に入れる保証はありません。なんとか宮殿に入り込んでベンに会うには,そうだ,独身だというジャスパーと結婚すれば良いのではないか。その提案を聞いたジャスパーは自分の権限の及ばないところで父国王が勝手にベンを連れて行ったことと,必死にベンのことを思いあり得ない提案をしてきたフレディがかわいそうになり,この申し出を受け入れるのでした。翌日機上の人となったジャスパーとフレディ。機内で眠ってしまったフレディに触れずにいられなくなるほど,魅力的な寝顔でした。そんな自分の衝動に戸惑うジャスパー。かつて手ひどく女性に裏切られた経験を持つジャスパー,フレディもまたかつて婚約を考えていた男性から手ひどく裏切られた経験を持ち,以来男性と深い関係を持つ機会がないまま過ごしてきていました。フレディはいつもエリカの美貌と自分が比較され,ちょっとふっくらして平凡な顔立ちだと父からも言われ続けてきたため,女性としての自信をすっかり持てずにいたのですが,君は綺麗だとジャスパーに言われ,すっかり当惑してしまっているのでした。本当にジャスパーはそう思っているのだろうか?ところが,宮殿についてみるとジャスパーの寝室のベッドに全裸の超美人の女性が「おかえりなさい」とジャスパーを待っているではありませんか。その女性サビラは,かつてアディルの妻だった女性。しかも若かったジャスパーはサビラに惹かれる気持ちをもっていたものの,サビラはさっさとアディルと結婚してしまい,それも愛によるものではなくサビラの皇太子妃への野心のためだったことを知り,女性不信が強まったという過去があったのです。すぐにサビラを追い出したジャスパーにフレディは今のは誰だったのかと尋ねますが,ジャスパーは言葉を濁します。その後,やっとベンと再会し,安心したフレディ。しかし今度はフレディが自分がエリカでないことをいつ打ち明けたら良いかということで悩み始めます。きっとこのことを知ったら,ジャスパーは腹を立てて自分を追い出してしまうだろうと考えるとなかなか素直に言い出せません。たまたま1週間ジャスパーはアメリカに出張に出かけてしまい,フレディはゆっくり考える時間ができました。ジャスパーは花を贈ってきたり帰国の時には大量のお土産を買ってくるなど,契約的な結婚であるはずなのにどういう訳だろうかと不審に思うフレディ。やがて二人の関係も互いに惹かれ合う気持ちを押し隠すことなく深まっていきますが,互いに本当の気持ちを打ち明けることは出来ずにいました。やっと父国王との出会いがあったのは,偶然でした。なかなか呼ばれないと考えていたある日フレディが庭に出てみると一人の老人が息を切らして苦しそうにしています。スタッフに水を持ってくるように指示して老人をベンチに座らせ,医師を呼ぶように言いつけたところにジャスパーが帰ってきててきぱきと指示を出したのでした。その老人こそ国王本人だったのです。この時のフレディの対応をいたく気に入った国王はさっそく私室にフレディとジャスパーを呼び,そしてベンとの対面を果たすのでした。思いもかけずに自分の望んでいたように宮殿生活にも慣れジャスパーも何かと自分に優しく,しかも夜は自分を求めてくれ,本物の夫婦に陽に過ごすようになったフレディは幸せの絶頂にいました。ところが,やはりフレディがエリカではないと告白したとき,予想どおりにジャスパーは怒りを表し,すぐに出ていけと言われます。翌日またジャスパーの出張中にいなくなれと言われてしまうのですが・・・。そうは言っても,これまでフレディがベンを大切にしてきたことと,自分が予想以上にフレディに惹かれていたことに気付いたジャスパーが早めに宮殿に戻ってみると,フレディは外出中。探しに出てみると宮殿敷地にある自分の別邸でなんとサビラがフレディに嘘八百を並べ立ててイギリスに帰るように説得しているところに出くわすのでした。そのころ自分の体調の変化に気付き始めていたフレディは自信をもってジャスパーを愛していることを表明しているのです。ジャスパーはサビラの嘘を暴き,即刻国から出て行けと,そうしなければこの件を父に報告するぞと脅します。このことがきっかけでフレディとジャスパーのわだかまりは解けるのでした。
 スーパーモデル並みの従姉妹に体型の上での劣等感を持っていたフレディのシンデレラストーリーです。アラブのキリスト教国?ちょっと違和感がありましたが,あまりアラブ的なところもなく,まあ無難にストーリーが展開していきます。強いて言えば宮殿のスタッフがやたらと王族にへりくだるところがちょっと出てくるぐらいです。自己主張のしっかりできるフレディの愛情深く真面目で愛らしい点が光る作品です。エピローグはかなり幸せな展開になっていて,爽快な読後感を味わえます。


タグ:ロマンス
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見せかけの結婚 [ミシェル・リード]

SHALOCKMEMO1361
見せかけの結婚 The Tycoon's Bride
( Greek Tycoons 6 ) 2000」
ミシェル・リード 槇 由子




HQB-345
11.01/¥650/198p

R-1661
01.03/¥672/156p


 原題は「富豪の花嫁」
 ヒロイン:クレア・ステンソン(21歳)/異父妹の世話をしている娘/イギリス人,身長173センチ,ブロンドと赤毛が溶け合った髪色,青い瞳/
 ヒーロー:アンドレアス・マルコポーロ(36歳)/銀行頭取,ギリシア人/長身,ブロンズ色の肌,黒い瞳,くっきりした唇/
 生後2カ月の女の赤ん坊を抱えた21歳の大学中退した世間知らずな娘クレア。クレアを次々に襲った不幸の結果が現在の姿でした。事業に失敗した父が自殺し,母と小さなアパートに移ったところで母が出会った外国の男性との間に愛らしい女の子メラニーが産まれたものの,母は産後の肥立ちが悪くなくなってしまう。経済的に苦しくなっていたクレアは大学を中退してアルバイトをしていたもののメラニーの世話で仕事も辞めなければならなくなります。唯一の身内である伯母はメラニーを養子に出して大学に復帰するなら経済的に援助しようというのですが,幼い妹を他人の家にやることなど考えもできません。断固伯母の提案を断ったクレアは伯母が老いていったお金の間にクレジットカードが挟まっているのを見つけて慌てて伯母の後を追って道路に出たとたんに車と衝突して動けなくなってしまいます。気付いたときに目にとまったのは浅黒い肌のハンサムな男性。それは伯母の雇い主であるアンドレアス・マルコポーロでした。アンドレアスはクレアを救急車に乗せ病院で意識が回復するまで付き添います。さらに退院が許可されると自分のペントハウスへ連れて行き,怪我の全快までメラニー共々療養するように言うのでした。メラニーも家政婦のレフカやその娘アルテア,運転手のニコスなどに可愛がられ,すっかり落ち着いているようです。メラニーを育てるのは自分しかいないと思っていたクレアは,面倒を見てもらうのも居心地が良いのですが,アンドレアスが近くにいるとどうしても男性を意識してしまい,若さゆえに反抗的になってしまうのでした。6年前に妻を亡くし,依頼結婚は2度としたくないと考えていたアンドレアスにも弱点がありました。92歳になる祖母のエレニがどうしても日添えをもらうように圧力をかけてきていたのです。合わせて親族一族も役員会で圧力をかけてきます。最近祖母が弱ってきていることからアンドレアスは窮余の一策としてクレアに便宜的な結婚を提案するのでした。しかもメラニーはクレアと自分との間に生まれたことにして・・・。これからどうやって生活していこうかと思っていたクレアにとって,今回の怪我でメラニーを一人では抱くこともできなくなったことや祖母が亡くなったら結婚を解消して好きなように生きて行って良い,メラニーも一緒に暮らして良いという破格の条件に,自分はお金で自分を売ってしまうのだという悲しい気持ちを抱きながらもメラニーに安定した生活を送らせるためならば自分の気持ちを抑えてアンドレアスの提案に乗るしかないと承諾の返事をします。そして3人はギリシアの祖母の家に行くのですが。しかし居心地の良さそうな豪勢な家に着いた3人を出迎えたのは,アンドレアスの義姉で1年前に夫を亡くしたデズモナでした。30代に見える落ち着いた美女ですが冷たい氷のような銀色の瞳で,クレアには最初から敵意をむき出しにします。実は親族の間では急逝したアンドレアスの兄ティモの妻デズモナとアンドレアスの結婚を画策していたのでした。女性を財産とみるギリシアの古い価値観。結婚をしたくないアンドレアスにとってこのデズモナとの結婚を断るためにも,親族の圧力から逃れるためにもクレアとの便宜的な結婚は実質的な結婚とは違うことでも,子供のいない自分にとってメラニーという後継者まで一緒にできるということで,何より都合のいい話しだったのです。しかしメラニーにも自分にも優しく接し,6年前に妻ソフィアを亡くしたことを聞き,さらに時折二人きりの時に優しく唇を近づけてくるアンドレアスに,次第にクレアの気持ちは愛に変わっていくのでした。やがて祖母の開いたパーティで二人が婚約したことを一族に披露されます。遅れてきたデズモナはクレアに近づいてくると出席者の中にアンドレアスの愛人がいると仄めかします。気にするまいと思いながらも疑心暗鬼になっていくクレア。デズモナの策略だと気付かないのもクレアの若さ故でしょうか。やややけになったクレアはパーティに来ていた若者達の誘いを受けて庭でシャンペンを片手に踊りの輪の中に入っていきます。気付いたときはアンドレアスが硬い表情でその集団をにらみつけていました。アンドレアスが指をパチンと鳴らすと若者達はさっと部屋に戻ってしまい,アンドレアスに手を引かれてクレアは寝室に連れて行かれ・・・。そこでクレアの気持ちとアンドレアスの気持ちは高まってしまい,遂にクレアは身を捧げてしまうのでした。充実感を得たクレアに対してアンドレアスは「あってはならないことだった」と苦悩の表情を浮かべ,その言葉に傷ついたクレアは「出ていって」と叫んで一人泣き崩れてしまうのでした。
 やがて結婚式の日を迎え,クレアは祖母が準備してくれた高価なウエディングドレスに身を包み教会での式に臨みます。そして式の後クレアとアンドレアスは祖母の元にメラニーを連れて行きます。客たちの間を回っている間に祖母が永遠に目を閉じたという知らせが入るのでした。その夜,クレアはアンドレアスに向かって,もうかりそめの関係は終えてもいいと確認するのですが「これ以上見せかけの結婚を続けることに意味があるかしら」「見せかけはいつになれば見せかけじゃなくなるんだろうな」とアンドレアスは意外な言葉を発します。「彼は私を求めている」。今夜は初めての夜よとアンドレアスに近づくクレアでした。メラニーの養子の手続きもロンドンで無事に済み,幸せな日々を送るクレアは妊娠の兆候を感じます。時に,伯母ローラと連絡が取れなくなっていることが気がかりになりアンドレアスに訪ねますが返事を渋るアンドレアスに違和感を覚えます。数日後街で偶然伯母を見かけたクレアは話しかけますが,そこで伯母から聞いた話に驚愕の事実。しかもアンドレアスの大いに関係する事実とは・・・。
 ラストのアンドレアスの言葉「僕の幸せのカップはあふれ出している」の一言がとても洒落ています。もうかなりミシェル・リード作品は読んでいたように思っていましたが,読了したものは予想外に少ないのですね。本作でまだ5作目でした。凝った設定と説明口調が物語の流れを止めてしまいがちな面があり,読了に至らなかった作品もあったのですが,本作のように一気読みができる作品もあり,作者のサスペンス風味のロマンス作品を今後も楽しみに読んでいきたいと思います。


タグ:ロマンス
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ガラスの家 [ミシェル・リード]

SHALOCKMEMO1360
ガラスの家 House of Glass 1993」
ミシェル・リード 松村和紀子




HQB-155
08.05/¥590/203p

R-1346
97.09/¥672/156p
HQSP-070
14.09/¥540/208p


 原題は邦題そのまま
 ヒロイン:リリー・ノーフォーク(旧姓:ブレナン)(24歳)/主婦/しとやかな美しさ,小柄で華奢な体,短く癖のない淡い色の金髪,ベビーブルーの瞳,無邪気で愛らしい口/
 ヒーロー:デイン・ノーフォーク(30歳)/実業家/すらりとした鼻,太く黒い眉,グレイの目,黒髪,浅黒い肌,きりりとした厳しい顔立ち,長身/
 生涯一度の愛,そしてその思い出に生きること。これが本作のテーマです。ちょっと重いテーマを見事に描き出した大御所ミシェル・リードの作品です。原作は1993年で,名のある家イギリスのノーフォーク家。父はとんでもないプレイボーイでスキャンダルにまみれていました。デインとダニエルの兄弟の祖父から兄弟に科せられていたのはスキャンダルを起こさないことでした。そのために本当の姿を隠していなければならない生活を表面的に送る,つまりくずれやすい「ガラスの家」状態だったのです。ダニエルとリリーの結婚もやはりスキャンダルを隠すために行われたのでした。ノーフォーク家代々の牧場に住んだダニエルとリリー。そこもまさに「ガラスの家」でした。当時はまだダニエルの性癖が社会的に認められることはなかったでしょう。義兄デインと出会ったときから彼に惹かれてしまったリリーですが,父の事業の経営不振と母の病気をなんとかするためにはダニエルとの間に便宜的な結婚をせざるを得なかったのです。そして,ダニエルの突然の交通事故死。デインはダニエルの愛人であるマークをリリーの愛人と誤解し,徹底的にひどいことをリリーに言います。しかしリリーはダニエルの性癖をデインに言っても信用されないだろうとデインの思いたいように思わせていくのです。例え自分が非難されようとも・・・。葬儀も終わり,このまま牧場「レフトン・グランジ」での暮らしに耐えられなくなったリリーは,オーストラリアで過ごしている両親の元で過ごすことにします。空港近くのホテルで一泊しているとき,デインがリリーの元を訪れます。自らデインへの思いを告白し,身を投げ出すリリー。これが初めての男女の関係だったことに驚いたデインに問い詰められ,リリーはダニエルとの結婚生活の本当の姿を話すのでした。案の定デインはリリーの話を信じようとしませんでしたが,やがて,半年間はリリーを両親の元で過ごさせようと期限を切ります。その後も同じ気持ちだったらという言外の気持ちを匂わせたままデインとリリーは別れを告げます。
 明日で約束の半年の期限が切れるという深夜,リリーは香港に住んでいるマークに電話して,半年前のことの真相をマークに相談します。マークはダニエルとの愛人関係を「生涯一度の愛,そしてその思い出に生きること」と一言で言い表します。さらにリリーへのアドバイスとして「行ってチャンスを掴むんだ。つかめるチャンスは全部つかむことさ,リリー。さもないと自分が一体何を取り逃がしたのかすら分からずに一生を終えることになる。」と話すのでした。しかしリリーはイギリスへの帰郷を躊躇しています。「あのガラスの家。忌まわしいガラスの家。もしデインが今も私を求めていたとしても,世間の目からすれば,それは許されないことなのだ」「半年では足りない。一年ならまだしも」と決断がつけられないまま物思いに沈んでしまいます。2週間後,リリーの父の元にデインから「帰ってこい」とファクスが届きます。しかし世間から後ろ指を指されるいき待っている暮らし,ガラスの家に戻ることを躊躇するリリーは「ガラスの家をどうするつもり?」と書いてファクスを返信するのでした。さらにそれに対する反応は?・・・。
 あまりにメロウな作品で,好き嫌いが分かれそうです。粗野で男らしいデイン。対照的に明るく笑いに包まれたダニエル。その間で揺れるリリーの立ち位置が微妙な人間関係を生み,ダニエルの秘密が明かされるまでは想像はしていてももう一捻りあるのではないかと期待させて後半まで読ませます。結末はありきたりですが,電話でのマークとリリーの会話が本作のテーマをしっかりと主張しているところはさすが大御所と感じさせる作品です。


タグ:ロマンス
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領主を愛した代償 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1359
領主を愛した代償 Leonetti's Housekeeper Bride 2016」
リン・グレアム 山本翔子





 原題は「レオネッティの家政婦の花嫁」
 ヒロイン:ポピー・アーノルド(23歳)/家政婦の娘,バーテンダーのアルバイト/燃えるような赤い髪,きらきら光る緑色の目,ふっくらした唇,身長170センチ,引き締まったふくらはぎ,なめらかな膝,長くほっそりした腿,ホイップクリームのような白い肌,細い肩に掛かる赤銅色のシルクのような巻き毛/
 ヒーロー:ガエタノ・レオネッティ(29歳)/投資銀行CEO/たくましい体,ウエーブのかかった黒い豊かな髪,黒い眉,濃い金色の目,身長190センチ
 家政婦ものですが,正式な家政婦ではなく,父の死後アルコール依存症になってしまった母に替わって日中は家政婦の仕事をこなし,夜はバーテンダーのアルバイトをするという頑張り屋の女性ポピーがヒロインです。バーテンダーとして務められるぐらいですのでそれなりの美貌を持ち,しかもそれを全く鼻にかけず,母の世話や失職中の弟ダミアンの面倒も見るというスーパーレディ。働くことをいとわず,しかも物語中盤で出てきますが怪我をして路上にうずくまっている犬の面倒も見ようとする心の根の優しい女性です。しかし単に優しいだけでなくしっかりと自分の考えを持ち,安易に人の言うことに妥協しない「芯の強さ」を持っています。ここでちょっと「芯の強い」人をネットで検索してみたら,その特徴として6つのポイントが挙げられていました。(1)自分の生き方にポリシーを持っている。(2)どこか余裕がある。(3)言葉に一貫性がある。(4)一匹狼なることを恐れない。(5)潔さがある。(6)愚痴や泣き言を言わない。というものでした。これはすべてポピーに当てはまるような気がします。アーノルド家の雇い主であるガエタノ・レオネッティは,投資銀行の経営者。しかしその実権は祖父のロドルフォが握っており,老齢(74歳)になってきたためガエタノにCEOを譲ろうとします。しかしその条件は・・・。ロドルフォは21歳で漁師の娘と結婚し,妻が亡くなるまで仲むつまじく生きてきました。二人の息子であるロッコは世に知られたプレイボーイで息子のガエタノが生まれてからも放蕩の限りを尽くし妻では亡い女性のベッドでなくなってしまいます。ガエタノの母もまたガエタノを引き取ろうとせず,彼は祖父母に育てられたのでした。自分に両親の血が流れていることで自分は人を愛せないのだと思い込んでいます。29歳になった現在,ガエタノが身を落ち着けて仕事だけでなく幸せになって欲しいというのがロドルフォの願いでした。これまでが得たのがつきあってきた女性はいわゆる表面だけ美人の中身のない女性ばかり。ロドルフォの条件は「生活の些細なことに喜びを見出す普通の娘」との結婚でした。「結婚して身を固めろ,家庭を大事にする女性に子を産ませて父親になれ,そうすれば世界はガエタノの思うがままになる」というのが祖父の言葉でした。ガエタノが領地の屋敷「ウッドフィールド・ホール」に突然戻ってきたのは先日行われたパーティでガエタノが帰った後客たちが少々羽目を外しすぎて,その記事が写真入りで新聞に載った事件が起こったからでした。「情報源は家政婦だったのか?」「記事の中に名前が出ている。あまり賢い女じゃないな。」という弁護士の言葉に愕然としたガエタノが屋敷に着いてみるとそこにいたのは家政婦の娘ポピーでした。ガエタノはポピーを責めまくります。そしてその説明を聞こうともしませんでした。アルコール依存症のポピーの母ジャスミンは酒を買うお金を得るためならば何でもするような状態だったのです。記事のネタを売ったのは母,そして母に頼まれて写真を撮ったのは弟でした。ガエタノはポピーに敷地内にある庭師の家(ポピーの父は庭師でした)から即刻出ていくように言ったのです。16歳の頃からポピーはガエタノと親しい間柄になることを夢見ていましたが,「僕は使用人には関心がないんだ」というガエタノの言葉に傷ついていました。当時のポピーはガエタノの言葉によると「ちびでデブの赤毛で全然僕の好みじゃない」というような体型でした。それを言われてからはポピーはガエタノを避けるようにできるだけ屋敷から離れていたのです。それが今ではすっきりと身長も伸び,さらに誰にも負けないぐらいの綺麗な長い脚をしてガエタノの前に現れたのです。「まん丸だった顔は贅肉が取れて魅惑的なハート型になり,頬骨と細い鼻が強調されている。ふっくらした唇はピンク色でどんな男も惹かれそうだ。」と感じたガエタノ。「出ていけ」と罵られたポピーですがそんなことではポピーは負けません。「私の目的がなんなのか話すチャンスさえくれなかったくせに。あなたってほんとうにへりくつをこねるのが好きね!」と言い返されたガエタノは,年下の女性からそんな非難を浴びせられたことに愕然とします。ガエタノは「それなりの退職金を・・・」と譲歩すると「あなたの汚れたお金を恵んでもらう気はないわ」と言下に否定され,さらに驚くのでした。自分のお金に興味を持たない女性は初めてでした。「母と弟は私の家族よ。父が亡くなって母と弟は悲しみや辛さをなかなか乗り越えられない。だからって二人への愛情が薄れると思う?それどころかもっと愛しくなる。」と反論するポピーに,ガエタノはある企みを考え出したのでした。「不釣り合いな婚約者をでっち上げることで今の苦境から逃れられるとしたら・・・」と,ポピーを婚約者に仕立て,祖父の元へ連れて行き,祖父の怒りがポピーに向けられたら結婚という呪縛から逃れられるのではないか,とガエタノは考えたのでした。翌朝,ガエタノは無理やりポピーをヘリコプターに乗せ,祖父の元へ連れて行きます。祖父の家の近所の別荘を持つガエタノ。朝食を食べながらガエタノはポピーに便宜的婚約についての提案をします。母の治療費と弟の就職先を餌にちらつかせながらポピーを説得するガエタノ。「祖父はいつも僕に庶民の娘を選べと言うが,僕が知っている中でその条件に当てはまるのは君だけなんだ。」と。「迷う余地はなかった。母を立ち直らせるためなら,どんなことでもやってみる価値はある。」とポピーは承諾します。
 ところが,ガエタノの思惑とは全く違う方向に物事は進んでいきます。祖父ロレンツォはすっかりポピーが気に入ってしまいます。ガエタノの予想に反して祖父とポピーはすっかり馴染んでしまったのです。しかも祖母のものだったという指輪すらポピーに与えてしまうのでした。「もう君はうちの嫁も同然だから」といいながら・・・。そして祖父の75歳の誕生日パーティに二人で出席することになります。ポピーは祖父の誕生日祝いにかつてガエタノの祖母セラフィーナから教えてもらったケーキを作り,ロレンツォにプレゼントするのでした。どんな高価なものでもない,何気ないポピーの気遣いにロレンツォは大喜びします。「ポピーは美しいだけでなく,優しく,思慮深い,しかも料理までできる。」と手放しでポピーを褒めるロレンツォ。ガエタノは「自分で自分のかけた罠にはまった」とガエタノは感絵混んでしまうのでした。ガエタノの家に住みながらも,ポピーは夜にウエイトレスとして働くと言ってガエタノを立腹させますが,ロレンツォは自立しようとするポピーに賛成します。このことにもガエタノは驚くのですが,婚約が破棄されてしまえば自分が自立することは大事なことだと言われ,偽の婚約だという建前からガエタノは承諾せざるを得なくなるのでした。ロレンツォの言いつけで1カ月半ほどで結婚式を挙げざるを得なくなります。ガエタノのフラットにかつての恋人セリーナが現れ,ポピーにあなたはいずれガエタノに捨てられると言い放っていきます。
 100人を越える招待客をまねいての結婚式がレオネッティ家の教会で開かれます。ところが初夜を終えたのちにポピーは突然倒れてしまいます。結婚式の準備とウエイトレスのアルバイト両方を兼ねていたポピーは疲労と栄養失調に襲われていたのでした。そして病院で薬を飲んだことにより,ピルが効かなくなってしまったのです。数週間してから妊娠に気付いたポピー。それを話したときのガエタノの冷たい言葉と驚きの表情。自分の愛がガエタノに通じなかったことにポピーは愕然とします。「僕は感情というものにうまく対処できない。怒りや情熱や野心は得意分野だが,深く柔らかな感情についてはだめなんだ。」とガエタノは結局自分がポピーにふさわしい夫にはなりきれないと認めるのですが・・・。
 いわゆるシンデレラ・ストーリーではありますが,なんといってもポピーという自立心に溢れ,明るくたくましく生きるヒロインの姿が読者を惹きつけその行動が感動を呼ぶイチオシの作品です。


タグ:ロマンス
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ボスとナニーの契約結婚 [テレサ・サウスウィック]

SHALOCKMEMO1358
ボスとナニーの契約結婚 MarryingTheVirginNanny
( Nanny Network 1 ) 2009」
テレサ・サウスウィック 中野 恵





 原題は「無垢なナニーの結婚」
 ヒロイン:マーガレット(マギー)・メアリー・シェパード(?歳)/「ナニーネットワーク」所属のナニー,養護施設「グッド・シェパード」出身者/ダークブルーの瞳,長いブラウンの髪,大きすぎる口,甘く愛らしい美しさ/
 ヒーロー:ジェイスン・ギャレット(?歳)/「ギャレット・インダストリーズ」経営者/黒い巻き毛,黒い瞳,すばらしい笑顔/
 実に5年ぶりとなる作者の訳本です。ハーレクイン・スペシャル・エディションでの発行の多い筆者ですから,受け側となる日本側のレーベルがなく,かつてのNシリーズがあれば毎年順調に訳本が出ていたのでしょうか。2014年以降「Bachelors of Blackwater Lake」シリーズを初め,精力的に作品を上梓している作者ですので,いずれまた翻訳もなされていくのでしょう。でもN版がなくなったので,シルエットを中心にしているD版が中心になるのでしょうね。
 さて,ナニーものの好きな斜麓駈としては,本作はとても楽しく読めました。舞台はラスベガス。ナニーであるヒロインの出自が児童養護施設で,両親が誰かは全く不明,でも大学卒でそれなりの格好をすれば地味だけれど美しいという設定です。上流階級では,自分の子供を預けるナニーに施設出身者を嫌がるという傾向があるように思うのですが,修道院でも修行したというヒロインの言葉で,決して身持ちが悪い人ではないという保証になったのでしょうね。望まない妊娠で出産した恋人との間の子供,初めは産まない選択をしようとした相手に十分なお金を払ってなんとか親権を確保し,相手には親権放棄をさせたヒーローのジェイスン。しかし生後1カ月ほどの息子に愛情を注いでくれるナニーはなかなかいませんでした。もうすでに数人がクビになってしまっています。そんなとき所属する派遣会社から直接面接にやって来たマギーが,富豪である自分よりも赤ちゃんを優先しようとしてはやばやと泣き叫ぶ赤ちゃんをすぐになだめてしまった様子を見て,ジェイスンはちょっと安心します。しかも自分は6週間しかここで働けないと,すでに期限を切ってしまうのです。雇う側が期限を切るならまだしも雇われる側から期限を切られてしまったことについて,ちょっとむっとしたジェイソン。しかし手際よく赤ん坊の世話をするマギーの様子を見てジェイスンは直感的にこの人は信頼できると思うのでした。これほどの大金持ちで家政婦や料理人を雇っているのにもかかわらず住み込みなのはナニーだけ,ってこれちょっと変ですよね。普通家政婦は少なくとも住み込みでしょ。かつて恋人に裏切られ,雇い主にも裏切られた経験をもつマギーは,乳幼児専門のナニーとして,情が移ることを嫌い6週間を期限とすることを自分に課していたのでした。物語中盤でこの当たりの事情が明らかにされますが,まぁ二人の出会いはまずまずだったようです。そしてその間にますますマギーへの信頼と魅力に取り憑かれたジェイスンはなんとかして6週間以降もマギーを引き留めようとします。最終的な方法は,契約結婚。結婚はするけれど,外部には知られないようにすること,そしてマギーの役割はあくまでもナニーとしての仕事,ただ長期にわたることから結婚という手法をとるということに過ぎない。見返りは? 毎週土日にボランティアしているかつて自分を育ててくれた養護施設のシスターたちが,建物の修理をしないと当局から廃止命令が下されるかも知れないと悩んでいることをなんとかしたいと思い,その資金をジェイソンが提供することを条件として結婚に承諾するのでした。勿論生前契約を交わし,すべては弁護士の作成した書面で明確に規定された結婚です。思いの外に立派に修理されようとしている施設の建物に安心するマギーですが,気になるのは,一緒に住んでいるジェイソンが自分に対する欲望を感じているようなのに自分をナニーとしてしか扱ってくれないこと。そしてなにより恋愛を恐れているように思えることでした。両親とも数回の結婚離婚を繰り返し身を落ち着けることがない様子の中で育ったジェイソンに取ってみれば,安定は愛の中ではなく書面の中にあると感じてきたことは悲しいながらも事実でした。一方両親の名前すら知らず,自分の名前も自分の世話をしてくれた二人のシスターの名前と施設名苗字にするというまさしく愛を知らずに育ったにもかかわらず,常に子供たちや他人の世話をしようと愛に溢れた性格に育った様子を見て,ジェイソンにはマギーは理解できない女性だったのでしょう。そして欲望を覚えつつも二人の結婚に愛を持ち込むことをひたすら耐える,というかどうやって愛すればいいかわからないというのが本音だったのだと言えます。そんなジェイソンの態度にマギーは悩み,シスターに相談したり,ナニー派遣会社経営者のジンジャーに打ち明けたりしてきたのですが,最後はなんといってもジェイソンとの二回の深い関係で妊娠が分かり,それを打ち明けたところが冷たい言葉を浴びせられたところですっかり落ち込み,施設に逃げ帰ってしまうのでした。息子のブレイディに対する愛情の深さを見ていて,きっと自分の妊娠を喜んでくれるだろうと期待していたマギーにとってジェイソンの冷たい態度は何にも勝り心を傷つける言葉だったのです。曰く「僕たちの関係は,合意と契約の上に成立しているはずだ。契約に基づいて君がすべきことは,ブレイディの面倒を見ることであって,あの子に弟妹を与えることじゃない」。ジェイスンは結婚が全くビジネスの一形態に過ぎないと言わんとしたのでした。
 ともに両親の行動に嫌気がさしていても,ジェイソンのように父親が生きており,例え関係が悪くても会うことができることは幸せなことなのですし,自分を捨てたと思っていた母親が実は自分を引き取るための弁護士費用を貯めるために,3つも仕事を掛け持ちしていたことを知ったあともなかなかマギーへの愛に気づけなかったのに対し,一度も親の顔も名前を知らずに,しかもぜんそくの持病を持っていたために養子にもいけなかったという社会的弱者であったマギーが愛情深く,思慮深い女性に育ったことを,ジェイソンがそれは愛の力の差だと気付くまでそれほど多くの時間はかかりませんでした。最後はとても温かい終わり方をする秀作です。


タグ:ディザイア
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キリアカスの花嫁 [ジェニファー・フェイ]

SHALOCKMEMO1357
キリアカスの花嫁 The Greek's Ready-Made Wife
( Bride for the Greek Tycoons 1 ) 2016」
ジェニファー・フェイ 松島なお子





 原題は「ギリシア人の便利な妻」
 ヒロイン:キーラ・パパス(?歳)/ホテルの客室清掃スタッフ/艶のある黒髪,長めの前髪,大きな茶色の瞳/
 ヒーロー:クリスト・キリアカス(?歳)/ホテルチェーンCEO/濃い色の波打つ髪,青い瞳,日焼けした彫りの深い顔,身長180センチ以上/
 ジェニファー・フェイの初邦訳作品です。ヒーローのクリストが傲慢さや思い込みの激しいマッチョな男性ではなく,ちょっとユニークというか,仕事一筋で男女関係に疎く,しかもちょっとユーモラスなヒーロー,たぶんやせ形だろうとか,オタクっぽいなというイメージを抱いてしまう愛すべき人物です。連作で,次作の「The Greek's Nine-Month Surprise」のヒーロー,ヒロインもすでに本作で登場し,結構活躍します。邦訳が楽しみです。
 自分のルーツを探すことも含めてアメリカのホテルからギリシアのリゾートホテル「ブルー・タイド・リゾート」に移ってきたキーラ。パパスという苗字が表すように祖父母の親戚がいるはずだ,でもどうやって捜せばいいかわからない。とりあえずホテルの清掃係として雇ってもらったので合間に調べることにしようと考えています。仕事を始めて二日目,スイートルームの掃除をしようとすると「ぼくと結婚してくれ」と突然言われたのです。他の人が言われたのだと思い周囲を見渡すと,ハンサムな男性が目にとまり,部屋には後は自分しかいません。その男性は昨日も自分に声を掛けてくれた男性でした。すると冗談ではなく,便宜的な婚約を頼み込んでくるではありませんか。理由を聞いてみると重要な取り引きの相手が独身の自分を信用してくれないので,妻が必要なのだと言います。突然のことに一度は断りますが,とても困っているようなのとハンサムな男性なので,親戚捜しを手伝ってくれることを条件にキーラは承諾の返事をしに再度部屋に行ってみるのでした。この間,キーラはギリシアでの唯一の友人ソフィア・ムーアにメール(SNS)で相談をしています。このソフィアが次作のヒロインです。さて,とんでもない話を持ちかけてきた相手がこのホテルを含めたホテルチェーン「グラマー・ホテル・アンド・カジノ」の経営者クリストだと知り,「私に婚約者の役が務まるかしら,自分を偽ることなんてできる?そんなのは偽善者のすることじゃないの?」と自問します。大金持ちのハンサムな男性に頼み事をされたらそれを利用しようとする女性が普通なのでしょうが,こんなふうに相手のことを先に考えて自分がうまくできるだろうかと自問するところがキーラの特別なところですね。キーラの母は父を亡くしてすっかり経済的な困窮を深めてしまい,父の残した借金を返すためには少しでも高い給料が欲しいという状況ではありましたが,お金のためだけではなく,親戚捜しを手伝ってくれるという条件を認めてくれたので,承諾することにしたのです。すぐにスタッフ部屋からスイートルームに移動して婚約者としての演技が始まります。二人とも人のいるところでは婚約者のふりをし,二人だけになると互いのことをするという奇妙な生活が始まるのですが,責任感の強いキーラはただ表面的な振りだけでは納得できません。互いのことを少しでも知っていないと偽りの関係がバレてしまうということで,質問し合う二人。通常とは異なる婚約者としての二人の関係がなぜかユーモラスです。クリストの思わせぶりや欲望ギラギラ感がない言動がなぜか爽やかで,同時にキーラの好奇心旺盛でなんとかクリストの役に立とうと考える優しさがとても好印象です。ちょっとかわいい高校生の恋人同士のような関係に読者は引き込まれていきます。やがてクリストの重要な取引相手ニコラオス・ストラヴォスの息子ニコラオス・ストラヴォス三世(通称ニコ)から邸宅への招待があり,クリストとキーラはヘリで邸宅に向かいます。商談はうまくいくのですが最終決定はニコの父親。これがまたなんとも古めかしい考えを持つ頑固者。帰ろうとしていたところにちょうど父ニコラオスが帰宅し,クリストとキーラはほとんど相手にされずに,反って不満を持たれてしまうのでした。おそらく商談は失敗だろうとクリストは諦めようとしますが,キーラはがっかりしているクリストをなんとか励まそうとします。そしてなぜこの取り引きがそんなにクリストにとって重大なのかを知りたくなるのでした。なかなかクリストは理由を言おうとしませんが,ついに幼少の頃弟のマックスがスキーで事故死したのが自分のせいだと思っていることが明かされます。子供だったあなたに責任はないとキーラは励ましますが,クリストの気持ちが和らぐことはありませんでした。それでもこれほど自分を心配してくれるキーラの存在が次第に自分にとっては欠かせないものになりつつアルのでした。そして数週間後に迫った結婚式の準備にキーラはなんとかクリストの手助けを求めることで取り引きがうまくいかなかったことを忘れさせようとします。そんな時,クリストが雇った探偵がキーラの親戚を見つかられるかも知れないと知らせてきます。かつて祖父母が住んでいたらしいオルキドスという村を二人で訪れます。ニコラオスの家につきあってくれたキーラへの感謝の気持ちで仕事をそっちのけでクリストが連れて行ってくれるのですが,残念ながら村の長老のところでも証拠は見つかりませんでした。しかもそれと思しき時期の書類がごっそりと亡くなっているようなのです。何かここに謎があるかも知れない。そして今度はニコラオスの方から二人に来て欲しいと正体があります。取り引きを正式に断られるだろうとおそるおそる出かけた二人を待っていたのは,なぜ自分の周りをかぎ回るのかという叱責でした。実はキーラの祖母はニコラオスの姉だったのです。しかし祖父との結婚を反対された祖母は駆け落ちしてアメリカに渡っていたのでした。初めて自分のルーツと親戚を見つけたキーラは喜びに溢れます。しかしだからといって取り引きを承諾したわけではないとニコラオスに釘を刺されてしまいます。もうそのことは考えていない,ただキーラのルーツが見つかったことが嬉しいというクリストの言葉に誰もが驚くのでした。偽物だったはずの婚約,そして実行する予定のない結婚式,その二日前,ついにクリストは本当に自分と結婚して欲しいとキーラにひざまずきますが,キーラはそれを断ってしまいます。それはクリストの両親と兄たち二人が結婚式への参列を断ってきたからでした。愛に溢れた結婚生活が夢であったキーラにとってクリストの両親が出席しないまま結婚することはできなかったのです。ニコラオス親子からは結婚式の参列の返事とニコがクリストの花婿付添人を務めるという返事が来ていました。ついに式の前日,キーラはクリストの部屋を出てしまいます。その時頼ったのはもちろん親友で花嫁付添人を務める予定のソフィアでした。さぁ二人はこのまま別れてしまうのでしょうか。
 実はニコとソフィアが次作のヒーロー,ヒロインになるのですが,新郎新婦の付添人同士が結ばれるということはよくあるようですね。全編を流れるなんとものんびりふんわりした雰囲気,そしてキーラとクリストの性格の良さが本作を癒やしのいっぺんに仕上げています。新人作家ジェニファー・フェイの作風が気に入りました。


タグ:イマージュ
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純潔の未亡人 [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO1356
純潔の未亡人 Castelli's Virgin Widow 2016」
ケイトリン・クルーズ 小泉まや





 原題は「カステリ家の無垢な未亡人」
 ヒロイン:キャスリン(ケイト)・カステリ(旧姓マーチャント)(25歳)/未亡人,ジャンニ・カステリの六番目の妻,通称「聖女ケイト」/ダークブラウンの髪,緑色,翡翠色,グレーと変化する目,ふっくらした唇,印象的な前髪,イギリス人特有の白い肌/
 ヒーロー:ルカ・カステリ(?歳)/「カステリ・ワイン」CEO/長身,黒髪,鋼のような肌/
 「幻を愛した大富豪(SHALOCKMEMO1295)」の姉妹編です。前作はシリーズの1作でしたが,本作はシリーズ化はされていません。というわけで姉妹編としておきます。カステリ家の当主ジャンニ・カステリは恋多き男性でした。本妻を亡くした後,次々に結婚と離婚を繰り返し,死の間際になって最後の妻となったケイトに看取られて別世界へとたびだったのです。前作のヒロイン,リリーとヒーロー,ラファエルは異母兄妹でした。本作では,戸籍上は継母と息子という関係のケイトとルカが恋に落ちるのです。人によってはちょっと違和感を感じさせる複雑な関係の男女ですが,いわゆるタブー的な関係を扱うのではなく,ロマンス作品らしく純愛を題材としていますので,たまたまそういう関係にあったというふうに緩く考えたほうがいいと思います。あまりそちらを期待して読み始めると逆に違和感を感じるかも知れません。それでも一般的,社会的には許されない関係,という面がぬぐいきれず,前作でも本作でもその関係に主人公たちが悩む姿は描かれます。諸悪の根源はジャンニ・カステリ!というワケですが,亡くなってしまうことにより,その呪縛から少しは気が楽になって読み進められます。父ジャンニの逝去により兄ラファエルが会長を務めることになり,弟ルカはCOOからCEOへ,つまり実質的経営者に格上げになる予定でしたが,兄弟の継母となるケイトは自分たちより歳もずっと下で,しかも遺言では金銭的な援助か,会社の経営への参加かどちらを選ぶかはケイト次第という遺言を残したジャンニ。それで兄弟は悩むのです。結婚したばかりで経営の第1線から退くラファエルは弟ルカにこの交渉を任せると言いだしたのでした。常にマスコミに注目されているカステリ家としては,かつてのジャンニの妻たちの処遇,そして異母兄弟姉妹たちの処遇すべてを本家であるラファエルとルカに任されていくことになるのですが,最も難しいのがこの六番目で最後の妻となったケイトの処遇です。親子以上に歳の離れたしかも病気の夫に嫁いだケイトのことをマスコミは「聖女ケイト」ともてはやしています。あまりにひどい処遇をすれば,会社のイメージそのものが悪くなってしまう。まずはたっぷり金を掴ませてカステリ家から追い出したいというのがルカの本音でした。しかし,夫を見送った後,まだ25歳のケイトにしてみればこれからの人生の方が長いのですから,結婚前にやりたかった勉強を継続しながら,自立した生活をしていきたいという気持ちを持っていたのです。そのためカステリ社で働きたいというのがケイトの希望でした。これまでの妻と同じようにどうせ金目当てに父に近づいたのだろうと考えていたラファエルとルカにとって,ケイトの希望は意外性に富んだものでした。一生楽に生活できるだけの遺産を持ちながらなぜ苦労して仕事をしたいなどと言い出すのか?まぁ1週間もすれば仕事に飽きて結局は金を受け取るだろうと高をくくっていたルカたちですが,以外にケイトの仕事への懸命な取組ぶりにルカは驚きます。2年前,初めてケイトに紹介されたルカは父の妻候補でなければ自分が手に入れたいと思うほどの美貌でした。しかも淑女といっていいほど自分を表に出すことがなく嫋やかで,父への細やかな配慮に満ちている女性。それだけに自分の手に入れられなかったという思いをその後も抱き続け,どうしてもケイトの前では冷静になることができない自分にサラにいら立ちがつのるのです。会社の役員たちにもケイトへの態度を冷たくするよう会議で話すなど,なるべく早くケイトへの呪縛から逃れたいと思ってしまうルカでした。ここでMB版の表紙を見てみましょう。黒髪をクレオパトラ風に整え,大きな目と小ぶりながら鼻筋の通った高い鼻,そして真っ赤な口紅を塗ったセクシーな唇。どちらかと言えば派手すぎる化粧と感じられてしまい,どうも「聖女ケイト」というイメージではありませんが,優れた美貌の持ち主であり,作中のケイトの描かれ方と合致してはいるのですが・・・。一方邦訳版の表紙モデルさんの方が紫のドレスでちょっと高貴な感じ,そしてブラウンの髪をしっかり後ろにまとめ,嫋やかな感じがこの方がよく伝わってきます。ケイト自身,母から「あなたの美貌」が将来災いをもたらすので男性には気をつけろと言い聞かせられて育ったことから,25歳の現在まで男性との交際も決して深くならず,もちろん夫であったジャンニもすでに病身であったことからそういった関係にはならず無垢なままで過ごしてきたのでした。次々と男を誑かしてきただろうと想像していたケイトとルカが初めて関係を持ったとき,この事実を知り,ルカはケイトに対して思っていた前提がすべて崩れていくことに驚愕することになります。と同時に初めて会ったときからケイトに惹かれていたことを認めざるを得なくなるのです。
 さて,会社の中ではルカは敢えてケイトを自分のアシスタントの地位に就け,四六時中見張っていようと,そしてどこかでぼろを出したらたちまち会社から追い出してやろうと待ち構えていたのですが,ケイトはかなり我慢強く,会社のスタッフからの無視やいじめにも耐え,期待以上の働きをしていきます。カリフォルニアのナパバレーへの出張にも同行し,ケイトのおかげで商談もスムーズに進んだことで,ルカは次第にケイトへの思いを抑えることができなくなってしまうのでした。なぞ,父と結婚したのか,その問いを機会あるごとに何度も問いかけるルカですが,なかなかケイトは本音を言ってくれません。ケイトはケイトでシングルマザーとして,自分の養育のためにすべてを投げ打ってくれた母が現在関節リウマチにかかり療養所暮らしをしていることとの関係において,自分の存在意義を認めてもらいたい,成功して恩返しをしたいという気持ちをずっと持ち続けていたのでした。容貌ではなく知性と行動力で,つまり仕事で自分を認めてもらいたかったのです。その思いを知っていたジャンニは遺言で会社での仕事を選ぶ余地を残してくれていたのでした。そのことをケイトの仕事ぶりで目の当たりにしたルカはケイトへの欲望だけではなく尊敬できる女性として,つまりケイトの人格に深く打たれていきます。自立した,向上心のある女性を常にヒロインにしてきた作者らしいケイトの人物造型だと思います。そういう視点で本作を読んでいくとヒロインの成長譚だということがわかります。読後感の良い,オススメの作品です。


タグ:ロマンス
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