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夢から覚めた花嫁は [キャット・キャントレル]

SHALOCKMEMO1211
夢から覚めた花嫁は From Fake to Forever
(ウエディングドレスの魔法 2) 2015」
キャット・キャントレル 北岡みなみ





 原題は「偽りから永遠へ」
 ヒロイン:メレディス・リゼット・チャンドラー=ハリス/ウエディングドレス制作会社社員/元ミス・テキサス
 ヒーロー:ジェイソン・リンハースト/アパレル会社「リン・クチュール」CEO/
 第1章でジェイソンがラスベスガスのあるネヴァダ州クラーク郡の結婚登記所にメレディスとの結婚の事実があるかどうかを携帯電話で尋ね,回答を得る部分がありますが,こんな個人情報に関することを簡単に電話で教えてくれるアメリカという国は,またはラスベガスという町は,どれだけ自由なところなのでしょう。自由というより,開けっぴろげというべきなのでしょうか。さて,2年前にちょっとショックなことがあって出会った二人は,おふざけで?ラスベガスで結婚式を挙げます。例のプレスリーの衣装を着た立会人のもとで。そして結婚証明書は互いにシュレッダーにかけようといい合って別れますが,メレディスの申請書が受理されたままになってしまい,二人は正式の夫婦になっていたのです。最近になってメレディスの弁護士からその事実を指摘されてあわてたメレディス。ニューヨークのジェイソンの元に駆けつけますが,侮辱的な言い方をされ,腹を立てたメレディスですが,今はそんなことをいっている場合ではありません。ジェイソンは婚約者との結婚が迫っており,メレディスは姉の会社の共同経営者になるために仕事を頑張らなければならない時期。おふざけで結婚したなどと両親にも姉にも言えるわけがありません。密かに離婚しようと,しかしジェイソンは根っからの事業家。メレディスが申請書をシュレッダーしなかったことを理由に,自分の仕事の手伝いをするように条件を付けます。ジェイソンの両親は離婚し,会社を半分にしました。ジェイソンの会社は母がCEOで,父の会社は姉がCEO候補。しかも2社は今ふたたび合併し,ジェイソンはそのCEOになるつもりです。婚約も結婚もそのための便宜的なものでした。ところが,正直にメレディスとの偽りの結婚の事実を話すと,婚約者はアッサリと婚約を解消してしまったのです。そのために,ジェイソンはメレディスをスパイに仕立て上げて姉の会社に勤めさせようという計略を練ったのでした。ファッションの本場ニューヨークの有名アパレル会社への就職は,姉の会社の共同経営者になるためのステップとしてはこれ以上ないほどの貴重な体験でもあります。ジェイソンの条件を呑んだメレディスですが,二人の関係は姉に知られることになってしまい・・・。結構場面展開の速いここまでのストーリーですが,互いの身体の相性の良さ,そして絶世の美女であるメレディスと女性なら誰しも振り向いてしまう美男ジェイソン。しかもジェイソンの母はメレディスとジェイソンの関係を諸手を挙げて賛成するとあって,出来るだけ速く離婚しようとする二人の計画は暗礁に乗り上げてしまうのでした。しかし,頑固者のジェイソンは「結婚は道具だ」と豪語し,愛だのロマンスだのはからきし考えてもいないのです。何より仕事,会社,昇進というのが第一義のジェイソンです。それでもメレディスに弾かれる気持ちは日増しに強まります。メレディスも自分が美人だけでなくきちんと仕事の出来る女でありたいという切実な願いをもっており姉の会社の共同経営者という立場を得るためにはジェイソンと愛におぼれている場合ではありません。しかし,ジェイソンの姉の会社で有名なデザイナーがメレディスを気に入ってしまい,なかなか会社から離れることが出来なくなると共に,ジェイソンもデザイナーとしての自分も両方を得たいという気持ちに次第に変わってくるのです。「この結婚は全てを手に入れられるチャンスなのよ。あなたが2年前に失ったものを,そして私たちが一緒にいられる未来も。」とジェイソンを説得しようとするメレディスですが・・・。失意のうちにジェイソンの元を去るメレディス。
 やはり失ってみてその存在の大きさに気付く。というのは真理のようです。やっと自分の愚かしさに気付くジェイソン。しかしもうメレディスはジェイソンとの未来を諦めたのかもしれません。それでもやるだけのことはやってみようとジェイソンはメレディスのいる姉カーラの元を訪れるのでした。
 とにかく,メレディスは,めっちゃ美人だということ,そしてジェイソンに自分を求めさせる手練手管も豊富にもっていること,親が財閥で,姉の会社経営を軌道に乗せ,愛する夫もいる,いわばなにもないものがないのですが,そんなメレディスが欲しいものは自分の成長した姿を両親や姉に認めてもらいたいことなのです。美貌やお金や家族に恵まれていても,自分が認められたい,愛されたいという気持ちの方が人間には大切なのだということを物語をとおして語ってくれる秀作です。一気読み間違いなしのイチオシです。



タグ:ディザイア

砂の城のシンデレラ [クリスティン・リマー]

SHALOCKMEMO1210
砂の城のシンデレラ The Prince's Cinderella Bride
( Bravo Royal 6 ) 2014」
クリスティン・リマー 下柳 輝





 原題は「王子のシンデレラの花嫁」
 ヒロイン:ヨランダ(ラニ)・イネス・バスケス(30歳)/小説家,公室付きナニー/豊かな漆黒の髪,大きな黒い瞳,なめらかな卵形の顔
 ヒーロー:マクシミリアン(マックス)・ブラボー=カラブレッティ(?歳)/モンテドーロ公国皇太子/
 シリーズ第4弾です。モンテドーロ公国の9人兄弟のロマンスを描く本シリーズ,いよいよ皇太子マックスの登場です。「王子と孤独なシンデレラ(SHALOCKMEMO1192)で幸せを掴んだ弁護士シドニーの親友で,二人の子どもたちのナニーを務める小説家でモンテドーロの歴史が大好きな女性ラニ(ヨランダ)・バスケスがヒロインになります。大公女の新年を祝う舞踏会で6曲連続で踊ったラニとマックス。宮廷内では良く図書室で顔を合わせ,互いの歴史好きの共通の話題ですっかり友人となっていた二人が,いつしか愛を感じるようになります。しかし,マックスには亡き妻ソフィアとの間にニックとコニーの二人の子どもたちがおり,スペインの貴族の娘であったソフィアとマックスは絶対的なベストカップルとして新聞の社交欄では常に注目される存在でした。しかし水上スキーでの不幸な事故でソフィアを亡くしたマックスには再婚するという選択肢は考えようもないことだったことは周知の事実となっていました。シドニーとルールの子どもたちのナニーであったラニはマックスの二人の子どもたちともいい関係を保っていて,プラトニックで友人としての関係に互いに満足を得ていました。しかし,あのダンスの夜以来,二人の関係に微妙な変化が生じてきます。友人から一歩進んだ関係へと。しかし,ラニにも10代の頃の悲しい心の傷をもつ過去がありました。父親の友人であり27歳も年の離れた小説家に恋をし,妊娠そして流産と恋人との別れを経験し,それ以来男女の愛情関係にはかなり臆病になっていたからでした。そしてマックスとの関係が進展するうちに,ラニは正直にマックスに過去の経験を話したのでした。そのうち,二人の親密さが大公女の耳にも届くことになり,ラニは大公女の私室に呼び出されます。緊張のうちに話を進めていくうちに,自分の恥ずべき過去をいつのまにかすべて大公女に話してしまっていたのでした。てっきり宮廷から去るように言われると思っていたラニでしたが,大公女は,ラニの小説が3冊も出版されることの祝いの言葉と共に,ラニに親しげな言葉をかけるだけだったのです。一方,再婚への気持ちを持てずにいるマックスと,ラニの関係はさらに進展していき,互いに一時も離れられない状況までになっていましたが,マックスは相変わらず結婚の二文字と「愛」を打ち明けることを頑なに拒んでいます。その背景にはきっと亡き妻の存在があると思ったラニはそれを打ち明けてくれるようにマックスに頼むのですが,言葉を濁されてしまうだけです。そして突然アメリカの兄からの電話。父が病で倒れ手術が必要という内容でした。急いで帰国したラニを数日後にマックスが追いかけてきます。ラニの父はビューフォート大学の学部長,母は小児科医,兄のカルロスはレストランを五つ経営している経営者で妻マルティなと幸せな結婚生活を送っています。兄は新聞でラニとマックスの関係を知り,心配で呼び寄せるために父の病状を少し大げさに伝えたのでした。そして数日ラニの親の家で過ごす間にも,マックスはいっこうに二人の関係の進展を匂わす言葉は吐きませんでした。モンテドーロに戻った二人にはなんとなくぎこちない関係が数週間続きます。そして,マックスから別れを告げられるラニ。再度ソフィアとの関係を問い詰めるラニ。二人の関係が最悪になろうとしたとき,マックスの口から驚くべき内容が語られます。
 マックスの娘のコニーの愛らしい,しかも頑固な行動が,読者の笑みを誘います。たがいに関係を深めても心の底から秘密を打ち明けられない,そして過去から逃れられない,過去に立ち向かっていけない人間の弱さとそれを克服する姿が,見事に描ききられ,初めはじれったさを感じてしまいますが,そのじれったさがハッピーエンドに至るための必要な過程なのだと読後に気付かされ,読者に勇気を与えてくれるスケールの大きな人間ドラマが繰り広げられる好著です。邦題はラニがマックスや子どもたちと海岸で遊んだときに砂で作ったお城をイメージしているようです。


タグ:イマージュ

踏みにじられた妻 [アニー・ウエスト]

SHALOCKMEMO1209
踏みにじられた妻 The Sinner's Marriage Redemption
( 7つの愛の罪 5 ) 2015」
アニー・ウエスト 山本みと





 原題は「罪人の救済結婚」
 ヒロイン:エヴァ・キャヴェンディッシュ(24歳)/慈善団体職員/小麦のような金色の髪,真っ直ぐな鼻筋,いくらか大きめの唇,ブルーの瞳/ノルマン人の征服の時代にさかのぼれる家柄の母親の娘,幼少時代(17歳まで)をフレイン・ホールで成長する,マイケル・キャヴェンディッシュの娘
 ヒーロー:フリン・マーシャル(31歳)/実業家/ロマの血を引くキャヴェンディッシュ家の使用人の息子,エヴァの幼なじみ/青みがかった暗い色の瞳,ロマ族の血筋を引くつややかな肌,折れて僅かにゆがんだ鼻,漆黒の髪
 「父親にとって,彼女は単なる品物に過ぎず,個人の権利を有する人間ではなかった」,野心家の父は貴族の家柄の妻を支配し,使用人たちばかりでなく自分の家族すらもの同然に扱い,金欲と物欲にまみれた人生を送った人でした。使用人の息子フリンもまた,16歳の時,父をクリスマスの前日に亡くし,敷地内の小さなコテージで圧迫された生活を送っていましたが,家政婦を務めていた母親は,エヴァの父によって夫の病の看病も出来ず,それでも雇い主に逆らえないという人生を送ってきたのでした。フリンはその後屋敷を出奔して苦労して起業し,今や大富豪となっています。そしてエヴァの父への復讐を果たそうと着々と準備を進めていたのでした。偶然パリで再会したエヴァとフリン。エヴァは母と同じように父から無理難題を押しつけられて,泥酔してくるまで事故を起こし,家を飛びだしたきりでしたが,事故の時親切に自分を助けてくれたのはフリンでした。そのフリンに7年後に再会し,成功を収めたフリンに惹かれていきます。それがフリンの復讐の計画の一部に変わっていきます。プラハで二人は短期間のうちに結婚し,蜜月期間を幸せに過ごします。しかしロンドンに戻ったフリンは休暇の分の遅れを取り戻すという名目で仕事からなかなかはなれず,エヴァも仕事に戻りますが,フリンの画策によって慈善団体を解雇されてしまうのでした。フリンは次々とエヴァを喜ばせようと人手に渡っていた母の実家フレイン・ホールを買い戻したり,先祖代々の肖像画を収集したりしますが,父と同じようにものを与えるだけで心を許さないフリンの態度にエヴァは違和感をもちます。そしてフリンの秘書から聞いたのはフリンとエヴァのパリでの再会や,プラハでの休暇は初めから計画されていたことが分かってしまいます。フリンはエヴァの一家が失ったものを取り戻せば喜んでくれるとばかり思っていました。もはや復讐ではなく,本当にエヴァを愛するようになっていたからです。しかし,エヴァがフリンの秘書から聞いた話をフリンにぶつけられ,フリンはそれを否定することは出来ませんでした。エヴァにしてみれば,父からの独立こそが自分の生きる糧だったにもかかわらず,すべてを金の力で勝手に決断し自分に与えようとするフリンは,父と同じ存在になってしまうように感じたのだったのです。我が儘なお嬢さんだと思っていたエヴァが父から受けた精神的虐待を知らなかったフリンは,エヴァに自分を利用して父の亡くなった原因を作った自分の父への復讐がフリンの動機であったことを知り,フリンの元を去っていきます。その後フリンからは連絡が途絶え,かといって自分から出てきたのにこちらから連絡を取ることもためらわれていたのですが,ついにフリンが現れます。そして驚愕の事実が・・・。なんとフリンは自分の全財産を賭けて,エヴァの愛を勝ち取ろうと準備していたのだったのでした。
 気品にあふれたエヴァが,フリンにメロメロになって行く様子が精密に描かれ,それが裏切りによって大きな反動になっていくところが迫力があって興味深い作品です。そしてフリンの決断が愛の大きさを物語るスケールの大きな作品に仕上がっています。



タグ:ロマンス

愛までの9カ月 [エリー・ダーキンズ]

SHALOCKMEMO1208
愛までの9カ月 Bound by a Baby Bump 2015」
エリー・ダーキンズ 松島なお子





 原題は「赤ん坊の衝撃に束縛されて」
 ヒロイン:レイチェル・アーチャー(30歳)/役員秘書/ふくらはぎの曲線の美しさ,つややかな肌,長い髪
 ヒーロー:レオ・フェアファクス(?歳)/芸術家/日焼けした首,金色の無精ひげ,青い瞳
 イギリスの編集者兼小説家エリー・ダーキンズの初訳作品です。キャリアガールとしてのエリーの姿がヒロイン,レイチェルに投影されているのかもしれません。また小説家としてのエリーはヒーロー,レオの芸術家としての性格に反映されているようにも思われます。ウェブに見る本人の正面アップ画像を見ると,ブロンドの長い髪がこれまたヒロインに投影されているのかもしれませんね。本作が初訳ではありますが,短編を除きデビュー3作目?にあたるようで,作中にも登場するヒロインの会社の上司ウィル・トーマスとマヤ・ハートリー,さらにはニック・ジョンソンとリリー・ベイカーが主人公を務める作品群がトップページで紹介されています。
 さて本作ですが,一言で言うと,何事も計画を立て,計画どおりに実行していくことをモットーとするキチントサンのヒロインと,先のことまで計画して行動するより自由な発想を大切にして生きている芸術家のヒーローという対極にある性格の持ち主同士が知り合い,二人の間に電流が流れ,一夜にしてヒロインは妊娠し,その後二人がどのように生きようとしていくかということを描いた,ミスマッチカップルのあれやこれやのてんわやんわ,という内容の作品です。ヒロイン,レイチェルは少女のころに留守番をしていた家に泥棒が入り,怖い思いをして以来,両親が過保護になってしまい,そのため親の期待を裏切らないように何事にも計画を立て計画どおり行動することで安心感を得る性分になってしまっています。まさしく会社役員の秘書にふさわしい性格といって良いでしょう。一方ヒーローのレオは父と後妻である母との間に生まれ,先妻の子である兄から母子とも蔑まれ,特に寄宿学校時代は兄が率先して仲間と共にレオを虐め,それを両親は信じてくれないというみじめな生活を続け,大学からはすっかり家を離れ,開放的な海辺の家で芸術家として自立しているという生き方をしてきました。芸術家というとなにやら妖しげですが,海辺の波打ち際に打ち上げられる様々なものや流木を加工して芸術的なものを仕上げていくといういわゆる流木芸術家で,勿論絵も描きますし,家ですら自分で建ててしまうという技術の持ち主です。しかしそのような芸術家ですから,何時何分に何をするという計画的な生き方ではなく,目的に向かうと時間も食事も忘れてしまうという目的追求型の生活が中心です。互いに過去の心の傷を抱え,しかも対極にある性格形成をしてきた二人を主人公に仕立てたことで,物語に深みとすれ違いの面白さを全面に押し出したものに仕上がっています。そして,二人の愛が,努力によって互いに家族との確執を乗り越え,心の解放を実現していくという実にロマンス小説の王道にふさわしいイギリス的作品の典型とも言うべき内容になっていて,充実感あふれるオススメ作品と言えると思います。


タグ:イマージュ

王子様に恋したナニー [ジュールズ・ベネット]

SHALOCKMEMO1207
王子様に恋したナニー What the Prince Wants
( Billionaires and Babies 58 ) 2015」
ジュールズ・ベネット 堺谷ますみ





 原題は「王子様が望んだこと」
 ヒロイン:ダーシー・クーパー(30歳)/ナニー派遣会社「ラビングハンズ・チャイルドケア」経営/女性らしい曲線を描く身体,表情豊かなグリーンの瞳,深みのある琥珀色の髪
 ヒーロー:ミコス・コリン・アレクサンダー/ガリーニ・アイル国王子/妻カリナが1年前に急死,ロッククライミングの事故で障害を持つ/ブルーの瞳
 「ダーシーは21歳の時,重い子宮内膜症で子供を産めない身体だと診断された。」というヒロイン,ダーシー・クーパーはカリフォルニア州内から出たことのない普通の女性。最近亡くなった祖母の経営していた会社を引き継ごうとしていました。恋人に1セントも残さないで全て財産をだまし取られ,さらにその借金を埋めるために会社の経営が危なくなっています。そのため,長年勤めてきた社員を全員解雇せざるを得ない状況に追い込まれ,今回,半年間ナニーを務めれば得られる法外な報酬でなんとか会社を軌道に乗せられるという瀬戸際の状況でした。初めに面接に赴いたとき,すぐに担当の子供の世話を実践させられるという日でしたが,幸いなことに該当の女の子イリスはすぐにダーシーに懐き,滑り出しは好調かと思われましたが,なぜか雇い主のミスター・アレクサンダーは「君を雇えない」というのです。なんとか今日1日でも試用期間として過ごさせてくれないかと頼むと,渋渋ながら承諾を得ることが出来ました。実はこの時,コリンことミコス・アレクサンダーは,年配のいかにもナニーらしい女性が派遣されてくるものだと思い込んでいて,ダーシーが若く,女性らしい曲線を描く身体をしていることに戸惑い,使用人に対して不適切な行動を取ってしまうのではないかと恐れて,断るつもりになったのでした。2年前,妻との関係が悪化し,さらにその妻を交通事故で亡くして,自らもロッククライミング中に落石に当たって大怪我をし,やっとの思いでリハビリにこぎ着けたばかりでした。辛い妻の死と自分の怪我を悔いて,祖国,ガリーニ・アイルを離れ,義姉の祖国であるアメリカでしばらく生活しようと思っていたところだったのです。そんなコリンにとっては,マスコミの執拗な追求から逃れ,愛娘と共にこれからの生活についてじっくり考えたいと思ってきたところだったので,使用人に恋愛感情などを抱いてはいけないと思ったところだったのです。なだめすかしてもなかなか泣き止まなかったイリスが,ダーシーが来てから数分ですっかりおとなしくなり,機嫌良く昼寝についたことに驚き,コリンは1カ月の試用期間を設けるという条件で,ダーシーの滞在を許可するのでした。ダーシーもまた,自分がもう子供を持てないという状況と,イリスに対してすぐに深い愛情を感じ,さらには,女性なら誰しも振り向くようなハンサムなコリンに強く惹かれながらも,今は会社を建て直すためになんとしてもこの仕事をやり遂げて報酬を得たいと強く考えていたことで,コリンに対する思いを表に出さないようにしようと決意するのでした。それからは,イリスを間に挟んで,近づきすぎないように気をつけながらの微妙な二人の生活が始まります。そして1カ月を迎えようとしたとき,ついにダーシーはコリンとの接触を自ら決意せざるを得ないほど惹かれていく自分をもてあましていました。そして一夜を共にした二人が楽な服装でイリスに食事をさせていたところに,コリンの兄が突然やってきます。ガリーニ・アイルの王位継承者であるコリンの兄は,コリンをミコスと呼び,二人の関係を見抜き,コリンが王子であることをバラしてしまうのでした。
 もうここにはいられない,と荷物をまとめようと部屋に戻ったダーシーをコリンが追いかけてきて,真実を告げるつもりだったことを信じてくれと頼み込みます。そして,いったん国に帰らなければならないが,イリスを安心して預けられるのは君しかいないので,一緒に来て欲しいと説得にかかるのでした。ふたたび男性に騙されたという後悔の念と,このまま二人と別れてしまうにはあまりに深く関わってしまったという気持ちの狭間で揺れるダーシー。しかし,たくましくも,会社再建という目的のためにはここで逃げだすわけにはいかないと,ガリーニ・アイル行きを承諾するのです。宮殿について,自分とコリン(ミコス)とはやはり生活基盤が違うという実感を得たダーシーですが,コリンの義姉ビクトリアが自分のためにパーティ用のドレスを作ってくれたり,何くれとアレクサンダー家の男どもは・・・と打ち明け話をしてくれたりして慰めてくれ,なんとかパーティーにでて,コリンの気持ちを自分に向けようと前向きに考えられるようになります。
 モデル体形でもなく,恋人にも美しいと言われたこともなかったダーシーに,君は美しいと言ってくれ,3人で幸せな家庭を築きたいという気持ちを明らかにしてくれたコリン。そんなコリンを愛する気持ちを抱かずにはいられないダーシーの,懐の広く,愛情深い性格がとても爽やかで,読後感の素晴らしい作品です。関連作でコリンの兄ステファンとビクトリアのロマンスを描いた「かりそめのプリンセス(SHALOCKMEMO1157)」は,ビクトリア側から描いた作品でしたが,本作はステファンとコリンの兄弟を中心に描いていますので,別シリーズになっています。


タグ:ディザイア

秘密の小さな姫君 [ミシェル・コンダー]

SHALOCKMEMO1206
秘密の小さな姫君 Prince Nadir's Secret Heir
( One Night With Consequences 8 ) 2015」
ミシェル・コンダー 佐倉小春





 原題は「ナディール王子の秘密の相続人」
 ヒロイン:イモジェン・リード・ベンソン/オーストラリア人,ムーラン・ルージュのダンサーからカフェの店員/小麦色の髪と刈りたての夏の芝生と同じ色の瞳,長身/生後五ヶ月の娘ナディーナの母
 ヒーロー:ナディール・ザマン・アル=ダーカン/バカーンの皇太子/長めの黒髪,オリーブ色の肌,ブルーグレーの瞳
 パリ,ムーラン・ルージュ,一世を風靡するこのエンターテインメント施設でダンサーとして働くイモジェン。王家の異母兄弟ナディールとザキムはパリの思い出にとこの店にやってきますが,踊り手たちの一人イモジェンと目が合ったのはナディールの方でした。二人はたちまち恋に落ち,イモジェンは妊娠しますが,それをナディールに告げると冷たい言葉が返って来て,その後ナディールは出張と称してパリを離れてしまいます。イモジェンは7カ月後娘を出産しますが,5カ月の娘を抱え,親友カロの兄ミンのフラットに身を落ち着け,カフェの店員として働いていました。そこに,ナディールが現れます。君を捨てたのではなく,自分の元を去られてしまったというナディールに反発を覚えながらも,娘ナディーナと一緒に車に乗せられ,あれよあれよという間にナディールの国バカーンへとフライトすることになってしまいます。二人の言い争いもナディーナの目の前では子供の成長の妨げになると思い極力避けていますが,二人になるとすぐに言い合いになってしまうのでした。ナディールはバカーンの王位継承を断るつもりでやってきたのですが,異母弟のザキムが地方出張のまま連絡が取れなくなり,王宮での会議に参加しなければならなくなったナディール。そして周囲の人々はイモジェンとナディーナをナディールの妻と娘と認識しているようなのです。ナディールが幸福な幼少時代を送ってきたわけではないことや母と双子の妹を交通事故で亡くし,その原因が自分であると考えていることなどを知ったことや,娘の父としてのナディールが精一杯のことをしていることに心を打たれたイモジェンは,自分がもはやナディールを心から愛し,「この人のためなら何でも出来る。」と思うようになります。一方ナディールは自分がむりやりイモジェンを国に連れ帰ってしまったことに気付き,自分の父がかつて母にしたのと同じ行為だったと自分を責め,イモジェンを解放しようと決意するのでした。このすれ違いが二人の関係をどう変化させていくのでしょうか。
 1年2カ月もの間ひたすらイモジェンを探し続け,ナディーナを突きつけられた動揺,そして捨てられたと思っていたイモジェンに今でも惹かれ続けていることを認めたくないプライドとの間で苦しむナディールの苦悩が読者を惹きつけます。王位継承権ともからみ,またイモジェンにはミンという男友達がいるのではないかと勘違いしたりと,右往左往するのですが,ナディールの周囲の人たちは一目でナディールがイモジェンに惹かれていることを見抜くのですね。そして温かい目で3人の親子を見守っていくところが,とても温かくてほんのりする作品です。


タグ:ロマンス

街角のシンデレラ [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1205
街角のシンデレラ The Italian's Wife
( Mediterrranean Marriage 2 ) 2001」
リン・グレアム 萩原ちさと




HQB-722
16.04/¥670/200p

R-1834
03.01/¥672/156p


 原題は「イタリア人の妻」
 ヒロイン:ホリー・サンソム(20歳)/シングルマザー,ティミーの母/赤茶色のふさふさした巻き毛,純粋無垢な外見,160センチ/エクスムアの農場育ち
 ヒーロー:サヴェリオ(リオ)・ロンバルディ(29歳)/イタリアの旧家ロンバルディ家の長でロンバルディ産業を指揮する実業家/185センチ,金色の瞳
 「地中海の結婚」シリーズの第2弾で,ヒーローはイタリア人の富豪リオです。婚約者と気まずい別れをした後,帰宅途中でリムジンの前に飛びだしてきたのはベビーカーを押して道に倒れかかった若い女性でした。婚約者のクリスタベルはリオのフラットで別の女性と抱き合っていたのです。まさか自分の男性的魅力を否定されるとは思ってもみなかったリオにとっては衝撃の出来事でした。しかしそれより衝撃的だったのは,みすぼらしい格好でどうみても17-18歳ぐらいの子供づれの女の子だったのです。その女性ホリーは恋人のジェフに騙されてシングルマザーとなり,捨てられて生活に困窮した状態だったのです。とっさに自分の子供ティミーを守ろうと車の前に倒れ込んでしまったのでした。自分の経営する病院に運び込んで医師の診察を受けさせると,栄養失調になっていることが分かります。そして,警察にも福祉事務所にも連絡しないでくれと懇願するホリー。どちらにせよティミーが自分から取り上げられてしまうと恐れていたからでした。退院後自分の屋敷にホリーとティミーを連れていったリオ。とにかく数日はホリーの身体の回復を待つことにするのですが・・・。もうこの時点で母から結婚をせっつかれていたリオにとって,クリスタベルとの別れを決意し,その代わりとしてホリーを利用したいという気持ちがあったことは否めませんでしたが,それより純粋無垢なホリーの境遇やその隠された美しさに惹かれていく自分にも気付いていなかったのでした。それからは,ホリーとの結婚が有効な解決策と考え,着々と準備するリオ。そして思いがけない出来事の連続に驚きつつ,初めに出会ったときからリオの男性的魅力に惹かれてしまったホリーは信じられない思いで葛藤します。ティミーの子供部屋,ナニー,福祉事務所の係員に二人が結婚するつもりだと話すリオ,そして2週間後には結婚式を挙げていたのでした。そしてハネムーンに。何でも準備してくれ,ずっと一緒にいてくれるリオに心身共に頼るようになり,幸せにあふれていたホリーが目覚めたときにリオにかかってきた一本の電話が二人の別れのきっかけになるとは・・・。それは仕事上の電話でしたが,リオはアメリカへの出張を余儀なくされ,ホリーは一人でリオの母の元に顔を見せに行かざるを得ませんでした。しかしリオの母アリスからは財産目当ての結婚ではないかと冷たい言葉をかけられ,しかもそこにはリオの元婚約者クリスタベルも泊まっていたではありませんか。ありったけの勇気を振り絞って,リオが選んだのは自分だと言い切ったホリーですが,すでにすっかりリオとの結婚生活には自信を失っていたのでした。リオの帰宅を待ってクリスタベルとのことを聞き出そうとするホリーですが,いいようにあしらわれてしまいます。そして付き合い上どうしても出かけなければならなくなったパーティで,ホリーはクリスタベルとふたたび出会い,さらにリオがクリスタベルを連れてパーティを抜け出していく場面を見てしまいます。もう自分は元恋人と同じように今度も捨てられてしまうと観念したホリーはティミーを連れて実家に戻っていきます。
 思わぬ幸運でシンデレラ生活を送っていたホリーがリオとの結婚後,愛にたどり着くまでのあれこれを描いた作品です。15年前の作品ですがホリーの心の成長をも巧みに描いた読後感の素晴らしい良作です。


タグ:ロマンス

メイドが愛した億万長者 [キャロル・マリネッリ]

SHALOCKMEMO1204
メイドが愛した億万長者 Sicilian's Shock Proposal
( Playboy's of Sicily 2 ) 2015」
キャロル・マリネッリ 井上絵里





 原題は「シチリア人の衝撃的求婚」
 舞台:ロンドン,シチリア島ボルド・デル・チエーロ(天国の縁)
 ヒロイン:ソフィー・デュランテ/ローマのフィシェラ・ホテルのメイド/長い黒髪,濃い茶色の瞳
 ヒーロー:ルカ・カヴァリエーレ/実業家/ネイビーブルーの目
 裕福な資産家で町全体を支配していると言ってもいいほど財力と権力を持つ父マルヴォリオの一人息子のルカ・カヴァリエーレですが,父親が妖しげな事業にかかわったり,あまりにも自分が支配的に町の人たちや息子に当たることを嫌い,自力で事業を興して成功しています。少女のころからそのルカに憧れ,親同士が婚約を決めた相手の娘ソフィーは,18歳のころには,美しい女性に成長しています。しかしロンドンで事業を成功させたルカにはソフィーとの結婚は親の言いなりになることを意味していました。そのためソフィーがロンドンの自分のオフィスを訪ねてきたとき,ルカはソフィーに婚約解消を申し出るつもりでいたのです。ソフィーにはクルーズ船で働いてみたいという夢がありましたが,今はしがないホテルのメイドをしています。「僕はロンドンで暮らしている。僕が付き合う相手はモデルや洗練された美女ばかりだ。親が結婚を決めた田舎娘に出番はない」という言葉をルカが父親に話しているのを聴いてしまったソフィー。ルカがそう言うのは,ルカが島を離れるときにソフィーに一緒にロンドンに行こうと誘ったにもかかわらず,ソフィーはついてこなかったことで,裏切られたという気持ちをソフィーに対して抱き続けてきたからでした。しかし当時まだソフィーは少女であり,親の庇護の元を離れることには躊躇する気持ちがあったのでした。その後ルカのロンドンの居場所がつかめず,ローマ市内の狭いフラットに友人のベラと住みながらメイド生活を続けていたのですが,刑務所に収監中の父の先が長くないことを知り,父の希望であるルカとの結婚を心待ちにしている様子を見かねてロンドンを訪れたのでした。しかし,ソフィーの父が収監されることになったシチリア島での放火事件の裁判で,カヴァリエーレ家の雇った弁護士は親子が無罪になり,ソフィーの父の単独犯であるかのように裁判を誘導し,結局父だけが罪を得て43年の刑を受けたことで,ソフィーはルカとその父を恨み続ける気持ちも抱き続けています。家同士の確執,そして再開した瞬間から互いに惹かれる気持ちを抱き合う二人の,まさしくロミオとジュリエット風なねじれた愛の行方はどうなるのか,それが本作の読みどころです。先の長くない父の夢を叶えてあげたいソフィーはルカに婚約が継続中であることを見せたいとルカに頼み込むのですが・・・。
 前作の「涙のエンゲージリング(SHALOCKMEMO1179)」でも,結婚に結びつくまでの二人の長い旅路が描かれますが,本作でも紆余曲折が続き,しかも数年前の事件の真相が次第に明らかになっていくというロマサス的要素も加わり,ちょっと複雑な内容になっています。それにしても,本作の魅力はなんといっても激情的で誇り高いシチリア娘ソフィーの人物造型でしょう。「わたしは気が強くて癇癪持ちだけれど,愛する人から別れを告げられたらその言葉には素直に従う」と宣言するだけのことはあり,なかなか一筋縄ではいかない女性です。そして「あなたもお父さんに似ているけれど,あなたはお父さんとは全く違う人だわ。あなたは傲慢で頭が切れる」とルカを評していることからして,以外とこの二人の相性は互いを補いつつ,ソフィーの父が評したようにベストカップルなのかもしれません。
 ハーレクイン・ロマンスも,この4月刊から表紙や体裁が変わり,これまでの黄色からイマージュの色だった白が基調の,上品にあしらわれた装丁になっています。素敵な装丁ですね。


タグ:ロマンス

百本のバラに抱かれて [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1203
百本のバラに抱かれて Bound by the Billionaire's Baby
( One Night with Consequence 7 ) 2015」
キャシー・ウィリアムズ 柿沼摩耶





 原題は「大富豪の赤ちゃんのとりこになって」
 ヒロイン:スザンナ(スージー)・サドラー(25歳)/イラストレーター/茶色の大きな瞳,ブラシをかけたか定かではない無造作にカールしたストロベリー・ブロンドの髪,ふっくらした唇
 ヒーロー:セルジオ・ブージ(32歳)/実業家/漆黒の髪,どこか異国の遺伝子を示唆するブロンズ色の肌,彫りの深い完璧な顔立ち,ネイビーブルーの瞳/頭が良くキャリア志向の強い女性が好み
 最後に生まれた女の子はジョージーナ・ルイーズ・フランチェスカ・ブージという長い名前になりましたが,両方の母親の名前を取っているようです。こういう長い名前のときは普段はなんと呼ぶのでしょうか・・・。女性なら誰しも付き合いたいと願う大富豪,セルジオ。両親の不和を見て育ち愛を信じられず,女性との付き合いも刹那的なものしか求めず,割り切った関係だけを求めてきたヒーローが,最終的には実の両親が「出会いは見合でも,真実の愛が育まれたのだ」と考えられるようになったきっかけは,ヒロインとの生活でした。身長160センチほどの小柄で,しかもモデル体形ではなく女子らしいふっくらした体型。セルジオは普段付き合っている女性とは異なるその体型に魅力を感じたのです。そして何一つ自分の主張に「ノー」と言わない周囲の人たちと違って,何かとおしゃべりで,しかもこちらの言うことには正直に「ノー」と言う頑固な女性。それがスージーでした。きっと自分との交際を狙った新手の出会い方だと思ったのは,自分の経営するレストランで食事をしようといていたとき突然目の前に座り,少しの間座らせてくれないかと無理やり頼み込んだ女性がコートの下に真っ赤なワンピースを着た肉感的な女性だったからでした。きっと幾人かの男性の相手をし,自分を金持ちだと知っているに違いない。そう思っていたセルジオですが,反面純真さも垣間見えるスージーにちょっと興味を持ったのでした。スージーは富裕な家族の出ですが,姉アレックスはバリバリのキャリアウーマンで美女。従姉妹の結婚式が間近に迫り,親族の中でももっとも期待されていない末っ子。しかも定職に就かず,絵を描いて暮らしているという変わり種。しかし独立心が強く,親が買ってくれたロンドンのフラットではなく,場末のアパートでの暮らしにガマンしているのでした。互いの存在が忘れられずに一夜を共にしてしまった二人ですが,その時スージーのお腹にセルジオ二世が宿ります。そのことに気付いたスージーはなかなか言い出せません。二人の関係はかなり良い段階にまで達していたのですが,セルジオに将来の生活を共にすることは鼻から考えていないときっぱり宣言されたスージーは,妊娠を告げた時は二人の別れの時とわかっていたからです。しかし,アメリカ出張中のセルジオが,帰郷している従姉妹の結婚式の会場に現れ,両親や親族とも会ってしまったとき,やっかいなことになってしまったと焦りの気持ちをもちます。きっと両親はセルジオと自分のウエディングベルを聞くのも間近だと思ったに違いない,それなのに自分は妊娠をセルジオに告げ,別れなければならない,と。その夜セルジオの泊まっているホテルでふたたび関係を持ったスージーは,ついに事実をセルジオに告げるのでした。しかし,スージーが思っていた展開とは異なり,セルジオはスージーにプロポーズするのです。「愛のない結婚は」互いにみじめになるだけ・・・。やがて自分は捨てられるに違いない。と思っているスージー。
 しかし,ここからのセルジオの行動は模範的でした。母体のことを考えてロンドン近郊で騒がしくない場所の一軒家を買い,居心地の良いように家具を整え,スージーのアトリエをしつらえ,スーパーにも一緒に買い物に出かけ,日に何度も電話をして様子を聞き,しかも自分には触れようともしない。そして一度断った結婚のこともその後口にしない。ただ自分と子どものことだけを心配する。そんな期間が何ヶ月も続きます。あと2ヶ月半で予定日というとき,身体に違和感と痛みを感じたスージーを素早く病院に連れて行き,一緒にいて励ましてくれる。そんなセルジオの様子に,スザンナはひょっとして,将来を共にすることをセルジオはいやがってはいないのではナイだろうかという期待も膨らむのですが,セルジオの陰に感じる他の女性の存在や,怖れから,あえて思いとは逆のことを口にしてしまうスージーに,セルジオは意外な言葉を言い出すのでした。女性にとってまさに理想の男性セルジオが描ききられていて,白馬の王子様を夢見ながらも,自分に自信がなく,自分の気持ちと逆のことを言ってしまうスージーが,とても愛らしく描かれた秀作です。読後感も充実の,シリーズ最新刊です。


タグ:ロマンス

シンデレラの秘密の契約 [スーザン・マレリー]

SHALOCKMEMO1202
シンデレラの秘密の契約 Accidentally Yours 2008」
スーザン・マレリー さとう史緒





 原題は「ふとしたことからあなたのもの」
 舞台:ワシントン州シアトルとその近郊
 ヒロイン:ケリー・サリバン(歳)/シアトル近郊の町ソングウッドの「ヘア・バーン」の美容師,シングルマザー/ギラン・バレー症候群の息子コーディの母/元チア・リーダー,コミュニティ・カレッジ1年の1学期で中退。/金髪にブルーの瞳,中肉中背,可愛らしい顔立ちで至って健康そう。
 ヒーロー:ネイサン・キング(38歳)/不動産会社「キング・インベストメント・グループ」経営/背が高くて,肌がこんがりと日に焼けた,大金持ち。海軍基地のあるブレマートン生まれ。
 ヒロイン,ケリー・サリバンの年齢が読み取れませんでしたが,夫を事故で亡くし,その時お腹に宿っていた息子は難病のギラン・バレー症候群という病にかかり,ゆっくりと死に向かっていっています。息子が9歳であるという年齢を考えても,30歳前後ということでしょう。この息子コーディの病を治すため,何度も研究所の近くに引っ越しを繰り返し,やっと,新薬開発の可能性のある研究所のあるソングウッドの町に越してきます。しかし,研究所で電気系統の故障から爆発事故があり,研究所は休業状態になってしまいました。ケリーがそこの研究者ドクター・アブラム・ウォレスを訪ねると研究所の再開には1500万ドル(約17億円)もの資金が必要である言われてしまいます。腕が良いとは言え,美容師に過ぎない自分にこんな資金を融通する手立てはありません。そこで同じ病気で息子を亡くした富豪のネイサン・キングに資金提供をお願いしに行く,というのが物語の始まりです。「鮫をも震え上がらせる男」という異名をもつ冷酷なネイサンに対して,ちょっと裏技を使ったものの,全力で目的に向かってぶつかっていくケリーに,はじめは相手にしないネイサンですが,次第にケリーの事情が分かり,さらに彼女の息子を思う気持ちや前向きに物事に取り組み,決して諦めない強さに心を動かされたネイサンは,現在進行中の巨大ビル開発の市の許可を得るため,研究所への資金提供の代わりにケリー親子の協力を条件にした取り引きを持ちかけるのでした。ネイサン側の弁護士ジェイクが信用できそうな人だったこともあり,ケリーはこの契約にサインします。もうこの時点でケリーに対するネイサンの恋は始まっていたようです。ケリーもまた人生の全てを息子に賭けるという気持ちと,ネイサンに頼りたいという気持ちの板挟みに苦しみますが,息子を元気づけるために「ワンダー・ママ」に扮して想像できないような行動を取ることや,研究所のスタッフのリンダと協力して,町の活性化にアイディアを出すなど,とにかく八面六臂の活躍をします。この生き生きと活動するケリーに町の人たちやネイサンの運転手や弁護士が次第に巻き込まれていき,一番巻き込まれたネイサンが昼も夜もケリーを忘れられなくなってしまうというストーリー展開はとてもすっきりしており,しかも楽めるジェットコースター・ストーリーになっていきます。これに,ネイサンをしつこく付け狙い自分を大手新聞社に売り込もうとする記者や,悲惨な状況で心を病んでしまったネイサンの妹などがからみ,複数の物語が同時進行するという中編特有の物語が展開されていきます。久しぶりのMIRA文庫でしたが,通常156頁のHQシリーズでは味わえない物語の深まりを,味わうことが出来ました。


タグ:ロマンス Mira

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