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大富豪と愛を宿したメイド [ジェニー・ルーカス]

SHALOCKMEMO1474
大富豪と愛を宿したメイド Baby of His Revenge
( Wedlocked 65 ) 2016」
ジェニー・ルーカス 東みなみ





 原題は「復讐の子」
 ヒロイン:イレーヌ(レイニー)・メイ・ヘンリー(25歳)/メイド/小柄で肉感的,茶色の目,クリーム色の肌,黒髪,砂時計のような豊かな胸と細い腰/
 ヒーロー:カシウス・ブラック(31歳?)/不動産業経営/長身,広い肩幅,高い頬骨の片方に傷跡,身長190センチ,体重90キロ/
 高校を首席で卒業しながらも,病弱な祖母と体の不自由な父のために働き始めたレイニーは数年前に母親が家を出奔してしまっています。一方富豪のカシウスはニューオリンズの裕福な家で大切に育てられましたが父親に捨てられ,復讐を考えています。モナコでの二人の出会いはちょっとした車の事故でした。雇い主の毛皮のコートをクリーニングに出すために道路を渡ろうとし,カシウスの車の前に飛びだしてしまったのでした。もともとレイニーはカシウスの知り合いのフォーシル伯爵夫人,ミミ・デュプレシのメイドとして働いていたのですが,事故のことを夫人に伝えようにも,レイニーの携帯電話は車のタイヤの下敷きになってしまっていたのです。「私が首になれば家族は来月の家賃を払えなくなるし,父の医療費も出せなくなる。」と訴えるレイニーがニューオリンズ出身だと知ると,カシウスは救いの手を延べるのでした。30センチの身長差と30キロの体重差を差し引いてもカシウスが自分に惹かれるなどありえない身分差を感じたレイニーに対して,これまで付き合ってきた棒切れのような体型の女性とはまったく異なる小柄で肉感的な,しかもメイドという職業のレイニーに興味を持ち始めるカシウスでした。置かれた状況に同情心を覚えただけでなく,お金目当て,体目当てで近づく女性が多いなか,その真っ直ぐな性格や率直な物言いや温かな人柄にも惹かれたようです。カシウスには長い年月を掛けた復讐の計画がありました。母と自分を認知せず,貧しい生活を余儀なくされ,しかも母はそんな父がきっといつか自分たちを呼び寄せてくれるという夢を見続けつつ亡くなったのでした。その父の財産と会社を刻苦勉励して身に付けた財力と経営手腕で少しずつ買い取り,最後には会社の経営権とサン・ジャン・カップ・フェラに達優美な屋敷を奪う,というのが人生の目標になっていたのです。もう少しでその目標に手が届くところまで来ています。今手がけている事業に成功すれば,父の会社を二束三文で買い取るところまで来ていたのでした。ここまでくるのに20年近くかかっています。しかしそのためには,妻帯者であることがどうやら相手の望みらしいのです。レイニーに魅力を感じたカシウスは伯爵夫人に追い出されたレイニーと自分の目的が両方達成できる方法として,レイニーに便宜的な結婚を提案します。提案というより,もはやレイニーにはカシウスの提案に従わざるを得ない状況になっていたのです。一方レイニーもまた,自分の状況ばかりでなく堂々としたカシウスの男性的魅力に惹かれてしまいます。しかしかつての恋人から感じ方が不足だと指摘を受けていたレイニーは自分に自信が持てないでいたのでした。だからこそ,便宜的な結婚というカシウスの提案には,ホッとするところもあったのです。「これほど欲しいと思った女性はいない。彼女を僕の妻にし,できるだけ早く子供を身ごもってもらわなければ」と考えたカシウスはレイニーを説得し二人は愛を交わします。その時すでにカシウスに愛を感じたレイニーですが,一向に愛の言葉を囁いてくれないカシウスに,これは便宜的結婚に過ぎないと思いを新たにするレイニーでした。
 二人の間の気持ちの溝はなかなか埋まりません。「あなたが愛を憎むのも当然ね。あなたにとって愛は嘘でしかなかったんだもの」とカシウスに同情を寄せるレイニー。「君には理解できないし,愛への理想を壊したくなかった」とレイニーを思いやるカシウス。「私にとっては,あなたと私たちの赤ちゃんの方が大事だわ。けれど,あなたの復讐が私たちみんなに影響を与えそうで怖いの」と復讐を思いとどまらせ,父との和解を望むレイニーですが,カシウスは頑なでした。レイニーが事故に遭って病院に運ばれたと知ってカシウスは初めてレイニーを失うかも知れないという思いから「僕は…レイニーを愛している」ことに気づきます。二人の間の溝はついに埋まるのでしょうか・・・。
 ロマンス度の高い作品ですが,復讐から和解へとレイニーの愛によって救われていくカシウスの変化が見事に描かれた作品です。


タグ:ロマンス
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イタリア富豪の熱愛 [レイチェル・トーマス]

SHALOCKMEMO1473
イタリア富豪の熱愛 Married For The Italian's Heir
(四富豪の華麗なる醜聞 2) 2016」
レイチェル・トーマス 藤村華奈美





 原題は「イタリア人の後継者のための結婚
 ヒロイン:パイパー・ライリー(?歳)/ウエイトレス/緑の瞳,炎のような赤毛,左目の視力がない,小柄でほっそりしたからだ,美術専攻/
 ヒーロー:ダンテ・マンシーニ(?歳)/再生エネルギー会社社長,慈善団体の共同代表/カラメル色をした罪深い黒い瞳/
 四部作「四富豪の華麗なる醜聞」の第2巻です。第1巻より先に読了してしまいました。
 最愛の父を亡くして傷心の想いのパイパーは,自暴自棄となりある男性一夜を共にしてしまいます。2カ月後妊娠に気づいたパイパーは,父親であるダンテ・マンシーニの元を訪ねるのですが・・・。
 ロマンス度がかなり高い作品です。家庭的に恵まれずに弟の死を自分の責任だと感じているダンテが,パイパーとの便宜的な結婚を決意し,パイパーも傲慢なダンテの中に深い心の傷があることを知り,愛と癒やしを求めていくというストーリー展開です。目立たないように生きてきたパイパーがダンテによって美しく華やかに変身させられ,自分の美しさに気づいていくとともに,ダンテへの愛が彼の心の立ち直り結びついていくところが読みどころです。


タグ:ロマンス
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獅子と醜いあひるの子 [クリスティ・マッケラン]

SHALOCKMEMO1472
獅子と醜いあひるの子 Unlicking Her Boss's Heart 2016」
クリスティ・マッケラン 川合りりこ





 原題は「ボスの心の鍵を開けて」
 ヒロイン:カーラ・ウィンストン(27歳)/役員秘書/黒髪,ほっそりした肩,アーモンド型の明るいブルーの目/
 ヒーロー:マックス・ファイアブレイス(?歳)/経営コンサルタント/チョコレートブラウンの髪,はしばみ色の瞳,「若獅子」のような男性/
 いわゆる秘書ボスものです。従姉のポピーの紹介でむりやりに近い状態で自分を秘書に売り込んだカーラ。前任の会社でちょっとしたトラブルで辞表を出してしまいますが,自活するためにはなんとしても高給が必要です。同時に住む家も・・・。訪ねたのはロンドンの高給住宅地にあるヴィクトリア様式の四階建ての屋敷でした。「秘書の経験は六年ありますので,いちいち指示を与える手間は取らせません。仕事は自主的に進められますし性格で完璧です。私の力がどれくらいのものか見せるチャンスを,今日一日いただけないでしょうか。もちろん報酬は要りません。」と,かなり強引に自分を売り込み,マックスの元に1日だけ留まる許可を得ます。妻が亡くなってから一年半しか経っていないマックスは女性との深い関係はもう二度とゴメンだと思っています。というより妻の死に自分を責めていたのです。屋敷での仕事が中心のマックスと同居し,秘書業務を始めたカーラですが,マックスの方は自分のプライベートを知られたくなくて,カーラと距離を置こうとします。しかしながら逆に彼女の私生活についてもまったく尋ねたことがなかったのです。働き始めて2週間も経つ頃にはカーラは日に日にマックスの存在を敏感に意識するようになっていきます。マックスもまた,次第にカーラの存在を意識せざるを得なくなっていくのでした。この気詰まりな状況を共通の友人である医師ポピーに相談したいと思っても,遠くアフリカの地で緊急援助医として働くポピーは遠い存在になってしまっています。「ここまで極端に避けなくてもいいだろう。二人の気性がまったく違うのは確かだが,それだけが原因ではないはずだ。まるで言葉の意味が間違って伝わる不思議な力がカーラとぼくの間に働いているみたいだ」という思いをマックスが持っていることなど,カーラには及びも付きませんでした。「奥様がいらしたなんて一度も・・・」と亡妻ジェマイマの存在を知ってしまったカーラは余計マックスを意識せざるを得なくなってしまいます。「仕事関係を除けば,君は妻を失った後で最初に知り合った,今までの人生とはなんのつながりも無い,まっとうな人だったから」とジェマイマの亡くなるまでの経緯を打ち明けるマックス。「ぼくがもっと彼女に注意を向けて何かの兆候に気づいていたら」とくも膜下出血で亡くなったジェマイマへの後悔を打ち明け,それ以降罪悪感を抱き続けていたマックスの心に,カーラが寄せた同情の気持ちは,まっすぐにマックスに刺さっていったのでした。そんなとき,取引先とのトラブルが発生し,マックスはマンチェスターに数日出張しなければならなくなります。カーラに留守中の仕事を任せていいのだろうかという迷いに,カーラは大丈夫だから取引を成功させてきてとマックスを送り出します。懸命の努力で取引も成功し,ロンドンに戻ってみるとカーラはすっかりマックスの仕事を代理し,さらにはマックスの母親に彼の名前で誕生日の花を贈る手配までしてくれていたのでした。そんなマックスの態度に「恋をするわけには行かないのよ。マックスは今でもジェマイマを愛しているのだから。亡くなった人と張り合うなんてできるはずがないもの。苦しんだあげくに失恋するのが落ちだわ。」とカーラはマックスに惹かれる思いを懸命に振り切ろうとするのでした。仕事が成功したお礼に二人で芝居を見に行ったとき,カーラは退社せざるを得なかった前任の会社の関係者と出会ってしまいます。必至に隠れようとするのですが,自分を徹底的に虐めていた女性と対決せざるを得なくなります。その時マックスはとっさにカーラの有能さを強調し,恋人だと宣言して彼女を守ってくれたのでした。二人の間に団結心が生まれ,マックスは「カーラが必要なのだ」と思わせられます。そしてマックスは自分の出自と複雑な親子関係を打ち明けるのでした。「ああ,わたしはいったいどうなってしまったの? 私はマックスを愛しているんだわ。」という自分の気持ちに気づいたカーラは,そんな思いでいる中,あるきっかけからついにマックスと結ばれてしまいます。「ぼくは過去に何をした? 一人の女性の愛を勝ち取っておきながら,自分の不注意のせいですべてを失ってしまった。そんなぼくが別の女性と恋におちるなんて到底ゆるされることではない。」とジェマイマに対する罪悪感に縛り続けられているマックス。「つまり,それがあなたの結論なのね。あなたの心は決まっていて,わたしにはどうすることもできない。そういうことなの?」とマックスにストレートに気持ちを伝えるカーラですが・・・。さて,カーラはマックスを過去から立ち直らせることができるのでしょうか。二人の愛が結ばれるのはさらに一年後になるのですが・・・。
 過去の心の傷から立ち直るために互いを必要としてしまったカーラとマックスの葛藤と愛を勝ち取るまでの物語を歌い上げた秀作です。


タグ:イマージュ
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公爵の秘密の世継ぎ [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1471
公爵の秘密の世継ぎ The Spaniard's Pregnant Bride
(天使のウエディング・ベル 1) 2016」
メイシー・イエーツ 中 由美子





 原題は「スペイン人の妊娠した花嫁
 ヒロイン:アレグラ・ヴァレンティ(22歳)/富裕な貴族の令嬢/黒髪,小麦色の肌,黒い大きな瞳/
 ヒーロー:クリスチャン・アコスタ(30歳)/スペイン公爵/黒曜石のような黒い瞳,長身,肩幅が広い/
 予期せぬ妊娠を共通設定にしたメイシー・イエーツのシリーズ第1作です。ちょっとSなヒーローのクリスチャンと,それに負けずに勝ち気な貴族令嬢アレグラのコンビがドタバタを繰り広げます。サンタ・フィレンツェ大公であるラファエル・デサンティスとの結婚を目前に控え,親の言いなりになってきた令嬢アレグラは独身最後の一夜の冒険を仮面舞踏会で実行します。階段から降りてきた悪魔の仮面をかぶった正体を知らない男性と廊下で交渉をもってしまいます。互いに名告らずそれきり別れてしまった二人ですが,一カ月後に妊娠に気づきます。その相手こそ,自分が嫌悪していた兄の親友でスペインの公爵だったクリスチャンであることを知ると,アレグラはパニックに陥ってしまいます。やがて大公との婚約を解消しなければと母親に打ち明けますが,そんな破廉恥な行動をとってしまったアレグラを両親は恥としか思いませんでした。そんな彼女を慰めるのはいつも兄のレンツォでした。しかし相手がクリスチャンだったことはなかなか兄にも言いだせずにいます。嫌悪していた相手との間の子供を産むかどうかはアレグラの決意一つにかかっています。MB版,邦訳版の表紙のアレグラのイメージモデルは,やや顎の張った豊満な女性ですが,令嬢としてはちょっとイメージが違うなと言う気がします。もう少し華奢な美女をイメージしているのですが,ただ気の強さだけは正直に表しているかと思われます。さて,クリスチャンに気づかれてしまったアレグラは,自分の爵位を継ぐ跡継ぎを必要としているという言葉に仕方なくクリスチャンとの結婚を承諾せざるを得ませんでした。婚約を解消した大公の方も早々とアメリカ人の学生ベイリーとの交際が発覚し,しかも相手も妊娠していると言うではありませんが。元々意に沿わない婚約だったにもかかわらず自分と大公との関係はなんだったのかと,そんなに自分は選ばれていなかったのかと自分勝手な気持ちも残っていました。しかも自分より子供が大切,夫婦として愛のない一生を送る気もないとクリスチャンに宣言されてしまい,少なくとも子供が産まれて一年間は親としての務めを果たし,あとは離婚しようとまで言われては,大公と愛のない結婚をしていた方がよかったと後悔の念を抱かざるを得ません。件に究極の選択を迫られたアレグラですが,兄の親友であるクリスチャンに実は憧れに近い気持ちをもっていたこと,そして実はクリスチャンに愛されたいと思っていたことを自分に認めるのはしゃくに障ります。しかもクリスチャンには結婚歴があり,亡妻シルヴィアのことを忘れていないのではないかという恐れも感じていました。それならなんとかしてクリスチャンと自分の関係を修繕できないだろうかという願いも持ち始めるのですが・・・。
 上流社会では未だに女性は家のために犠牲になるという風習があり,大公との婚約もそんな関係だったのですが,傲慢なスペイン人公爵との間に衝動的な一夜の関係を持ってしまったことから次々に変化していくアレグラの状況をうまく生かし,遂に愛を獲得していくまでの顛末を描いた作品です。しかし,どうにもこうにも都合の良すぎる二人の心理変化の説明がお粗末で,良作とは言えない感じの作品です。シリーズ次作が9月に出るようですのでそちらに期待です。


タグ:ロマンス
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尖塔の花嫁 [ヴァイオレット・ウィンズピア]

SHALOCKMEMO1470
尖塔の花嫁 The Man She Married 1982」
ヴァイオレット・ウィンズピア 小林ルミ子




K-479
17.06/¥670/156p

I-2179
11.07/¥690/156p


 原題は「彼女が結婚した男」
 ヒロイン:グレンダ・ハートウェル(?歳)/エディス・ハートウェルの養女/琥珀色の瞳,ウエールズ系の透き通るような白い肌,赤褐色の髪,ハート形の顔/
 ヒーロー:マルロー・アルマン・デアス(30歳)/製鉄会社経営者,ノワール城主/長身,褐色の肌,鋼のような冷たい目,頬に残る火傷の跡,黒い髪と眉/
 許嫁になりすまして傲慢な富豪の元に嫁いでしまったグレンダ。いつ正体が知られるかビクビクしながらも,次第にデアス家の人々の中に溶け込んでいくのですが・・・。マルロー家の尖塔をもつノワール城に連れてこられたグレンダですが,かつての恋人との間に身体関係はなく純潔のままでした。しかし初夜を仄めかされたグレンダは,いかにも恋人との間に深い関係があったかのように話し,さらに夫の火傷の跡が恐ろしいと感じているかのようにも誤解させてしまいます。「十年前のきみは夢見がちの少女だった。でもいまのきみは大人の女性になり,ぼくを怖がっている」というマルロー(マル)の指摘に,「愛しても居ない女性と結婚したんだから」と言い返します。実は結婚式の時からグレンダはベールを挙げず,本来の花嫁になるはずだった亡くなったグレンダが緑色の瞳であり,自分の琥珀色の瞳に周囲の人もマルも気づかないでくれることをひたすら願っていたのです。この一点が本来の花嫁とグレンダを区別する相違点だったからです。亡くなったエディスが,終末の時にグレンダにひたすら言い残したことば,それは亡くした本来の娘の代わりにマルと結婚することでした。10歳で孤児院から引き取られ,金に糸目を付けずに自分を育ててくれたエディスの頼みを無駄にすることはグレンダにはできなかったのです。
 ノワール城にはマルの家族たちが同居しています。姉のジーンと息子のロバート,マルを狙っている従妹のレネと義妹レイチェル。そしてジーンは夫を失った悲しみから立ち直れずに精神を病んでいるのです。グレンダとロバートがお茶を飲んでいるだけでジーンは嫉妬のあまりパニックに陥り強い雨の中を飛びだしてしまいます。使用人たちも含めて大勢の人たちが探しに出てやっとジーンを発見しますが,母を心配したロバートも後を追って飛びだしてしまい,全員がずぶ濡れのまま悲惨な夜を過ごしたのでした。あまりのうろたえぶりにマルは遂に決心し入院先の病院からジーンをパリの療養所に,そしてロバートはイギリスの母方の祖父母の元に預けてしまうのでした。城に残された叔母エロイーズがエディスに似ていることから親しみを感じたグレンダはついに本当のことを告げてしまうのですが,エロイーズには事実を知ったマルの心を翻させるだけの力はないと言われてしまいます。そしてマルが育てられた家業のことや屋根裏部屋で発見した古いアルバムに映っていた少年時代のマルを見て,いつの間にかグレンダはマルを愛してしまっていることに気づきます。はたしてマルはグレンダをゆるし愛してくれるのでしょうか。最後のクライマックスまで盛り上げるウィンズピアの手法は本作でも健在です。オススメの作品。


タグ:イマージュ
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ナニーの身分違いの恋 [サラ M アンダーソン]

SHALOCKMEMO1469
ナニーの身分違いの恋 The Nanny Plan
( Billionaires and Babies 57 ) 2015」
サラ・M・アンダーソン 藤峰みちか





 原題は「ナニーの計画」
 ヒロイン:トリッシュ・ハンター(25歳)/大学院生,慈善団体代表/身長175センチ,長い黒髪,褐色の肌と高い頬骨,意志の強そうな容貌と引き締まった身体,深い茶色の目/
 ヒーロー:ネイト・ロングマイア(28歳)/ロングマイア財団代表/身長190センチ,茶色の目に金色の斑点,カンザスシティで育つ/
 前月は本当に読了冊数が少なくなってしまいました。いろいろ要因はありますが,別ジャンルに嵌まってしまったことが最大の要因でしょう。それと時間不足。どうも5月のように集中して読むことができなかったことが残念です。さて,今月最初の読了本は,7月5日刊の最新作品の一つです。作者サラ・M・アンダーソン邦訳作品は3冊目になりますが,やや年齢的に上のヒロインが登場し等身大の姿がいつも素敵な作品群で,本作もその期待を裏切らない良著でした。シリコンバレー出身の,ということはIT長者の一人ネイト・ロングマイアは「ボーイミリオネア」と呼ばれ,若くして事業を成功させ,すでに第一線からは退いたものの,蓄積した10億ドルの財源をもとに財団を興し,寄付を続けている独身男性です。過去に恋人が兄と浮気をしている場面に遭遇してしまい,以来女性との深い付き合いを一切封印してきました。ところが,その兄夫婦が事故で亡くなってしまい,母親も障害を持つ弟の世話で一粒種の孫を養育することができません。兄はネイトを後見人に指名しており,生後半年の女の子赤ちゃんを預かることになってしまいました。通いの家政婦も子供の世話についてはほとんど知識がなく,数日間睡眠が取れないほど困惑の日々を過ごしています。そこにやって来たのがヒロインのトリッシュ。ネイティヴアメリカンの居留地出身の大学院生のトリッシュですが,どんどん生まれる弟妹,そして次々に変わる母の夫に翻弄され,高校時代から休学を繰り返しながらもやっとのことで大学院2年目を迎えた今はすでに25歳になっています。そして居留地に住む貧困にあえぐ子供たちのための慈善団体を主宰し,学用品等の寄付をし続けてきました。今回多額の寄付をしてもらおうとネイトの講演会に出かけ,目立つ行動をとってネイトの注目を引くことに成功し,ネイトの屋敷での商談をしようと玄関に立ったところです。ところが玄関で彼女を出迎えたのは家政婦のロジータ。ナニーの面接にやって来た女性と勘違いし,さっさと赤ん坊のところに連れて行かれてしまいます。トリッシュにはなんと9人もの弟妹がおり,10代から養育をしない母に替わって一手にきょうだいの世話をしてきており,さらに社会福祉学の学位の持ち主でもあり,ネイトとロジータが赤ん坊のミルクに牛乳を入れていたことを知って,クスリと笑いながらも正しいミルクの作り方から初めてベテランのナニーとしての手腕を遺憾なく発揮するのです。すっかり驚愕しながら,トリッシュに引かれてしまったネイトは,1カ月間,赤ん坊の世話の仕方を教えながらナニーをしてくれと,高額な報酬とトリッシュの主宰する団体への25万ドルの寄付を約束するのでした。その金額に驚くと同時に,ネイトに頼ってしまっては自分の自立の計画ができなくなると警戒心を抱きます。そんなトリッシュの言葉に,普通の女性であれば与えられる金額で満足するところを,自分をしっかりもち妥協しない自立心に尊敬の念と魅力を感じるネイトでした。しかし二人は互いに異性との交際には身長にならざるを得ない過去の経験を持ち,近づく機会が何度も訪れますが,互いの気持ちを尊重し,決して一線を超えようとはしません。そこに読者は爽やかさと愛らしさを感じます。そして約束の1カ月後,二人はそれぞれの道を行くことにするのですが・・・。
 どんな条件を出してもネイトに頼ろうとしない潔いトリッシュの姿勢と,そんなトリッシュの言い分を尊重して決して意に沿わないことをしないネイト。こんな完璧なカップルの姿は,男女としてだけではなく互いの人間としての存在を尊重する素晴らしい姿といって良いでしょう。さて,二人の再会はトリッシュの大学院の卒業式となるのですが・・・。ハートフルな暖かさに包まれた爽やかなイチオシの作品です。


タグ:ディザイア
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シークの孤独 [テレサ・サウスウィック]

SHALOCKMEMO1468
シークの孤独 To Catch a Sheik
( Desert Bride 1 ) 2003」
テレサ・サウスウィック 小池 桂





 原題は「シークをつかまえて」
 ヒロイン:ペネロピ(ペニー)・コリーン・ドイル(22歳)/宮廷の秘書,幼児教育とビジネスの学位所有,アメリカ人/小柄な体,卵形の小さな顔,黒縁の大きな眼鏡,美しくなめらかな肌,腰の辺りまであるブロンドの髪,細いウエス尾,すらりとした脚のライン,ふっくらした唇/
 ヒーロー:ラフィーク・ハッサン(29歳)/エル・ザフィール王国王子,内務兼外務大臣/身長187センチ,黒い瞳,ややウエーブのかかった短い黒髪,高い頬骨,筋の通った鼻,角張った顎,広い肩とがっしりした胸板/
 ハッサン3兄弟のロマンスのミニシリーズ第1作です。8月にこのシリーズの第2作「シークの憂鬱」がディザイア傑作選から出る予定なので,シルエット・ロマンス版のKINDLEを発見したので読み始めました。このすでに配刊が停止しているシルエット・ロマンス・シリーズは多くが再刊されるようになってきていますので,あえてそろえようという気はありませんが,しばらく邦訳から遠ざかっていたテレサ・サウスウィック作品が再び活発に取り上げられるようになってきたので,KINDLE化されているものは少し手に取ってみたいなと考えた次第です。彼女の作品にはとても魅力的なヒロインたちが多いように思っているので,楽しみです。さて,余談ですが,このシリーズで英語タイトルになっているシークの綴りは「Sheikh」ではなく「Sheik」と最後の「h」が省かれています。それがMB版,つまり英国のペーパーバック版の表紙を見ると「h」が入っているようです。まぁこの辺はかなりおおらかなのでしょうね。元々アラビア語の音化を図った英単語でしょうから。
 さて本作ですが,ヒロインのペニーは母親を亡くしその遺言に従って幼稚園の経営を夢見る大学を出たての女性。幼稚園開設には莫大な費用がかかることから,エル・ザフィール王家の条件の良い募集に応募し見事にファラ・ハッサン王女(国王の妹)の秘書に採用されます。ところでこの秘書募集の条件というのがまた一風変わったもの。「不美人であること」というのです。目立たずに自分を特別美しいわけではない並みの容姿だと思っているペニーは「その条件ならわたしにぴったり」と自信をもって応募したのでした。ペニーが高額の給与を望む理由はさらにありました。母親が残してくれた遺産をもとに幼稚園開設の準備をしていたペニーはさらに効率の良い投資があると男性に騙され,婚約までしながらついに裏切られ,お金だけ持ちにげされてしまったのでした。傷心の思いを抱きつつも,母の遺言を果たすために前向きに生きて行こうとエル・ザフィールにやって来たペニー。そこで出会ったのがプレイボーイと名高い王子ラフィークでした。一目でラフィークに引かれるペニーですが,一介のシングルマザーの子供の時分と片や王子のラフィークでは身分の違いが明確で,しかも自分は採用の条件の「不美人」であることに自信をもっている容貌。とても釣り合わないということは分かっていました。ところが・・・。
 相手が王子であろうが,歯に衣を着せずずばりと舌鋒を繰り出してくるペニーにラフィークは新鮮な魅力を感じてしまったのでした。そして王女の秘書としてエル・ザフィールにやって来たペニーをラフィーク付きの秘書として変更してしまったのです。というのも,以前こどもたちのナニーがラフィークに興味を抱きすぎて裸で彼のベッドにいることが発見されてしまい,危うくスキャンダルになるところだったため即刻解雇され,それに替わる秘書は「不美人」であることという風変わりな条件の由来となったのです。現在の年配の秘書は国王に取り上げられてしまい,そのためラフィークには現在秘書がいなくなっていたのでした。不美人を条件に採用されたペニーであればラフィークの仕事に支障がないという理由で,初めは王女付きだったペニーをラフィークは許可を得て自分の秘書に転勤させたのでした。そこでペニーは問われるまでにこれまでの不幸な生い立ちと,幼稚園開設という壮大な夢を語ることになってしまいます。そしてラフィークはそれに感動と強い興味を覚えます。しかも,小柄で子供っぽく見え,不格好な黒縁の眼鏡をかけたペニーを守ってやりたいという気持ちが強くわき上がってきたのです。これまで付き合ってきた女性とはまったく異なるペニーに興味を抱く自分に戸惑うラフィーク。翌日から二人の仕事は始まります。有能な事務能力を示すペニー。そんなペニーを王室一家はあたたかく迎え入れてくれるのでした。国王からも「実に爽やかな女性だ」と褒められてしまいます。ラフィークには兄のファリーク王子と皇太子のカマルがおり,下に妹のジョハラ王女がいます。さらに国王の妹のファラ王女,ファルーク王子の双子の子供たちヌリとハナと一堂に会した晩餐の場で,予定されている慈善舞踏会,その前にアメリカからやってくる大使館員を招いた晩餐会の企画など大きな仕事があり,それらにペニーも参加して手伝うようにと言われるのですが,正式な晩餐会にでられるようなドレスをもっていないことを正直に告げると,ラフィークはパリへの出張にペニーを連れていき,ワードローブが一杯になるほどの衣装一式を購入してしまうのでした。いわば必要経費だからと説得され,断ることができなくなったペニー。そして乗馬に連れ出されたときラフィークから受けたキス。そんなラフィークの行動の真意を測りかねているうちに大きな舞踏会がやって来てしまうのですが・・・。あえて舞踏会用にとパリでラフィークに買ってもらったドレスを選ばずに,裏方に徹しようとするペニー。ラフィークもまたファラ王女からペニーを誘惑しないように釘を刺されているのですが,次第に強くペニーに引かれてしまうのでした。さて,舞踏会でシンデレラさながらのペニーの運命は・・・。
 3兄弟のロマンスの第1作で主な登場人物が出そろいますが,本作を通じてどうやらファラ王女が遠回しで3兄弟に人を愛することを教えていこうとしている雰囲気が感じられます。三男ラフィークがその罠にはまっていく様子がとても自然で,傲慢なラフィークがペニーに言い負かされていくストーリーはとても爽やかです。ロマンスの王道を行くシンデレラストーリー。オススメです。


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愛を宿した個人秘書 [ダニー・コリンズ]

SHALOCKMEMO1467
愛を宿した個人秘書 The Consequence He Must Claim 2016」
ダニー・コリンズ 遠藤康子





 原題は「彼が請求すべき結果」
 ヒロイン:ソーチャ・ケリー(?歳)/個人秘書/ブロンド,華奢な体型,清らかな顔立ち,美しく丸みをおびたヒップ
 ヒーロー:セサル・モンテロ(?歳)/世界的科学技術企業の経営者,スペイン貴族カスティリョン公爵の息子,子爵/青い目,青い瞳(アクアブルーの瞳),黒い眉/
 前作「イタリア富豪の孤独な妻(SHALOCKMEMO1420)」の関連作です。3年間も個人秘書をしてきた雇い主と目眩く一夜を過ごし,婚約を断るつもりで婚約者に会いにいった雇い主のセサルは事故に遭い全身に大火傷を負います。それと同時に事故前の1週間の記憶も失ってしまっていたのです。まぁいろんな状況の変化を説明するのに記憶喪失はとても都合のいい設定ではありますが,1週間分のみの記憶喪失はあり得ないとは言えないまでもかなり特殊な例なのではないでしょうか。そこがまずは引っかかってしまって,なかなか読了までは遠い道のりでしたが,ソーチャがセサルを思う真摯な愛情と,二人の間に結晶が宿っていること,そして育ちが良く美貌に溢れてはいるけれども,意地悪で自分の都合しか考えない愛情の薄いお嬢さんでセサルの婚約者だったディエガの存在などロマンス小説に欠かせない人物設定が揃っている本格的ロマンスであることは,本作の大きな魅力となっています。「あの夜の出来事は必然だった」とソーチャは回想します。個人秘書として一線を画しながらも3年間セサルを愛し続けてきたソーチャ。「でもその結果,この先セサルと結ばれて一生幸せに暮らせるのだと思い込んでしまった」一方で「自分がセサルの結婚相手にふさわしくないことは百も承知していた。」結局自分は「取るに足りない小さな存在なのだ。」一夜を過ごしてセサルの愛を確信したと思っていたソーチャですが,病院に見舞いに行ったソーチャをセサルに会わせないためにディエガは「セサルはとても後悔していたわ。婚約を今にも発表しようというときに,どうしてあんな行為に走ってしまったのかって。それに,あなたを欲望の対象にしてしまったことも,後悔していたと思うわ。それまではとても尊敬していたのにね」とディエガに言われてしまい,当時のセサルの気持ちはソーチャとディエガが入れ替わった立場だったことを確信してはいても,セサルの家族やディエガの家族から見れば,ディエガの言い分が正しいことを否定するだけの確証は,セサルが記憶を失ってしまっている現状では何処にもなかったのです。モンテロ家とフエンテス家の婚姻関係が大きなビジネスのチャンスであることから,セサルが入院している間に着々とディエガとセサルの婚約の話しは進んでしまっていたのでした。未婚の母として地域社会の中で蔑まれてきた母が不憫で,「子供が出来たと打ち明ければ,母は辛い香子を思いだし,再び苦しむだろう。それに子供の父親がセサルだと証明できたところでどうなるのだろう?子供が出来れば結婚してもらえるとでも思っていたの」だろうか。名家としては単なる秘書の子供ではなく家柄にふさわしい名家の令嬢が後継者である息子の相手としてふさわしいと考えるだろうし,最悪産まれてくる子供を取り上げられてしまうかも知れないと思い至ったソーチャは,それ以上ディエガに言い返すことはできないまま,会社を辞めて実家に帰るのでした。それから数ヶ月。無事出産を終えたソーチャを再びあり得なそうな出来事が襲います。当日複数の出産が行われ,救急患者も搬送されてきたためにソーチャの子供と同時間帯に出産した別の女性オクタヴィア・フェランテの子供が取り違えられてしまったのでした。我が子を連れてこられた二人の産婦が互いに我が子ではないと気づいたのです。そしてそのことは検査の結果,女性たちの言い分を確認するために,病院はソーチャの赤ん坊の父親であるセサルに問い合わせしてしまいます。セサルに出産を知らせるつもりのなかったソーチャの知らないところでそんなことが行われていたのでした。病院側はもちろん責任問題に発展することを恐れ,確証を持って赤ん坊を正しい両親の元に返すことが求められており,血液型やDNA検査が必要であることはもっともなことではありますが,産後すぐのソーチャは病院側がそんな対応をとることは思ってもみませんでした。ソーチャはセサルのセカンドネームをとって「エンリケ」と赤ん坊を呼び,アイルランド風に「リッキー」という相性も考えていました。そして父親欄にセサルの名前を記入していたために病院はセサルに連絡を取ったのでした。
 一方怪我が落ち着き結婚式を間近に母親が式の準備に忙しくしているところで,ソーチャが事故後自分の元を勝手に退職してしまったことに腹を立てていました。「ソーチャは秘書として働いていた間,ビジネスライクな姿勢を崩さなかったので,二人の関係が上司と部下の枠を出ることはなかった。」というのがセサルの記憶だったのです。そんな時セサルの携帯電話にロンドンの病院から連絡が入り,赤ん坊取り違えの確証を得たいので血液のサンプルを送ってくれと言われ,「記憶のない1週間の内に子供が出来てしまったのだろうか?」と思い至ります。記憶が戻ったわけではなく類推したセサルはロンドンに飛ぶのでした。セサルと出会った「ソーチャはずっと前から,セサルと愛しあう瞬間を思い描いてきた。それなのに,その記憶をセサルと共有することができないなんて。」という状況に,読者はその哀れさにぐっと引き込まれていきます。第2章のこのロンドンの病院での事務的な看護師の対応やセサルとの再会で動揺するソーチャの気持ちの揺れの対比がすばらしく効いています。セサル自身は愛情の薄い両親の元で育ったために愛する男女の間でどんな会話が必要なのかという見本がなく育ちました。ディエガとの結婚もそんな家同士の結びつきに過ぎないのは分かっていましたが,結婚とはそうしたものだという思いしかなかったのです。赤ん坊に接するソーチャの態度を見て「セサルは赤ん坊を抱いたことがなかった。それにいつか自分に子供が出来ても,育児は妻や使用人がするものだと思っていた。そう,子供というのは誰から面倒を見てくれる存在でしかない」と思っていたセサルはソーチャがエンリケに授乳する様子を見てふと赤ん坊と母親という存在に新しい感情が芽生えつつあることに気づくのでした。かつて有能な秘書のソーチャが一度だけ取り乱したことがありました。アイルランドに住む7歳の姪が数時間行方不明になったと連絡が来たときです。その時のソーチャの愛情の深さにセサルは感動したものでした。セサルがなぜ出産を知らせてくれなかったかと問い詰めると,病院に見舞いに行ってもセサル側の家族もディエガも会わせてくれなかったと訴えられます。「あの日,私たちはその話をしたのよ。あなたは結婚をためらっているとわたしに打ち明けた。だから婚約を破棄することにしたのかと思ったの」とソーチャに打ち明けられて愕然とするセサル。「結婚式は取りやめた」と話すセサルは,ソーチャに「わたしはそんなことをして欲しいなんて言ってないわ。あなたに何かを望んでいるわけではないから心配しないで」とはっきり言い返されてしまいます。「息子のために何かしたいのなら,それはあなた次第よ。でもわたしはシングルマザーとしてエンリケを育てていくわ」と毅然として言うソーチャにセサルはある決意をするのでした。二人の結婚に至るにはなお紆余曲折があるのですが,セサルの事故と1週間分の記憶喪失を埋めるように過去と現在が何度も往復して物語られるのが,充実感をもたらします。そしてセサルがソーチャとエンリケに対して愛に溢れた家庭を築いていけるのだろうかというのが終末までストーリーを引っ張っていくのです。そういう意味で本作はセサルの成長譚というべき作品かも知れません。苦労人ソーチャが世の酸いも甘いも知り,そして秘書と雇い主という関係から夫婦の関係,母親,父親としてエンリケにどう対応していったらよいまで含めて,精神的にセサルよりずっと大人でお姉さん的な存在であり,男性にとってある意味頼りがいのある女性として描かれているのが,女性読者からしたらあまり気持ちのいいものではなくなるのかも知れません。そしてさらにディエガの罠がソーチャに仕掛けられたとき,セサルはソーチャに本物の愛情を感じているのを実感していきます。内容の濃い秀作です。


タグ:ロマンス
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脅迫された花嫁 [ジャクリーン・バード]

SHALOCKMEMO1466
脅迫された花嫁 A Most Passionate Revenge
( Passion 8 ) 2000」
ジャクリーン・バード 漆原 麗




HQB-809
17.06/¥670/208p

HR-200
(地中海の恋人
08.11/¥600/156p
R-1801
02.09/¥672/156p


 原題は「ある最も情熱的な復讐」
 ヒロイン:ロザリン(ローズ)・メイ(29歳)/医師/長身,長い脚,金褐色の髪,鮮やかな緑色の瞳/
 ヒーロー:ハビエル・バルデスピノ(39歳)/スペイン人銀行頭取/身長193センチ,たくましい体,ハンサムな顔立ち,漆黒の髪,焦げ茶色で興奮すると金色に輝く瞳/
 現代のムーア人の略奪婚とでも言えそうなストーリーです。夫ハビエルのツンデレぶりが炸裂することも当世風ですが,かといって激しいだけのロマンスストーリーかというとそんなことはなく,「お医者さんと看護婦さんごっこをしたい?」と最後の方の一句にあるように,コメディタッチの部分が時々顔を出し,それがちょっとおしゃれで可愛らしい雰囲気を一つの底流として忍ばせる結果になり,本作をあたたかい雰囲気に仕上げています。スペイン人の頑固で誇り高い,しかも伝統を大切にする国民性を体現するバルデスピノ一族。「193センチのたくましい体にハンサムな顔立ちに漆黒の髪。焦げ茶色の瞳」のハビエルは10年前,大学入学の資金稼ぎをしていたアルバイトでモデルをしていたロザリン(ローズ)と出会い,互いに目眩く一夜を過ごします。しかし,二人の間を裂いたのはハビエルの親友セバスチャンでした。セバスチャンはハビエルに憧れる妹カティアの気持ちをなんとか達成させたいと,ハビエルとロザリンが結ばれないように,二人の間に互いに疑心を抱かせるように嘘を重ねたのでした。結果,不幸な事故で大火傷を負ったハビエルが入院している間にカティアに看護をさせ,数ヶ月後に二人を夫婦にしてしまいます。一方傷心のロザリンはイギリスに帰って医師になるための大学生活を送りますが,妊娠に気付き,ハビエルに連絡を取ろうとしますが,間にセバスチャンが入り込み,ハビエルが婚約し,結婚間近だと,そしてハビエルが愛しているのはカティアだと嘘をつくのでした。この時電話に出たのがセバスチャンであったことも偶然であり,その偶然を生かしたセバスチャンの陰謀勝ちだったわけですが,電話の内容を聞いたロザリンはそのショックで流産してしまい,以来ハビエルには一切連絡を取ろうとしませんでした。そして見事医者になったロザリンは,医者だった両親と同じように世界中を飛び回り海外医療援助機関の医者として,3年間殆ど休暇も取らずに緊急の治療を必要としている人々に手を差し伸べてきたのでした。そんなロザリンの様子を見ていた上司が3カ月間の休暇をとるよう彼女に命じます。それを待ちかねていたのは,両親亡き後彼女の世話をしてくれた叔父夫婦の娘で従妹のアンでした。アンは恋人ジェイミーとの結婚を許してもらうためにジェイミーの一家の長であり,従兄の男性を叔父夫婦と一緒に迎えて欲しいと頼むのです。その従兄こそ,あのハビエルでした。当初10年前の19歳のころとはまったく落ち着き方も異なる医師としてのロザリンに気づかないでいる様子のハビエルにホッとしたロザリンですが,どうしても自分を捨てて流産の原因となったハビエルに冷たい態度をとってしまうのでした。叔父夫婦やアンになんとかハビエルに誠実に対応して欲しいと頼み込まれ,もう29歳になった自分がいつまでも19歳の時を引きずってはいけないと思い直し,普通の会話を心がけますが・・・。その後,ハビエルやジェイミーの祖父ドン・パブロ・オルテガ・バルデスピノが79歳で心臓が弱く病気がちで旅行ができず,婚約の挨拶にスペインに行くときに独身のアンがジェイミーと行動を共にすることはスペインではゆるされないので,お目付役としてロザリンについて行って欲しいと頼まれたとき,たとえ数日でもハビエルと行動を共にするのは気持ち的に自信がないと考えたロザリンはその要請を断ろうとするのですが,一家の財政的な部分はハビエルがすべて把握しており,自分たちの結婚のためにはハビエルの言うことには逆らえないと必死で頼み込むアンの気持ちに負けて,ロザリンは仕方なく一行について行くことになるのでした。そして,10年前のことを逆に恨んでいるハビエルにより強引にプロポーズされ,祖父がハビエルとロザリンの結婚によって少しでも息を長らえることができると説得されると医師としてその申し出を断ることができなくなり・・・。と急速にストーリーが進展していくのですが,ハビエルの亡妻カティアの存在,そして時々現れるイザベルというハビエルに甘えてくる女性の存在などに嫉妬を感じる自分の気持ちにロザリンは未だにハビエルを愛し続けていることに気づいていくのです。時に冷たく自分の思いどおりに人を動かそうとするハビエルと,時に限りなく優しくなるハビエル,そして激しく欲望をぶつけてくるハビエルと時々に違った姿を見せるハビエルに戸惑うロザリンですが,どんなハビエルにも自分は愛を感じてしまうことにロザリンは幸せを感じていくのでした。そして,ついに祖父のドン・パブロを看取ることになってしまうロザリン。その葬儀のあとのパーティで,ロザリンとハビエルとセバスチャンの秘密が明かされていくのです。
 絶世の美女でありながらそのことに気づいていないロザリンの天然さと愛情深さ,ツンデレながら絶対的なカリスマ性を持ちながら後悔を背負って10年を過ごしてきたハビエルの心の傷を中心テーマとして描き上げたジャクリーン・バードらしいイチオシ作品です。


タグ:ロマンス
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シンデレラの最後の恋 [スカーレット・ウィルソン]

SHALOCKMEMO1465
シンデレラの最後の恋 Holiday with the Millionaire
(愛しの億万長者 1) 2016」
スカーレット・ウィルソン 八坂よしみ





 原題は「億万長者と休日を」
 ヒロイン:ララ・キャラウェイ(26歳)/ナニー/甘い物好き,青い瞳,女らしい曲線,長い脚,ブロンドの巻毛,シェフィールドの出身,かわいらしい,誇り高いが自分に自信がない/
 ヒーロー:ルーベン・タイラー(?歳)/スポーツ・エージェント/アイルランド訛りの英語,筋肉質,豊かで黒っぽい髪,暗褐色の瞳,端整な顔立ち,引き締まった腹部,イートン校出身,両親の不仲がトラウマ
 まさかのダブルブッキング?雇い主家族がバカンスで留守にする間,コナー夫妻の豪邸の管理をする名目で住んでいていいと言われた息子トリスタンのナニーのララ・キャラウェイですが,そこに見知らぬイケメンがやって来ます。ルーベン・タイラー。スポーツエージェントとして世界を飛び回る富豪です。どうやら雇い主夫婦が互いに了承を得ないままどちらにもバカンス中の豪邸に住む許可を出してしまったようです。ララは恋人ジョシュに裏切られ傷心を抱えたまま友人だった夫人アディソンに誘われてナニーを務めることになったのですが,今は住む家を自分を裏切った元恋人とパートナーに乗っ取られてしまい帰る場所もありません。強盗が忍び込んだと思い込んだララは今のソファでくつろぐルーベン・タイラーを後ろから殴り,すぐに警察を呼びます。互いの誤解が解けたのはしばらく経ってからでした。かくも天然なララにルーベンは恋をしてしまいます。しかも,恋人が他の女性と一緒にいるところを見て動転して家を飛びだしてきたばかりのララは満足に着る物さえもってくる暇がありませんでした。夫人のものを借りて着ているに過ぎません。しかもしばらく同居を余儀なくされた相手の男性タイラーはすこぶる付きのイケメン。失恋の痛手から立ち直る暇もなく,すぐに別の男性に気を許してはいけないと,自分に言い聞かせるララでした。ちょっとドタバタ・ラブロマンス的に始まった本作ですが。やがて,ララが昔から夢見ていた豪華地中海クルーズにタイラーも同行することになり,二人のロマンスが次第にクルーズの最中に進展していくことになります。初めに予約していたのとは違う豪華なスイートルームをルーベンが押さえ,しかも着る物さえ,ルーベンがお金を出してくれるという夢のような展開に次第にララの気持ちもほぐれてきます。2週間後には再びナニーとして働き,もうルーベンとは出会うこともないだろうと,気持ちを許すことを拒みつつ,しかしルーベンの幼少期の不幸な生い立ちを聞くにつれ,同情と愛情を感じてしまうララ。そして周囲の人たちを振り向かせる女性としての魅力を振りまきながら,学歴のない自分に自信が持てずに,自分の美しさに気づいていないララに,ルーベンはすっかり心を奪われ,それでもララの将来への夢を捨てずに前向きに行こうとしていく姿に尊敬の念と,それを見守り助けてあげたいという気持ちを抱きながら,欲望にも苛まれていくルーベンの複雑な心境が素晴らしく描かれています。あたたかくちょっぴり愛らしい極上ロマンスです。


タグ:イマージュ
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