So-net無料ブログ作成
検索選択
前の10件 | -

雨のなかの出会い [ジェシカ・スティール]

SHALOCKMEMO1460
雨のなかの出会い His Pretend Mistress 2002」
ジェシカ・スティール 夏木さやか




R-1839
03.01/¥672/156p

K-485
17.07/¥670/156p


 原題は「彼の愛人ごっこ」
 ヒロイン:マロン・ブレイスウェイト(22歳)/「ハーコート・ハウス」管理人/金髪,濃いブルーの目,身長175センチ,豊かな胸,形のいい長い脚/
 ヒーロー:ハリス・クウィリアン(35歳)/「ウォーレン・アンド・テイバー金融会社」社長/身長190センチ位,冷たい灰色の目/
 7月にセレクトで出る予告が出ていましたので,HQロマンス版がKINDLE化されていたのに思わず手が出てしまってクリックした感じでしたが,読んで損はなかった作品でした。ジェシカ・スティールの作品はいつもちょっといぶし銀的魅力に溢れていますね。
 富豪の家「アルモラ・ロッジ」で家政婦をしていたマロンは雇い主のローランド・フィリップスから性的暴行を受けそうになり逃げだします。それを助けてくれたのはハリス・クウィリアンでした。ハリスは「ハーコートハウス」を買い取り改修中でしたが,仕事を失ってしまったマロンが気になり,改修が済むまでの管理人としてマロンを雇うことにします。週末ごとにハウスにやってくるハリスにやがて恋心を抱いてしまうマロン。「幸せだった子供時代を思い出さずにはいられない。惜しみなく愛情を注いでくれた両親,両親が計画していた一人娘の将来。そのすべてが9年前に跡形もなく消えてしまったのだ。」13歳の時,夕食時に知らされた父サイラス・ブレイスウェイトの突然の交通事故死。ショックから立ち直れず精神的に不安定になってしまう母イブリン。それから2年後にアンブローズ・ジェンキンズと再婚した母でしたが,義父の連れ子リーはマロンにしきりと手を出そうとし,それを母に言いだせないままなんとか義父と母の離婚を願うばかりだったのですが,義父に頼り切ってしまっている母を見捨てるわけにの行かず,マロンは高校を中退して働き始めます。マロン20歳のとき,やっと離婚が成立し,マロンと母の二人の生活が始まりますが,ホテルの受付係の仕事だけでは母娘二人の生活はなかなか楽にはなりません。そんな時家政婦募集の求人広告を見て「アルモラ・ロッジ」に仕事を得たのですが,雇い主がとんでもない男性だったとは・・・。つくづく男運のない母娘だと・・・。「ハーコート・ハウス」の修理にやってくる親方のボブ・ミラーや大工のシリル初め,愉快で仕事をきっちりやる人たちに囲まれ,マロンは幸せな毎日を送れるようになり,やっと悪夢からも解放されようとしていたのですが,次第にハリスとの間の関係が深まり,マロンはハリスを愛してしまうのでした。しかしこれまでの男運のなさ,元雇い主から受けた暴行から,男性不信の気持ちがやっと癒やされ始めたマロン。そしてハリスへの深い愛に気づいたマロンでした。そこに現れたビビアン・ホームズという30代の黒っぽい髪をした洗練された美女の存在がマロンを不安に陥れます。ハリスとビビアンの関係は?
 一方ハリスもまたマロンの見事な肢体と正直で純粋な気持ちにすっかり惹かれてしまうのですが,次第にマロンのこれまでの不幸な人生を聴くたびに,ますますマロンを守りたいと思うようになります。「君を想う気持ちに理屈なんて通用しないさ」「わかっていたのは,君と離れた瞬間にもう君の元へ戻りたいと思っていたことだけだ。四六時中」と熱い思いをマロンに告白するまでになんと時が過ぎるのでしょう。どちらも奥手で相手の気持ちをおもんぱかって自分の気持ちを正直に告白できないでいる,愛らしいカップルのロマンスでした。爽やかな読後感を得られる作品です。


タグ:ロマンス
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

ボスとの熱い一夜は秘密 [エリザベス・レイン]

SHALOCKMEMO1459
ボスとの熱い一夜は秘密 A Little Surprise for the Boss 2016」
エリザベス・レイン 川合りりこ





 原題は「ボスへのちょっとした驚き」
 ヒロイン:テリ・ハモンド(30歳)/秘書/あかがね色の輝きをちりばめたブラウンの瞳,真面目そうな眉,そばかすのあるまっすぐな鼻,意志の強そうな顎/
 ヒーロー:バック・モーガン(?歳)/リゾート会社CEO/
 「ナニーの秘密の恋(SHALOCKMEMO1010)」で邦訳デビューしたエリザベス・レインのボス秘書ものです。ユタ州ポーターホロー。リゾート会社「バケット・リスト・エンタープライズ社」のCEOバック・モーガンと,91歳になる老人介護施設に入所している祖母を抱えた秘書テリ・ハモンドのロマンスです。テリは両親亡き後祖母に育てられて自立してきましたがその祖母が老齢の上,認知症を患い,介護施設に入所中。バックはバツイチで娘のクインは9歳ですが身勝手な母親の元で育てられており,あまりかまわれていないため,愛情に飢えています。「バドミントンのシャトルコック」にでもされているかのように両親の元をいったりきたり。どちらの親も愛娘のためにこれ以上時間を割けないらしいのです。バックはテリの兄の親友であり,いわば初恋の相手ですが,兄のスティーヴは軍隊で任務中に撃たれ,命を落としたのでした。短大を卒業したテリをバックは自分の会社に秘書兼オフィスマネージャーとして雇い,祖母の面倒を見れるだけの高給を与えてくれたのでした。親友の命を救えなかったことで負い目を感じていたのでしょう。妹のテリに仕事を与えることで罪滅ぼしをしてきたのでした。それから10年。テリも30歳を迎えています。自然を生かしたアクティビティーを目玉としたバックの会社で,テリはツアーやフライトの予約から従業員の採用と解雇に至るまで業務のすべてを把握し,バックの右腕として会社とバックのことを知り尽くしています。そんな二人がふとしたことで一夜を共にしてしまいます。テリとの情事でめくるめくような感動を体験したバックですがテリの亡き兄にテリを頼むと言われ,「彼女に手を出すのは聖域を汚す行為に等しい」と考えていました。しかしテリはバックとの関係でとことん悩みます。「あの出来事が二人の関係に変化をもたらすのでと信じたがっていた。」しかし「何があろうと,バックが彼女をこれまでと違う目で見てくれることはないのだ。残る問題は一つだけ。これからどうしたらいいのだろう?」今バックの元を去ると言うことは祖母を預けている介護施設への支払いにも支障を来すことが考えられます。そんな時,バックの別れた妻ダイアンから好きな人と再婚するので娘のクインをそちらにやるのでよろしくと言ってきます。すでに何度もバックの愛娘と会っているテリもこの9歳の生意気盛りの女の子をかわいいと思っていました。突然やって来たクインの面倒を見るために新たにベビーシッターを手配するまで,テリに面倒を見てもらおうと考えます。テリに決意させるために祖母の施設費用を初め,古くなったテリの愛車のタイヤ代も出そうとするバックですが,「上司のベッドに引きずり込まれて,それが二人の間に何か変化をもたらすかも知れないと考えるなんて」とテリはその申し出を断ろうとするのですが・・・。そしてさらに2週間後に会社に辞表を出すつもりだと爆弾発言をするのでした。「テリのためを思ってした行為が,どうして彼女を退職に追い込むのか」バックは理解ができませんでした。クインをつれて墓参りに行ったテリはクインの祖母の墓の近くに兄スティーヴの墓があり,二人は二つのお墓に花束を捧げます。クインを連れ出してくれたことをバックに感謝されたテリは「仕事ですから」と割り切った返事をします。予定されていた大きなチャリティーパーティが開かれるまで会社に留まろう。と決意したテリですが,その間,四人の客とキャンプに付き添う予定だったスタッフが急病になり,バックとテリが引率することになってしまいます。何かと美人のテリに手を出そうとする中東出身の男性たち。VIP客でありながら,バックは何くれと客に対して,テリには手を出さないようにと見守り,注意を促すことになってしまうのでした。そして改めてテリが自分の心の中に大きな根を張っていることに気づくのでした。ところが,5日間のキャンプが終わって帰宅してみると祖母が亡くなっていることを知らされ,落胆したテリはそれを告げてくれなかったバックに即刻辞めさせていただきますと強い口調をたたきつけるのでした。
 一年後のクリスマスイブ,母親譲りの栗色の髪と父親そっくりのブルーの瞳の幼子がクイント一緒にベットの中で丸くなっているというエピローグが語られ,ハッピーエンドを迎えます。とてもすっきりしたストーリーと自立心旺盛なテリ,そしてやっと心の平安と愛情溢れる家族に包まれた少女クインの姿がほのぼのとした読後感をもたらしてくれる良著です。


タグ:ディザイア
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

靴のないシンデレラ [ジェニー・ルーカス]

SHALOCKMEMO1458
靴のないシンデレラ A Ring fro Vincenzu's Heir
( One Night With Consequences 19 ) 2016」
ジェニー・ルーカス 萩原ちさと





 原題は「ヴィンチェンツォの後継者のための指輪」
 ヒロイン:スカーレット・レーヴンウッド(24歳)/看護助手/黒いまつげ,緑色の瞳,赤毛,愛らしい顔/
 ヒーロー:ヴィンチェンツォ(ヴィン)・ボルジア(?歳)/航空会社「スカイ・ワールド・エアウェイズ」社長/黒い髪,黒い瞳,ハンサム/
 飛行機が苦手な看護助手スカーレットが,最後は信頼する夫の操縦するセスナ機に乗り込むという終結を迎えるまでの感動の作品です。しかも,富豪であり航空会社の社長でありさらに航空機の設計までするというちょっとオタクっぽいヒーロー,ヴィンチェンツォとしっかりと渡り合うだけの智恵と勇気も持ち合わせているときてはまさにNiceHeroineものの極地というべきでしょう。「一夜の結果」シリーズも19作目を迎えました。
 「君には二つの選択肢しか残されていない」という台詞で始まる冒頭。「この書類にサインをして生まれた赤ん坊を養子にだして僕の妻になる」「あるいは,君は頭がおかしいとドクターに公表させて,君を精神科の病院に送る」と,雇い主から究極の選択を迫られたスカーレット。選択を迫ったのはブレイズ・フォークナーというニューヨークの資産家ですが,スカーレットはブレイズの母親の看護をしていたのでした。「君はずっと僕を拒み続けていた。なのにどこかの馬の骨に妊娠させられ,その男の名前を言おうともしない。ガキを厄介払いしたらすぐう,君を僕のものにする。永遠に。」という脅迫をするようなブレイズの母は看護の甲斐なくなくなってしまい,いくらかの遺産をスカーレットにも残してくれたのでした。男性としての欲望ばかりでなくこの僅かな遺産も手にしようというのがブレイズのもくろみだったのかも知れません。さて,その赤ん坊の父親というのが,本作のヒーロー,ヴィンチェンツォ・ボルジアだったのです。ボルジアという名前どおりイタリア系であることは自明のことですが,イタリア男性のセクシーさはロマンス小説ではお約束の一つ。ギリシアの富豪,南米の農場主とともにイタリア男性といえばロマンス界の三大ヒーロー・パターンといってもいいでしょう。ブレイズのロールスロイスから飛びだしたスカーレットは,そのヴィンチェンツォ(ヴィン)が今,結婚しようとしている「セント・スウィザン大聖堂」に飛び込み,祭壇の前に婚約者とともに立っているヴィンに「雇い主に私たちの赤ちゃんを奪われそうなの!」と叫んで周囲を驚愕させるのです。こんな衝撃的な幕開けで本作はスタートします。ジェニー・ルーカスの作品の中でも秀逸な幕開けではないでしょうか。かつて一だけ関係を持ち翌朝には苗字も告げずに姿を消してしまったスカーレットの膨れた腹部を見た瞬間新郎出会ったヴィンは,彼女の後を付けてきた男性が彼女を連れ去ろうとしたブレイズを追い払います。一方花嫁のアンの方に,若い男性が自分は花嫁の恋人だと叫んだのです。結婚式はすぐ中止となり,ヴィンが事態収拾している間,スカーレットはまた逃げだそうとするのですが・・・。ここでヴィンとスカーレットの出会いが紹介されます。二人は2月末に出会い,失意の内にあったスカーレットもヴィンに誘惑されて純潔を失い,翌朝看護師から連絡をもらったのを機に何も告げずに立ち去ったのでした。その後,一夜を共にした相手,ヴィンチェンツォ・ボルジアの名前をインターネットで調べ,社会的な格差に気づいて赤ん坊を一人で育てていく決意をしたのでした。父とともに逃亡生活を送っていたスカーレットは極端に自分の苗字を隠す傾向にあり,このことが二人の出会いを複雑にした結果でした。そう彼女の父は掏摸,盗みなどの犯罪を繰り返し,犯罪者として逃亡生活を送っていたのです。彼女自身は犯罪に手を染めていたわけではありませんが,父の娘だと知られればたちまち疑われてしまうことはわかりきっています。看護助手として立派に通用する技術をもつ自分と赤ん坊の生活ぐらいはなんとかなると考えていたのでした。しかし雇い主のブレントから子供を養子に出してしまうという話しを聞いて危機感を持ち,ブレイズの元を逃げだすことになったのです。そして今日ヴィンが結婚式を挙げる会場は報道ですでに調べていたため,結婚式に飛び込むという大胆な行動に出たのでした。教会からも逃げだそうしたところにヴィンが戻ってきて,スカーレットの苗字を知っており,さらに父親のことも知っているというのです。ブレントがヴィンに教えたようです。1年半前飛行機事故で亡くなった父は,自分の犯した過ちを償おうと銀行に盗んだ金を返そうとしたのですが,仲間に裏切られ自分だけが犯罪者として告発されてしまったのでした。しかし父の死によって残された賠償金をスカーレットは全額寄付してしまい,自立の道をとってきたのです。そこまで知ったヴィンはスカーレットの高潔さに驚き,彼女を守りたいという気持ちを強くもちます。そしてDNA検査で親子関係が証明されたら結婚しようと提案するのですが・・・。ヴィン自身も悲惨な子供時代を送った経験から,自分の子供とは密に関わろうと強く思っていたのです。「子供は堅実な家庭で愛を受けて育つべきだ。子供を見捨てるようなまねは断じてしない。」と8カ月前のスカーレットとの一夜を改めて思い出します。
 それからの二人の行動がジェットコースターのように激しく移動していきます。靴が必要だとして店に入った後に裏口から逃げだしてボストンからロンドンへ,その途中飛行機がアイルランドに不時着ぎりぎりに着陸し,母の知り合いを頼ってスイスに逃れたスカーレットは靴屋で失敬したヴィンの財布を送り返し,それで足がついてヴィンに見つかり,婚前契約書を不問に付すことで結婚を承諾し,ローマに向かう途中でヴィンの父(実は育ての父親?)の元で結婚式を挙げ・・・と,再び愛を交わした二人が愛を確信しても,欲望と愛を混同してはいけないと自分を戒め,素直になれないヴィンにスカーレットはヴィンの愛を確信できない理由を知ってなんとかしたいと思い・・・。という具合に二人の間の関係の深まりの後ローマにたどり着きます。「彼のおかげでスカーレットは自由な気分になれた。」彼女にとって,「自由」という言葉は「愛」と同じように重要な意味を持つ言葉だったのです。その間,ヴィンはブレイズを破産に追い込む企てをしていたのです。恐ろしいヴィンの復讐の話しにショックで破水してしまい,愛息が誕生します。しかしそのために予定されていた航空会社との契約がフイになり,「ヴィンは生まれて初めて,仕事や権力さえ後回してもいいという気持ちに」なり「妻や産まれたばかりの息子を残してはいけない」と感じたのでした。そして愛息に付けた名前は「セント・ニコラス(サンタクロース)」を意味する「ニコラス」通称「ニコ」。なんとも洒落た成り行きではありませんか。バレンタインデーにできた子供の名前がサンタクロースとは・・・。契約する相手との会合の約束が守れなかったため,その後ヴィンは八面六臂の活躍をします。しかしそれは仕事というより,「仕事より家族を優先する」というこれまでヴィンが最も忌むべきだと考えていた心情の正反対の行動に自分で折り合いを付けるためだったのです。そして幸せな中で暮らす二人に最大の危機が訪れます。ヴィンによって破滅させられたあの男が・・・。「私は彼を愛している。彼も私を愛している」と確信し,しかもそれは自分を含めた家族3人が愛し合っているからだと,自由意志により愛を確かめ合えるからだというスカーレットの願いが,ハッピーエンドをもたらします。そして冒頭に述べたあの場面。飛行機が苦手なスカーレットが勇気を出して夫の操縦するセスナに乗る場面へと繋がっていくのです。繰り返し読みたくなるイチオシの傑作です。邦訳版のスカーレットのイメージは赤毛ではありますがちょっと品のない顔立ちのモデルさんですね。MB版の髪は黒っぽいですがうつむき加減のモデルさんの方が絶対イメージどおりだと思います。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

大富豪と灰かぶりの乙女 [ジュリア・ジェイムズ]

SHALOCKMEMO1457
大富豪と灰かぶりの乙女 A Ciderella for the Greek 2016」
ジュリア・ジェイムズ 麦田あかり





 原題は「ギリシア人のためのシンデレラ」
 ヒロイン:エレン・マウントフォード(20歳代)/私立学校地理教師,ラクロス部顧問,ホートン邸在住/大柄,身長175センチ,丸い眼鏡,まとまりのない髪/
 ヒーロー:マックス・ヴァシリコス(30歳代)/不動産王/身長190センチの長身,オリーブ色の肌,広い肩幅,チャコールグレーの目,黒髪,大理石から切り出したような頬骨と顎のライン/
 継母と継娘に虐められて生きてきたイギリス人女性エレン・マウントフォードがギリシア人不動産王マックス・ヴァシリコスによって女性としての美しさに目覚め,その愛を獲得していくまでの王道派シンデレラストーリーです。ギリシア人富豪とイギリス人女性のカップルを描くのは作者ジュリア・ジェイムズお得意の設定ですが,本作でもそれを踏襲しています。
 さて,ヒロイン,エレンは継母ポーリーンと連れ子のクロエと一緒にイギリスの片田舎ホートン邸に在住していますが,母が交通事故で亡くなり,その数年後継母と継娘が父エドワードと結婚します。ところがこのまま母親子が父の財産を湯水のように使ってしまい,最近病のうちに亡くなってしまいます。継母親子は最後に残されたこのホートン邸まで売り払ってしまおうとしていますが,エレンも館の権利の三分の一をもっており,なんとかして館を守りたいと思っています。ハンプシャー州の内陸部にある田園地帯にあるこのホートン邸は昔からの伝統的な部分と継母親子がやって来てから改修した一流のインテリアデザイナーによる部分とが混在していますが,館を心から愛しているエレンは,なんとかかつての家具などを屋根裏に保存するのが精一杯でした。ギリシア人不動産王マックス・ヴァシリコスは,投資物件を改修しては高額に売り,財を成してきたのですが今回は投資物件としてではなく自分の家としてホートン邸を買い取ろうと考えています。実際に物件を見に来て「屋敷を取り囲む森や庭にも,使われている柔らかな色合いの石や規模や建築様式に,我が家のような親しみを」感じたからです。マックスは非嫡出子として父から認められず,母とともに使用人として育てられた幼少期を過ごします。母亡き後アテネで建築業者となり,5年働いてためた金で最初の不動産を購入し,2年かけて改修して高額で売買し,売った金でさらに不動産を安く買い取ってを繰り返して成長し,数年で今は世界規模の不動産帝王となっていました。昨年まではイギリス人女優タイラー・ブレントリーと交際して浮名を流していましたが,タイラーが離れていったのを機に交際を止め,今は独身のまま誰とも真剣交際をしていませんでした。そんな時,購入しようとしてやって来たホートン邸でまさに真逆の二人の女性と出会います。アッシュブロンドの髪を流行のカットにし,磨き上げた爪にはマニキュア塗って非の打ち所のない化粧をしたハート形の顔とブルーの目と驚くほどほっそりした小柄なクロエ,そして血のつながりのない娘エレン。収まりの悪い髪をポニーテールにしただけで,化粧っ気もなく,大柄で「象のような」体型で野暮ったい服を着た十人並みの器量のエレン。ところが,庭を見回っているときに見かけたランニングウェアを着たエレンは,健康的な輝きと運動着を着て初めて分かる長く素晴らしい脚,特にふくらはぎの形,豊かな胸に女神のような素晴らしい引き締まった造形美の体型をもっているではありませんか。屋敷は絶対に売らないとけんか腰のエレンに興味と欲望を抱いたマックスは,エレンが屋敷にこだわり自分の本来の美しさを犠牲にしていることを指摘します。話しの中でエレンがロンドンの恵まれない子供のためのキャンプを開くことを聞いたマックスは慈善事業の残金を寄付することを持ちかけロンドンの舞踏会にエレンを誘います。断っても5000ポンド,承認されたら1万5000ポンドという破格の寄付金を提示し,ロンドンでエレンを変身させようと密かな謀をするのでした。プロの手によって仕立て上げられたエレンは「ウエストのきゅっと締まった濃いルビー色のシルクのドレスは,形のいい腰にピタリと張り付き,スカートが滝のように足先へと流れている。身頃の上からは首と肩があらわになっていて,両肩は羽根飾りで覆われ,持ち上げられた前髪の廻りも肩と同じ羽で飾られていた。アーチ型の眉の下の目は大きく,濃い黄褐色をしていて,まつげは濃く長い。頬は大理石のようにすべすべし,唇はスモモのような色に塗られてつやつやしている」自分が鏡の中にマックスとともに映っていることにすっかり固まって動けなくなってしまいます。これまで継母と継娘から象のように醜いと散々言われ続け,すっかり自分もそのように思い込まされていたことに改めて気づくのでした。しかも横からマックスから何度も美しい,女神アルテミスのようだと持ち上げられ,それでも継娘クロエと比べると・・・と卑下するエレンにマックスは「クロエと張り合う必要などないと分からないか?彼女には流行の痩せた体で満足させておけばいいんだ。紀美には彼女と全く別の美しさがあるんだから」と自信をもたせてくれます。初めはホートン邸を買い取るための策略だと思っていたエレンですが,それでもシンデレラのように舞踏会に誘い自分を変身させてくれたマックスに感謝の気持ちをもちます。そしていつしかマックスに恋してしまったことに,でも有名女優と浮名を流すような美形で富豪のマックスが自分などを相手にしてはくれないという諦めの気持ちも捨てきれません。ところが銀のスプーンをくわえて生まれてきたわけでなくマックスが自分の自分でたたき上げで富豪になったことを聞き,ますますマックスに惹かれていきます。二人の間になにか将来はあり得ないと思いながらも自分に欲望を抱いている様子を目の中に見たエレンはマックスと体を重ねるのでした。女性としての自信のなさから男性との親しい交わりを諦めていたエレンは初めて女性として目覚め,マックスから離れられなくなります。その後夏休み中の休暇を生かしてマックスに付き添いヘリコプターに搭乗したり,有名レストランで食事をしたり,カリブ海の島のリゾート地の下見,アメリカのローク国立公園でのキャンプ体験などで夢のような時間を一緒に過ごします。しかし帰国したときエレンははっと気づきます。マックスとの時間はあくまでもカボチャの馬車が有効な間だけだと。いずれ自分は捨てられ何もかも失ってしまうのだと。砂漠の国への出張にも誘われたエレンですが,その申し出を断り,エレンはホートン邸に帰っていきます。そしてラクロス部の引率でカナダに研修にやって来た先で,交換研修でカナダで働かないかと誘われたエレンは,マックスから離れ,ホートン邸も手放す決意をします。女性としての自信を与えてくれたマックスを諦めるためと新しい生活を始めるために。
 カナダから帰国してホートン邸に戻ったエレンはマックスが先に来て契約書へのサインを求めていることにこれでもう二度と会うこともないのだとすっかり気落ちしてしまいますが,そのときマックスは思いも書けない提案と申し込みをするのでした。「たった100ポンド」この意味は作品を読んだ人にしか分からないキーワードになります。まさに正統派シンデレラストーリー。さいごはちょっとエピローグがくどいような気もしますが,読んでいて温かい気持ちになれる良作です。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

アンダルシアの休日 [アン・メイザー]

SHALOCKMEMO1456
アンダルシアの休日 Her Guilty Secret 1999」
アン・メイザー 青山有未




HQB-802
17.05/¥670/208p

HR-113
(地中海の恋人
06.03/¥966/378p
R-1829
02.12/¥672/156p


 原題は「彼女の罪な秘密」
 ヒロイン:カッサンドラ(ケイト)・スコット(29歳)/ロンドンの書店員/赤みがかった金髪,すらりとした脚,ブルーの瞳/
 ヒーロー:エンリケ・デ・モントーヤ(34歳)/スペインの企業経営後継者/黒髪,黒い瞳/
 今月2017年5月のHQ文庫のラインナップはかなり豪華でした。HQB-800のキャロル・モーティマーを皮切りに,ノーラ・ロバーツ,アン・メイザー,ヴァイオレット・ウィンズピア,ペニー・ジョーダン,ベティ・ニールズとこれだけ大御所が揃うと,どれを読んでもそれなりの作品ですから,逆になかなかイチオシが付けにくい結果になってしまっています。表紙からするとイチオシはペニー・ジョーダンの「ブラックメイル(SHALOCKMEMO1452)」です。さて,本作はアン・メイザーの1999年の作品。地中海の恋人の関連作です。書店員のカッサンドラ(ケイト)・スコットは,亡夫の兄の突然の訪問を受けます。デ・モントーヤ一族の次期後継者であるエンリケは,「弟があんな悲劇的な死を遂げただけでも,僕が激怒するのは当然だ。あの女がアントニオの名誉も,節操も,未来も,すべてを壊してしまったのだ。もしかしてアントニオは新妻がどんなにふしだらな悪女であるかを知ったために,ハネムーンでイギリス南部に向かう途中事故死したのではないだろうか。」と考えていたのです。10年前スペイン富豪の父のフリオ・デ・モントーヤは次男の反抗も受け入れず,ロンドン留学中の次男がイギリス女性と結婚したいと言ったときどんな犠牲を払ってでも結婚を阻止しようとして,長男のエンリケをロンドンに送り込んだのです。弟に結婚を断念させる唯一の方法は自分が誘惑することだと考えたエンリケ。何も知らずにエンリケに惹かれたケイトとある使命を帯びてやって来たエンリケはあわただしく一夜を過ごし,その後ケイトは弟のアントニオと結婚式を挙げ,初夜を迎えることもなくそのまま事故死してしまったのです。それから10年。ケイトの一人息子デヴィッドを甥だと思い込んでいるエンリケは,自分との共通点に愕然とし,デヴィッドが自分の息子であることを知ります。当時アントニオにはサンチ・デ・ロメロャという婚約者がいたにもかかわらず,その婚約を解消しケイトと式を挙げてしまうのです。その後サンチャは一年後にはスペイン王室の遠縁の男性と結婚し,高齢の夫が亡くなると未亡人としてエンリケに愁波を送り始めたのです。かつてたった一夜を共にしただけのケイトに再開し,弟を死なせた恨みと,それでもケイトに惹かれてしまう自分,そしてデヴィッドという甥の存在と複雑に絡み合う人間関係にエンリケは悩みます。パラシオ(宮殿)と呼ばれるデ・モントーヤ家の住まいに連れてこられたケイトとデヴィッド。デヴィッドがエンリケの子供であることを知られてはならない,これは自分たち親子がこれから暮らしていくための最後の切り札だと考えたケイトですが,「エンリケのキスはカッサンドラの頭の中を空っぽにした。自分でもわけが分からないうちに,心の求めるままに彼を求めていた。」と彼女にとって唯一の男性エンリケへの思慕が10年経っても全く変化していないことに戸惑います。自分のルーツである父方の親戚たちに会うことを楽しみにしていたデヴィッドの喜びぶりをみて,ケイトはデヴィッドをデ・モントーヤ家に預けてイギリスに帰国するのでした。さて二人のその後は・・・。アン・メイザー独特の絡み合った複雑な状況を次第に解きほぐしていくストーリー・テリングの冴えは,本作でも健在です。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

湖の秘密 [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1455
湖の秘密 The Secret Pool 1986」
ベティ・ニールズ 塚田由美子




HQB-805
17.05/¥670/200p

B-127
95.09/¥510/186p
R-0575
87.12/¥550/156p


 原題は「秘密の湖」
 ヒロイン:フランセスカ(フラン)・マニング(25歳)/看護師長/濃いまつげ,はしばみ色の美しい瞳,やさしい口元,美人ではないけれど周囲の人に親しまれる性格,小柄/
 ヒーロー:リトリック・ファン・レイゲン(36歳)/医学博士/長身,広い肩幅,白いものが混じる金髪,女性なら誰しも振り返る美貌/
 美しくも命のはかなさを歌い上げた珠玉の小品。HQ文庫版表紙にはオランダの象徴である色様々なチューリップが咲き乱れる様子が描かれていますが,この存在感と明るさが余計本作読後のはかなさを引き立てるとはなんと皮肉に満ちた表紙をつくったものでしょう。コツワルド給料のコテージホスピタルの看護師長フランセスカ(フラン)・マニングは,12歳の時両親を飛行機事故で亡くし,以来3人の独身の伯母たちと生活してきました。末っ子だったフランの母だけが結婚し,13年後に命をとしてしまったのでした。フランもなんとか家から独立し看護師としてブリストルの大学病院で研修を積み,現在はこの片田舎にある小さいけれど設備の整った病院で看護師長として勤務するところまでキャリアを積んできたのでした。その病院に時々やってくる熱帯病専門医のリトリク・ファン・レイゲン博士というオランダ人の医師の依頼により病院側が白羽の矢を立てたのがフランでした。その依頼とは,博士の幼い娘リサの世話をするというものでした。もはや治癒の見込みのない病に冒され終末医療を施されようとしている可憐な少女に最後の希望を持たせたいという周囲の心遣いから,博士と結婚し,家族として数ヶ月生活して欲しいというとんでもない依頼だったのです。終末医療,それは少しでも患者の苦痛を除き,最期の期間を充実させたいという将来の見込みのない治療法ではありますが,それによって少しでも患者に明るさと希望を与えられるものならと,現在ではごく当たり前に行われるようになったものではありますが,作者が本作を描いた今から30年も前の1986年当時は,それほど一般的ではなかったのではないでしょうか。そういう状況では本作はかなり重要な提言をする作品だったのかも知れません。そのため治療の一部として結婚というセンセーショナルな方法をとらざるを得なかったのかも知れませんし,ロマンス作品であることを考慮すればこの方法もうなづけるものと言えるのかも知れません。
 さて,とりいそぎ結婚してオランダのハールレム(ハーレムともいい,ニューヨークのハーレム地区の名称の元になった町)へと移動します。そこでリサと知り合い,リサもまたフランの優しさに触れて,すっかり打ち解けていくのです。しかし病人や使用人の前でのリトリックの態度と二人きりの時のフランへの態度は全く異なっていました。リトリックもまたリサがいなくなった後にフランと別れることを前提としていたため,過剰に親しくなっては若いフランの今後に問題を残すことを考え敢えて冷たい態度ととって余計な期待を抱かせないようにと言う配慮だったのです。しかし若いフランに取ってみれば自分がこの親子にとって何だったのか,また自分のリトリックへの愛がこの後も続いていくのに,それを諦めてかなければならないことの苦しさとの狭間で苦しみます。生前フランとリサは,家から散歩に出たときに偶然見つけた古い農家の林の中にある美しい湖の畔で過ごす時間が多くありました。静かな湖の畔にたたずみ何も考えずにじっと時をすごし,景色の美しさに浸るというのが二人にとっては大切な時間だったのです。この湖が表題にもなっている「secret pool」です。静かにそして幸福の内にこの世を旅立ったリサを見送った後,フランは再びこの湖を訪れ,リサとの共有した時間に自らの身を浸していくのでした。ところが,ある日,農家に住んでいた婦人にいくら声を掛けても返事がありません。心配になって家の中に入ってみると婦人が倒れているのを見つけます。なかなか帰宅しないフランが心配になったリトリックが使用人の言葉を頼りにフランを探して,この農家を発見します。そしてフランとリトリックとでこの婦人の命を救うのでした。看護師としての本領を久しぶりで発揮することのできたフランは再びイギリスでの仕事に戻ろうと決意します。帰国前にリトリックの大伯母オルダ夫人を訪ねたフランは,「あなた,あの子を愛しているわね,フランセスカ?」とリトリックへの愛を見抜かれてしまうのでした。「はい,彼を愛していますわ,心から」とすぐに言葉が口をついて出てしまいます。この言葉を偶然聞いたリトリックのこの後の行動が,なんとも気が利いていて,ベティ・ニールズの本領発揮というところです。イギリスまで送るという言い訳をしながらリトリックの取った行動とは・・・。最後の大団円がいつもどおり見事な作品でした。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

虹に願いを [マーシー・グレイ]

SHALOCKMEMO1454
虹に願いを Rainbow's Promise 1993」
マーシー・グレイ 関口諒子




HQB-794
17.04/¥670/200p

HR-013
02.10/¥557/156p
L-0635
94.11/¥610/156p


 原題は「虹の約束」
 ヒロイン:リリー・アン・ジョーンズ(24歳)/保険会社「ネズビット・ヒューフネーグル社」社員,ハウスキーパー/身長174センチ/
 ヒーロー:ジョシュア(ジョシュ)・ディレーニー(34歳)/作家/身長190センチあまり,黒髪,美しい顔立ち,鼻筋が通り,頬は引き締まり,顎はがっしり,ふっくらした口元,長く濃いまつげ/
 「心配いらないわ,雨はいつだって止むんだもの。神様がね,もう洪水は起こさないって約束したのよ。だから雨が上がると,約束の印に空に虹を架けてくださるの」という幼いサラの言葉に慰められるリリー・アン。「でも人間が約束するときは虹は見えないみたい」「洪水」とは,もちろん「ノアの箱船」に登場する洪水のことでしょう。地球上にはびこった人間という悪の存在を一度リセットするために無害なワンセットずつの生き物を残してすべてを流し去る雨を降らせた洪水。ノアと園は小舟に乗った生き物たちは神と新たな契約を結びその印を虹という形で残した。という美しいお話しで原題どおりです。
 仕事募集の新聞広告を見てジョシュア・ディレーニーの元を訪れたリリー・アン・ジョーンズは,石と木材でできた広大な農家風の家で身長190センチはあろうと思われる長身の男性に迎えられます。リリー・アン自身も174センチと女性としては長身ですが,ジョシュアを見上げるしかありませんでした。「間違いなくこの人は,今までに私が出会った男の人の中で最高にハンサムだわ」とその外貌に興味を持ちます。そしてそんなハンサムなジョシュアが盲目であることにすぐ気づいたのです。家にはサラとサミュエルという二人の子供がおり,その面倒を見て欲しいというのですが,二人は普段はとても素直で聞き分けのいい子供なのです。しかし前のハウスキーパーだったミルドレッドが亡くなってしまい,その後やって来たリーナもすでに辞めてしまい,家の中はジョシュアがものに躓くほど雑然としていました。リリー・アンは自分の父親がこのジョシュアに定期的にまとまったお金を送っていたことで,なんらかの詐欺か恐喝に逢っているのではと疑ってここにやって来たのでした。しかし盲目で二人の子供を養育している人がそんなことをしているとは・・・。「このまま帰るわけには行かない。今となっては。それは彼の外見に惹かれたからでもある。永遠に見つめていてもいいと思うほどだ。しかし,それだけではない。彼のプライドがなぜか私を不安にするのだ。援助など要らないという拒絶の態度が。」と,リリー・アンはそのままこの家に残ることにしたのでした。サラとサミュエルの養育を巡っては福祉事務所の担当官から忠告を受けつつあるようです。兄夫婦の子供である二人を遺言により引き取りはしたものの,盲目の男性一人で二人を養育することは困難を極めます。なんとか力になりたいとリリー・アンは本来の父のお金をだまし取っている人という疑いを捨て,巻き込まれ的にハウスキーパーを引き受けてしまうのでした。「リリー・アンは彼をじっと見据えた。やっぱりそうだわ。こんなに強そうに見える人だけど,子供たちを失うのが怖いのよ。規則にとらわれすぎたソーシャルワーカーは,ジョシュアの目が見えないことにばかり気を取られてしまうのかも知れない。愛情も家族の絆も,簡単に消え失せるとでも考えているのだろう。私の方は,彼のすべてに魅了されている。父とジョシュとの関係はまだ分からないのだから,それを探ろう。」と自分に言い聞かせて・・・。そしてその関係に疑いをもったのはジョシュの失明の理由を聞いたときからでした。「カンザス州のハイウェイで,あの事故を起こした酔っ払い」のせいだったのです。父が事故を起こしたことを知っていたリリー・アンはその被害者がジョシュアではないかと,あまりの時期や事実の符合に愕然とします。4年前の事故で負った傷のせいでジョシュアが失明した。自分がその事故の加害者の娘だと知ったら,きっとジョシュアは自分を憎むに違いない。ジョシュとその甥姪たちを愛し始めていたリリー・アンは自分が気づいたこの事実をひたすら隠そうとします。そしてなんとかしてジョシュの力になりたいと。失明以来作家としての仕事ができなくなってしまったことを知ったリリー・アンはかつて担当していたデータ入力の仕事を生かして,ジョシュアの作品の口述筆記をすることを申し出ます。「困難を克服しなければ何も試みることはできない」というかつてのイギリスの文豪サミュエル・ジョンソンの言葉を思いだしたジョシュアはリリー・アンの申し出に勇気を振り起こし,時間を見つけて作品の口述を二人三脚で始めるのでした。この間の二人の仕事上だけではない心の交流が,本作の温かな雰囲気を盛り上げていきます。ところが,福祉事務所からやって来たソーシャルワーカーのミセス・ラドロウがとんでもないことをやってのけてしまいます。リリー・アンと父の関係を暴き出し,4年前の事故の加害者の娘であることを調べだしてジョシュアに教えてしまうのです。ジョシュアの妻になり,子供たちとともに家族になることを夢見だしていたリリー・アンにとっては,最悪の事態になります。事実を告げられたジョシュアからの鋭くきつい言葉。リリー・アンは謝罪と家を出ることをなくなく決意しなければなりませんでした。そしてその時に子供サラの言った言葉が冒頭の言葉なのです。さらに続けて「リリー・アンがこのおうちを出て行かないって約束してるときに,空を見たんだけど。だからジョシュおじさんに聴いたの。そうしたら神様からの合図は目に見えないから,人を信じるか信じないかは自分で判断しなきゃいけないんですって」という言葉に読者は泣かされます。「罪を許さず人は憎まず」という心境にジョシュアはたどり着けるのでしょうか。とにかくあたたかい作品です。ヒーローが盲目なので,ヒロインの外見についてはほとんど語られないのですが,心根の美しい女性であることは間違いないですね。
 本作の作家マーシー・グレイはたった4冊の作品を残しただけの作家でほとんどプロフィールは分かりませんが,4冊すべてが翻訳され,そのうち1冊が再版されたものです。いずれ他の作品も再版されることを切に願う次第です。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

ティアラは世継ぎのために [シャロン・ケンドリック]

SHALOCKMEMO1453
ティアラは世継ぎのために Crowned for the Prince's Heir
( One Night With Consequences 20 ) 2016」
シャロン・ケンドリック 東みなみ





 原題は「王子の後継者のために冠を」
 ヒロイン:リサ・ベイリー(?歳)/服飾デザイナー/小柄,豊かな胸,緑色がかった金色の瞳,カールしたキャラメル色の長い髪,ミルクのような肌/
 ヒーロー:ルチアーノ(リュック)・ガブリエル・レオニダス(?歳)/マルドヴィア公国大公/長身,黒髪,ブルー(サファイア色)の目,深いオリーブ色の肌/
 シャロン・ケンドリック20冊目の読了本です。一夜の出来事からのヒーロー,ヒロインの関係を描いていくこのシリーズも,20冊目を迎えました。本作はもう初めからヒーローが大公ですから,後継者問題となることは自明のことですが,ロイヤルものにはヒロインの才能がどのように生かされていくのかという点も見逃せないですね。本作のヒロイン,リサ・ベイリーはドレス・デザイナー。大公妃としてふさわしいのか,国の人々はどのように彼女を受け入れていくのか,恋敵はいないのか,と前途多難な二人の行方にさらに後継者問題を絡め,となかなか難しいテーマに作者のストーリーテリングの手際が問われるところです。デザイナーのリサとリュックが出会い,6週間付き合った時,リュックは自分の身分を明かさずただのリュックでした。妹に赤ん坊が産まれ,ロンドンのベルグレイヴィア地区にあるブティックを経営することで生活費と全く働く意欲のない妹の恋人の二人を養うのは,リサにとって次第に経済的な負担になりつつあります。2年後,このブティックをリュックが訪れます。その時には,リサはリュックが大公であることを知っていました。今やただのリュックから身分違いの大公へと変貌を告げたルチアーノ。「僕に向かって,リサほどずけずけと口をきく者はいない。それにこれほどひるまず,まっすぐに僕を見つめる者もいない。」というリサに逆にルチアーノは魅力を感じていたのでした。現在付き合っている女性がいないから友人の結婚式に同伴して欲しい,というルチアーノの頼みを初めは二の足を踏んだリサでしたが,社交界の有名な人たちが集まる結婚式に自分のデザインした服を着ていくことでいいコマーシャルになるというルチアーノの甘言に乗せられるように,リサはYesを言ってしまいます。「大好きな妹ブリタニーは大学を中退し,かわいいタムシンの母親になった。そしてタムシンの父ジェイソンの言いなりになっている」現状から,リサのブティックはなかなか利益が上がらない状況を改善していかなければなりません。アイルランドの不動産王コナル・デヴリンと産業界の大物の娘アンバー・カーターの結婚式となれば,そこに集まる人たちに会うだけでも自分のデザインを披露することに大きなメリットがあるはずです。「ルチアーノが体しか求めていないのは,最初から分かっていた。個人的な話はできないとはっきり言った理由も,簡単には想像はついた。大公であるルチアーノが外国人に心を許すなどあってはならないからだ。」ということを十分承知の上でリサは「ルチアーノと時間を過ごせば,今度こそ彼を心の中から閉め出せるかも知れない」と期待したのです。「おとぎばなしの中にいるみたいだとリサは思った。すべての女性が夢見る,完璧な披露宴」のパーティで銀色のドレスに身を包み,リサはどれほど自分がリュックに想いを寄せられているかに気づかずにいます。「背が低くて胸が発達しすぎたブルネットの女」と自分を見ていたのです。一方リュックことルチアーノには,近くの島国のプリンセス・ソフィーとの結婚が決まっていました。いわば幼なじみですでに両家では二人が結ばれることは互いの国民も納得していたのでした。結婚披露宴の夜,二人は最後の思い出とばかり結ばれます。そして半年後,思いがけない結果。その結果をリサはルチアーノに告げようとしますが,彼の側近秘書のエレオノーラに連絡を阻まれてしまいます。リサは,自分も着ることのできるおしゃれなマタニティードレスのデザインで業績をアップしようと考えます。たまたまインターネットでリサを検索していたルチアーノは妊娠しているリサを発見してしまうのです。翌朝,ルチアーノは許嫁プリンセス・ソフィーの元を訪れ,その脚でロンドンに飛びます。そして,なぜ知らせてくれなかったと非難しますがエレオノーラが取り次がなかったことを知り,即刻彼女を首にするのでした。シングルマザーになることを決意していたリサに対して,大公家の子供であることを強調しますが,「私があなたを解放してあげようとしているのが分からないの?欲しいとも思わなかった子供を押しつけて,あなたの人生をめちゃめちゃにする気はないの。私が産むのは庶民の子供だもの。あなたはプリンセスである別の女性と結婚すればいいわ」とプリンセスを気遣うのでした。ロンドンに来る前にイゾラヴェルデのプリンセスの元に立ち寄ったことを告げ,婚約解消してきたことを打ち明けるのでしたが,「悪いけれど,わたしはもうあなたのものじゃないわ。婚約を解消したことが,なぜ私と関係あるの?二人は一夜限りの関係を結び望まない結果になってしまっただけよ。」と取り合いません。「自由の身になった今,僕は君と結婚できる。」と仄めかすルチアーノに対して「私が結婚すると,あなたは本気で思っているの?」「嫡出子ではない子供が,大公の位を継げるとは思わなかったわ」とさらに拒否するリサ。庶民から大公妃へ,この落差がリサを躊躇させているのです。そしてルチアーノが自分を愛してくれているという確信を持てないことが・・・。
 ルチアーノがリサを食事に誘うと,マスコミへの影響を考え,弁護士同席で子供の扱いをどうするか決めればいいといい放つリサ。「リサの膨らんだお腹にはマルドヴィア公国じゅうの富を集めたよりももっと貴重なものが育っている。自分が赤ん坊をどれほど欲しいと思っているかを悟り」,彼は動揺します。そしてリサのブティックの所有権をすべて手に入れているという脅しめいたことばや「子供の性別がどうであれ,将来的に王位継承法を見直せばいいだけの話しだ」とマルドヴィアでのリサの生活を示唆するのでした。ルチアーノとともにマルドヴィアに向かったリサ。宮殿内での戸惑うことの多い生活にリサは順応できるのでしょうか。そして気になる妹夫婦と店のこと。これらがすべて解決するときが来るのでしょうか。後半は宮殿内でのあれやこれやが語られます。そしてなによりルチアーノがリサを愛することができるようになるのでしょうか。Crownという原題をティアラという王妃を象徴するものに変えて邦題にしたのは,なかなかいいアイディアだと思います。
 エピローグではローズと名付けられた娘が2歳になっています。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

ブラックメイル [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1452
ブラックメイル Blackmail 1986」
ペニー・ジョーダン 中原もえ




HQB-804
17.05/¥670/208p

C-333
96.11/¥640/156p
R-0371
85.02/¥500/156p


 原題は「恐喝」
 ヒロイン:リー・レイヴァン(22歳)/イギリス全土にチェーン店をもつ高級スーパーマーケットワイン部門の主任バイヤーのアシスタント,婚約者は大銀行家の御曹子,家族はオーストラリア在住,ジルは初恋の人/肩に揺れるつややかな赤褐色の髪,カールした長いまつげ,グリーンの目,整った口元,すらりとした長身/
 ヒーロー:ジル・フレブール・ド・ショ-ヴィニー(31歳)/ワイン醸造主,伯爵,リーの母親とジルの母親は同窓生/黒い髪,額の広い顔/
 互いの母親が学校の同窓生で十代の頃に初恋の相手であったジルの元を訪れることになったリー。6年前のあの頃の気持ちがまだ残っていたなんて!? 再燃する憧れから大人の気持ちへの変化に戸惑いながら,婚約者よりも再会した初恋の人のほうに気持ちが傾いていくキャリア・レディの葛藤を美しいフランスのワイナリーを舞台に繰り広げられるドラマ仕立てのロマンスです。自分をしつこく追いかけてくる女性を諦めさせるためにジルに突然婚約したという芝居を振られたリーですが,驚いている間にあれよあれよと結婚が決まってしまい・・・。でも断れない理由もあったのです。自分の名誉を著しく傷つけてしまう1枚のラブレター。それは男性に縁のなかった自分のことを心配してくれた親友が書いたものだったのですが,その扇情的な内容が今になって自分を傷つけるものになるとは思いも寄りませんでした。しかもそれをジルがもっているとは・・・。それをネタに便宜的な結婚を迫られてしまいジルの申し出を断ることができなくなったのでした。思い起こせばリーはこれまでの人生の中でいくつかのタイミングの悪さで人から誤解を受け,苦労してきたのですが,そこからやっと立ち直りつつあったのです。そして人畜無害の婚約者ドリューとの交際も清いまま推移してきました。ジルへの思いはそれとは真逆の強引さや荒々しさに溢れたものだったのですが,逆にそれが魅力となり,ドリューの魅力のなさにも気づいていくことになってしまいます。ワインの買い付けのために仕事をしている数日間ジルのシャトーで滞在することになりますが,シャトーの家政婦はなにかとリーを目の敵のように扱うのが気になります。後にこの家政婦はとんでもないことをしでかすのです。さて翌々日。リーはパリでジルと結婚式を挙げるという超スピード展開。一方ジルはあの扇情的な手紙をリーが書いたものと誤解し,リーを身持ちの悪い女性とすっかり勘違いしており,そんな女性にふさわしい扱いをと完全にリーを見下しています。帰宅してリーに投げた言葉により思いもかけずに頬に平手を受けたジルは,逆に冷静になり,リーの本当の姿はあの手紙とは違うのでは? と思い始めるようになります。数日後にはリーもジルとのふれあいに違和感を感じなくなり,そして嵐の夜二人は自然の中で結ばれます。「私はジルを愛している」と気づいたリーは,あの夜ジルとの愛の結晶が授かったことを知ります。しかし自分がいかにジルを愛していてもジルは私を愛してはくれない。あくまで期間限定の便宜的結婚という条件は変わっていないのです。「愛される希望は持てないにしろ,時とともにジルの尊敬と信頼は勝ち得られるかも知れない。尊敬と信頼,この二つから案外見事な花が咲くこともある。」と希望を捨てないリー。
 そしていよいよクライマックスとなる大きな出来事がやって来ます。もともと暗闇恐怖症のリーは,例の家政婦と地下のワイン倉庫で在庫の確認をしようと地下室に降りていくのですが,一番奥まった今は使われていない倉庫部屋に入った途端,家政婦によって閉じ込められてしまうのでした。鍵をもっているのは家政婦のみ。ジルを追いかけている未亡人ルイーズの手先の家政婦により,リーは誰からも見捨てられることになってしまうのでしょうか。愛する一粒種とともに・・・。
 勿論,ロマンス作品ですからここはジルが白馬の王子となってリーを助けに駆けつけることになるのですが,分かっていながらも困難の事態にパニックにならずにじっとジルを信じて助けを待つリーの健気さに,読者は愛の深さを感じるのではないでしょうか。ときにこの家政婦の名前がマダム・ル・ボン(善良夫人)というのはなんともフランス風の皮肉が効いていますね。そしてこの事件の背後にはルイーズはもとよりかつての婚約者ドリューも一枚噛んでいたのです。これでもうジルとリーの間のわだかまりは一切消え,「赤ちゃんよりもあなたの愛情のほうをほんの少し余計欲しがっているって言ったら,許してくれるかしら?」という素敵な言葉をリーの口に乗せるのでした。ペニー・ジョーダンらしい骨太で繊細さの溢れる絶品のロマンスが堪能できる作品です。それにしても,文庫版の表紙の,このリーのモデルさんのフランス人形そのものの顔立ちときたら・・・。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

売られた花嫁 [キャロル・ディヴァイン]

SHALOCKMEMO1451
売られた花嫁 Marriage for Sale
( Bridal Bid 3 ) 2000」
キャロル・ディヴァイン 高円寺みなみ





 原題は邦題と同じ
 ヒロイン:レイチェル・ジョンソン(28歳)/アーミシュやフッター派のようなコミュニティの娘/白に近い淡いブロンド,細い巻き毛,小柄,ハート形の顔,蜂蜜色の肌,青緑色の瞳,丸みをおびた豊かな胸,形のいい腰の線/
 ヒーロー:リンカーン(リンク)・モンロー(?歳)/牧場主/長身,赤銅色の肌,まつげも眉も濃い,真っ直ぐな鼻筋,緑色の冷ややかな瞳/
 モンタナ州。コミュニティの娘レイチェルは,自らの市場の競りにかけます。幼い頃から白っぽいブロンドの髪や青緑色の瞳が周囲のひとびとと外形が異なることからいじめの対象となり,コミュニティでは役に立たないと言われ続けてきたレイチェルですが,逆に動物とは自然に接する能力を身に付けることができ,野生馬の調教には馬を傷つけず,道具も使わずに謂わば対話と癒やしの気持ちで手なずけることができる力を身に付けていました。彼女自身が育てたと言える馬を競り落としたハンサムな男性が彼女自身にも同情心をこらえきれなくなり,身請けするつもりで競り落とします。人間自身が競りにかかることに激しい怒りの気持ちを堪えることができなくなったからです。その後彼女には自由にしていいというと,自分を落札した男性とは結婚しなければならないと言い出すのです。それがコミュニティでの競りの決まりだと・・・。仕方なく形だけの式を挙げ馬と一緒に彼女を車に乗せて牧場に連れ帰ったリンクですが,レイチェルは何の仕事をしたら良い?と早速働こうとします。テレビも知らず伝統的な規律に縛られた生活を送ってきたレイチェルに,まずは一般社会での常識と生き方を教えてあげなければ,自由を勝ち取っても誰かに騙されて帰って不幸になってしまうと気づいたリンクは,牧場の人たちと協力してレイチェルの再教育を始めるのでした。
 アメリカという広大な国の中には,いわゆる伝統的なユダヤの教えを忠実に守るアーミッシュの人たちを初めとして,このような閉ざされたコミュニティで伝統的な生活をしている人々が現にたくさんいることは知られています。あの,ピーター・デッカーとリナ・ラザラスが活躍するフェイ・ケラーマンの長編ミステリー・シリーズもこのような正統派ユダヤ教徒のコミュニティからスタートします。いわば現代社会にタイムスリップしたともいうべき純真無垢なレイチェルがどのようにしてリンクへの愛を貫き,愛を獲得していくかという成長譚として,ストーリー・テリングの妙味と涙なしには読み終えられない感動のイチオシ作品です。
 たった4作品しか発表していない佳作作家と思われるキャロル・ディヴァインですが,7月には「プライドと愛と」がディザイアで再刊されます。また,邦題の「売られた花嫁」は,チェコの作曲家スメタナの歌劇のタイトルを意識した邦題なのでしょうか?



タグ:ディザイア
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:
前の10件 | -