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公爵の秘密の世継ぎ [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1471
公爵の秘密の世継ぎ The Spaniard's Pregnant Bride
(天使のウエディング・ベル 1) 2016」
メイシー・イエーツ 中 由美子





 原題は「スペイン人の妊娠した花嫁
 ヒロイン:アレグラ・ヴァレンティ(22歳)/富裕な貴族の令嬢/黒髪,小麦色の肌,黒い大きな瞳/
 ヒーロー:クリスチャン・アコスタ(30歳)/スペイン公爵/黒曜石のような黒い瞳,長身,肩幅が広い/
 予期せぬ妊娠を共通設定にしたメイシー・イエーツのシリーズ第1作です。ちょっとSなヒーローのクリスチャンと,それに負けずに勝ち気な貴族令嬢アレグラのコンビがドタバタを繰り広げます。サンタ・フィレンツェ大公であるラファエル・デサンティスとの結婚を目前に控え,親の言いなりになってきた令嬢アレグラは独身最後の一夜の冒険を仮面舞踏会で実行します。階段から降りてきた悪魔の仮面をかぶった正体を知らない男性と廊下で交渉をもってしまいます。互いに名告らずそれきり別れてしまった二人ですが,一カ月後に妊娠に気づきます。その相手こそ,自分が嫌悪していた兄の親友でスペインの公爵だったクリスチャンであることを知ると,アレグラはパニックに陥ってしまいます。やがて大公との婚約を解消しなければと母親に打ち明けますが,そんな破廉恥な行動をとってしまったアレグラを両親は恥としか思いませんでした。そんな彼女を慰めるのはいつも兄のレンツォでした。しかし相手がクリスチャンだったことはなかなか兄にも言いだせずにいます。嫌悪していた相手との間の子供を産むかどうかはアレグラの決意一つにかかっています。MB版,邦訳版の表紙のアレグラのイメージモデルは,やや顎の張った豊満な女性ですが,令嬢としてはちょっとイメージが違うなと言う気がします。もう少し華奢な美女をイメージしているのですが,ただ気の強さだけは正直に表しているかと思われます。さて,クリスチャンに気づかれてしまったアレグラは,自分の爵位を継ぐ跡継ぎを必要としているという言葉に仕方なくクリスチャンとの結婚を承諾せざるを得ませんでした。婚約を解消した大公の方も早々とアメリカ人の学生ベイリーとの交際が発覚し,しかも相手も妊娠していると言うではありませんが。元々意に沿わない婚約だったにもかかわらず自分と大公との関係はなんだったのかと,そんなに自分は選ばれていなかったのかと自分勝手な気持ちも残っていました。しかも自分より子供が大切,夫婦として愛のない一生を送る気もないとクリスチャンに宣言されてしまい,少なくとも子供が産まれて一年間は親としての務めを果たし,あとは離婚しようとまで言われては,大公と愛のない結婚をしていた方がよかったと後悔の念を抱かざるを得ません。件に究極の選択を迫られたアレグラですが,兄の親友であるクリスチャンに実は憧れに近い気持ちをもっていたこと,そして実はクリスチャンに愛されたいと思っていたことを自分に認めるのはしゃくに障ります。しかもクリスチャンには結婚歴があり,亡妻シルヴィアのことを忘れていないのではないかという恐れも感じていました。それならなんとかしてクリスチャンと自分の関係を修繕できないだろうかという願いも持ち始めるのですが・・・。
 上流社会では未だに女性は家のために犠牲になるという風習があり,大公との婚約もそんな関係だったのですが,傲慢なスペイン人公爵との間に衝動的な一夜の関係を持ってしまったことから次々に変化していくアレグラの状況をうまく生かし,遂に愛を獲得していくまでの顛末を描いた作品です。しかし,どうにもこうにも都合の良すぎる二人の心理変化の説明がお粗末で,良作とは言えない感じの作品です。シリーズ次作が9月に出るようですのでそちらに期待です。


タグ:ロマンス
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尖塔の花嫁 [ヴァイオレット・ウィンズピア]

SHALOCKMEMO1470
尖塔の花嫁 The Man She Married 1982」
ヴァイオレット・ウィンズピア 小林ルミ子




K-479
17.06/¥670/156p

I-2179
11.07/¥690/156p


 原題は「彼女が結婚した男」
 ヒロイン:グレンダ・ハートウェル(?歳)/エディス・ハートウェルの養女/琥珀色の瞳,ウエールズ系の透き通るような白い肌,赤褐色の髪,ハート形の顔/
 ヒーロー:マルロー・アルマン・デアス(30歳)/製鉄会社経営者,ノワール城主/長身,褐色の肌,鋼のような冷たい目,頬に残る火傷の跡,黒い髪と眉/
 許嫁になりすまして傲慢な富豪の元に嫁いでしまったグレンダ。いつ正体が知られるかビクビクしながらも,次第にデアス家の人々の中に溶け込んでいくのですが・・・。マルロー家の尖塔をもつノワール城に連れてこられたグレンダですが,かつての恋人との間に身体関係はなく純潔のままでした。しかし初夜を仄めかされたグレンダは,いかにも恋人との間に深い関係があったかのように話し,さらに夫の火傷の跡が恐ろしいと感じているかのようにも誤解させてしまいます。「十年前のきみは夢見がちの少女だった。でもいまのきみは大人の女性になり,ぼくを怖がっている」というマルロー(マル)の指摘に,「愛しても居ない女性と結婚したんだから」と言い返します。実は結婚式の時からグレンダはベールを挙げず,本来の花嫁になるはずだった亡くなったグレンダが緑色の瞳であり,自分の琥珀色の瞳に周囲の人もマルも気づかないでくれることをひたすら願っていたのです。この一点が本来の花嫁とグレンダを区別する相違点だったからです。亡くなったエディスが,終末の時にグレンダにひたすら言い残したことば,それは亡くした本来の娘の代わりにマルと結婚することでした。10歳で孤児院から引き取られ,金に糸目を付けずに自分を育ててくれたエディスの頼みを無駄にすることはグレンダにはできなかったのです。
 ノワール城にはマルの家族たちが同居しています。姉のジーンと息子のロバート,マルを狙っている従妹のレネと義妹レイチェル。そしてジーンは夫を失った悲しみから立ち直れずに精神を病んでいるのです。グレンダとロバートがお茶を飲んでいるだけでジーンは嫉妬のあまりパニックに陥り強い雨の中を飛びだしてしまいます。使用人たちも含めて大勢の人たちが探しに出てやっとジーンを発見しますが,母を心配したロバートも後を追って飛びだしてしまい,全員がずぶ濡れのまま悲惨な夜を過ごしたのでした。あまりのうろたえぶりにマルは遂に決心し入院先の病院からジーンをパリの療養所に,そしてロバートはイギリスの母方の祖父母の元に預けてしまうのでした。城に残された叔母エロイーズがエディスに似ていることから親しみを感じたグレンダはついに本当のことを告げてしまうのですが,エロイーズには事実を知ったマルの心を翻させるだけの力はないと言われてしまいます。そしてマルが育てられた家業のことや屋根裏部屋で発見した古いアルバムに映っていた少年時代のマルを見て,いつの間にかグレンダはマルを愛してしまっていることに気づきます。はたしてマルはグレンダをゆるし愛してくれるのでしょうか。最後のクライマックスまで盛り上げるウィンズピアの手法は本作でも健在です。オススメの作品。


タグ:イマージュ
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ナニーの身分違いの恋 [サラ M アンダーソン]

SHALOCKMEMO1469
ナニーの身分違いの恋 The Nanny Plan
( Billionaires and Babies 57 ) 2015」
サラ・M・アンダーソン 藤峰みちか





 原題は「ナニーの計画」
 ヒロイン:トリッシュ・ハンター(25歳)/大学院生,慈善団体代表/身長175センチ,長い黒髪,褐色の肌と高い頬骨,意志の強そうな容貌と引き締まった身体,深い茶色の目/
 ヒーロー:ネイト・ロングマイア(28歳)/ロングマイア財団代表/身長190センチ,茶色の目に金色の斑点,カンザスシティで育つ/
 前月は本当に読了冊数が少なくなってしまいました。いろいろ要因はありますが,別ジャンルに嵌まってしまったことが最大の要因でしょう。それと時間不足。どうも5月のように集中して読むことができなかったことが残念です。さて,今月最初の読了本は,7月5日刊の最新作品の一つです。作者サラ・M・アンダーソン邦訳作品は3冊目になりますが,やや年齢的に上のヒロインが登場し等身大の姿がいつも素敵な作品群で,本作もその期待を裏切らない良著でした。シリコンバレー出身の,ということはIT長者の一人ネイト・ロングマイアは「ボーイミリオネア」と呼ばれ,若くして事業を成功させ,すでに第一線からは退いたものの,蓄積した10億ドルの財源をもとに財団を興し,寄付を続けている独身男性です。過去に恋人が兄と浮気をしている場面に遭遇してしまい,以来女性との深い付き合いを一切封印してきました。ところが,その兄夫婦が事故で亡くなってしまい,母親も障害を持つ弟の世話で一粒種の孫を養育することができません。兄はネイトを後見人に指名しており,生後半年の女の子赤ちゃんを預かることになってしまいました。通いの家政婦も子供の世話についてはほとんど知識がなく,数日間睡眠が取れないほど困惑の日々を過ごしています。そこにやって来たのがヒロインのトリッシュ。ネイティヴアメリカンの居留地出身の大学院生のトリッシュですが,どんどん生まれる弟妹,そして次々に変わる母の夫に翻弄され,高校時代から休学を繰り返しながらもやっとのことで大学院2年目を迎えた今はすでに25歳になっています。そして居留地に住む貧困にあえぐ子供たちのための慈善団体を主宰し,学用品等の寄付をし続けてきました。今回多額の寄付をしてもらおうとネイトの講演会に出かけ,目立つ行動をとってネイトの注目を引くことに成功し,ネイトの屋敷での商談をしようと玄関に立ったところです。ところが玄関で彼女を出迎えたのは家政婦のロジータ。ナニーの面接にやって来た女性と勘違いし,さっさと赤ん坊のところに連れて行かれてしまいます。トリッシュにはなんと9人もの弟妹がおり,10代から養育をしない母に替わって一手にきょうだいの世話をしてきており,さらに社会福祉学の学位の持ち主でもあり,ネイトとロジータが赤ん坊のミルクに牛乳を入れていたことを知って,クスリと笑いながらも正しいミルクの作り方から初めてベテランのナニーとしての手腕を遺憾なく発揮するのです。すっかり驚愕しながら,トリッシュに引かれてしまったネイトは,1カ月間,赤ん坊の世話の仕方を教えながらナニーをしてくれと,高額な報酬とトリッシュの主宰する団体への25万ドルの寄付を約束するのでした。その金額に驚くと同時に,ネイトに頼ってしまっては自分の自立の計画ができなくなると警戒心を抱きます。そんなトリッシュの言葉に,普通の女性であれば与えられる金額で満足するところを,自分をしっかりもち妥協しない自立心に尊敬の念と魅力を感じるネイトでした。しかし二人は互いに異性との交際には身長にならざるを得ない過去の経験を持ち,近づく機会が何度も訪れますが,互いの気持ちを尊重し,決して一線を超えようとはしません。そこに読者は爽やかさと愛らしさを感じます。そして約束の1カ月後,二人はそれぞれの道を行くことにするのですが・・・。
 どんな条件を出してもネイトに頼ろうとしない潔いトリッシュの姿勢と,そんなトリッシュの言い分を尊重して決して意に沿わないことをしないネイト。こんな完璧なカップルの姿は,男女としてだけではなく互いの人間としての存在を尊重する素晴らしい姿といって良いでしょう。さて,二人の再会はトリッシュの大学院の卒業式となるのですが・・・。ハートフルな暖かさに包まれた爽やかなイチオシの作品です。


タグ:ディザイア
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シークの孤独 [テレサ・サウスウィック]

SHALOCKMEMO1468
シークの孤独 To Catch a Sheik
( Desert Bride 1 ) 2003」
テレサ・サウスウィック 小池 桂





 原題は「シークをつかまえて」
 ヒロイン:ペネロピ(ペニー)・コリーン・ドイル(22歳)/宮廷の秘書,幼児教育とビジネスの学位所有,アメリカ人/小柄な体,卵形の小さな顔,黒縁の大きな眼鏡,美しくなめらかな肌,腰の辺りまであるブロンドの髪,細いウエス尾,すらりとした脚のライン,ふっくらした唇/
 ヒーロー:ラフィーク・ハッサン(29歳)/エル・ザフィール王国王子,内務兼外務大臣/身長187センチ,黒い瞳,ややウエーブのかかった短い黒髪,高い頬骨,筋の通った鼻,角張った顎,広い肩とがっしりした胸板/
 ハッサン3兄弟のロマンスのミニシリーズ第1作です。8月にこのシリーズの第2作「シークの憂鬱」がディザイア傑作選から出る予定なので,シルエット・ロマンス版のKINDLEを発見したので読み始めました。このすでに配刊が停止しているシルエット・ロマンス・シリーズは多くが再刊されるようになってきていますので,あえてそろえようという気はありませんが,しばらく邦訳から遠ざかっていたテレサ・サウスウィック作品が再び活発に取り上げられるようになってきたので,KINDLE化されているものは少し手に取ってみたいなと考えた次第です。彼女の作品にはとても魅力的なヒロインたちが多いように思っているので,楽しみです。さて,余談ですが,このシリーズで英語タイトルになっているシークの綴りは「Sheikh」ではなく「Sheik」と最後の「h」が省かれています。それがMB版,つまり英国のペーパーバック版の表紙を見ると「h」が入っているようです。まぁこの辺はかなりおおらかなのでしょうね。元々アラビア語の音化を図った英単語でしょうから。
 さて本作ですが,ヒロインのペニーは母親を亡くしその遺言に従って幼稚園の経営を夢見る大学を出たての女性。幼稚園開設には莫大な費用がかかることから,エル・ザフィール王家の条件の良い募集に応募し見事にファラ・ハッサン王女(国王の妹)の秘書に採用されます。ところでこの秘書募集の条件というのがまた一風変わったもの。「不美人であること」というのです。目立たずに自分を特別美しいわけではない並みの容姿だと思っているペニーは「その条件ならわたしにぴったり」と自信をもって応募したのでした。ペニーが高額の給与を望む理由はさらにありました。母親が残してくれた遺産をもとに幼稚園開設の準備をしていたペニーはさらに効率の良い投資があると男性に騙され,婚約までしながらついに裏切られ,お金だけ持ちにげされてしまったのでした。傷心の思いを抱きつつも,母の遺言を果たすために前向きに生きて行こうとエル・ザフィールにやって来たペニー。そこで出会ったのがプレイボーイと名高い王子ラフィークでした。一目でラフィークに引かれるペニーですが,一介のシングルマザーの子供の時分と片や王子のラフィークでは身分の違いが明確で,しかも自分は採用の条件の「不美人」であることに自信をもっている容貌。とても釣り合わないということは分かっていました。ところが・・・。
 相手が王子であろうが,歯に衣を着せずずばりと舌鋒を繰り出してくるペニーにラフィークは新鮮な魅力を感じてしまったのでした。そして王女の秘書としてエル・ザフィールにやって来たペニーをラフィーク付きの秘書として変更してしまったのです。というのも,以前こどもたちのナニーがラフィークに興味を抱きすぎて裸で彼のベッドにいることが発見されてしまい,危うくスキャンダルになるところだったため即刻解雇され,それに替わる秘書は「不美人」であることという風変わりな条件の由来となったのです。現在の年配の秘書は国王に取り上げられてしまい,そのためラフィークには現在秘書がいなくなっていたのでした。不美人を条件に採用されたペニーであればラフィークの仕事に支障がないという理由で,初めは王女付きだったペニーをラフィークは許可を得て自分の秘書に転勤させたのでした。そこでペニーは問われるまでにこれまでの不幸な生い立ちと,幼稚園開設という壮大な夢を語ることになってしまいます。そしてラフィークはそれに感動と強い興味を覚えます。しかも,小柄で子供っぽく見え,不格好な黒縁の眼鏡をかけたペニーを守ってやりたいという気持ちが強くわき上がってきたのです。これまで付き合ってきた女性とはまったく異なるペニーに興味を抱く自分に戸惑うラフィーク。翌日から二人の仕事は始まります。有能な事務能力を示すペニー。そんなペニーを王室一家はあたたかく迎え入れてくれるのでした。国王からも「実に爽やかな女性だ」と褒められてしまいます。ラフィークには兄のファリーク王子と皇太子のカマルがおり,下に妹のジョハラ王女がいます。さらに国王の妹のファラ王女,ファルーク王子の双子の子供たちヌリとハナと一堂に会した晩餐の場で,予定されている慈善舞踏会,その前にアメリカからやってくる大使館員を招いた晩餐会の企画など大きな仕事があり,それらにペニーも参加して手伝うようにと言われるのですが,正式な晩餐会にでられるようなドレスをもっていないことを正直に告げると,ラフィークはパリへの出張にペニーを連れていき,ワードローブが一杯になるほどの衣装一式を購入してしまうのでした。いわば必要経費だからと説得され,断ることができなくなったペニー。そして乗馬に連れ出されたときラフィークから受けたキス。そんなラフィークの行動の真意を測りかねているうちに大きな舞踏会がやって来てしまうのですが・・・。あえて舞踏会用にとパリでラフィークに買ってもらったドレスを選ばずに,裏方に徹しようとするペニー。ラフィークもまたファラ王女からペニーを誘惑しないように釘を刺されているのですが,次第に強くペニーに引かれてしまうのでした。さて,舞踏会でシンデレラさながらのペニーの運命は・・・。
 3兄弟のロマンスの第1作で主な登場人物が出そろいますが,本作を通じてどうやらファラ王女が遠回しで3兄弟に人を愛することを教えていこうとしている雰囲気が感じられます。三男ラフィークがその罠にはまっていく様子がとても自然で,傲慢なラフィークがペニーに言い負かされていくストーリーはとても爽やかです。ロマンスの王道を行くシンデレラストーリー。オススメです。


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愛を宿した個人秘書 [ダニー・コリンズ]

SHALOCKMEMO1467
愛を宿した個人秘書 The Consequence He Must Claim 2016」
ダニー・コリンズ 遠藤康子





 原題は「彼が請求すべき結果」
 ヒロイン:ソーチャ・ケリー(?歳)/個人秘書/ブロンド,華奢な体型,清らかな顔立ち,美しく丸みをおびたヒップ
 ヒーロー:セサル・モンテロ(?歳)/世界的科学技術企業の経営者,スペイン貴族カスティリョン公爵の息子,子爵/青い目,青い瞳(アクアブルーの瞳),黒い眉/
 前作「イタリア富豪の孤独な妻(SHALOCKMEMO1420)」の関連作です。3年間も個人秘書をしてきた雇い主と目眩く一夜を過ごし,婚約を断るつもりで婚約者に会いにいった雇い主のセサルは事故に遭い全身に大火傷を負います。それと同時に事故前の1週間の記憶も失ってしまっていたのです。まぁいろんな状況の変化を説明するのに記憶喪失はとても都合のいい設定ではありますが,1週間分のみの記憶喪失はあり得ないとは言えないまでもかなり特殊な例なのではないでしょうか。そこがまずは引っかかってしまって,なかなか読了までは遠い道のりでしたが,ソーチャがセサルを思う真摯な愛情と,二人の間に結晶が宿っていること,そして育ちが良く美貌に溢れてはいるけれども,意地悪で自分の都合しか考えない愛情の薄いお嬢さんでセサルの婚約者だったディエガの存在などロマンス小説に欠かせない人物設定が揃っている本格的ロマンスであることは,本作の大きな魅力となっています。「あの夜の出来事は必然だった」とソーチャは回想します。個人秘書として一線を画しながらも3年間セサルを愛し続けてきたソーチャ。「でもその結果,この先セサルと結ばれて一生幸せに暮らせるのだと思い込んでしまった」一方で「自分がセサルの結婚相手にふさわしくないことは百も承知していた。」結局自分は「取るに足りない小さな存在なのだ。」一夜を過ごしてセサルの愛を確信したと思っていたソーチャですが,病院に見舞いに行ったソーチャをセサルに会わせないためにディエガは「セサルはとても後悔していたわ。婚約を今にも発表しようというときに,どうしてあんな行為に走ってしまったのかって。それに,あなたを欲望の対象にしてしまったことも,後悔していたと思うわ。それまではとても尊敬していたのにね」とディエガに言われてしまい,当時のセサルの気持ちはソーチャとディエガが入れ替わった立場だったことを確信してはいても,セサルの家族やディエガの家族から見れば,ディエガの言い分が正しいことを否定するだけの確証は,セサルが記憶を失ってしまっている現状では何処にもなかったのです。モンテロ家とフエンテス家の婚姻関係が大きなビジネスのチャンスであることから,セサルが入院している間に着々とディエガとセサルの婚約の話しは進んでしまっていたのでした。未婚の母として地域社会の中で蔑まれてきた母が不憫で,「子供が出来たと打ち明ければ,母は辛い香子を思いだし,再び苦しむだろう。それに子供の父親がセサルだと証明できたところでどうなるのだろう?子供が出来れば結婚してもらえるとでも思っていたの」だろうか。名家としては単なる秘書の子供ではなく家柄にふさわしい名家の令嬢が後継者である息子の相手としてふさわしいと考えるだろうし,最悪産まれてくる子供を取り上げられてしまうかも知れないと思い至ったソーチャは,それ以上ディエガに言い返すことはできないまま,会社を辞めて実家に帰るのでした。それから数ヶ月。無事出産を終えたソーチャを再びあり得なそうな出来事が襲います。当日複数の出産が行われ,救急患者も搬送されてきたためにソーチャの子供と同時間帯に出産した別の女性オクタヴィア・フェランテの子供が取り違えられてしまったのでした。我が子を連れてこられた二人の産婦が互いに我が子ではないと気づいたのです。そしてそのことは検査の結果,女性たちの言い分を確認するために,病院はソーチャの赤ん坊の父親であるセサルに問い合わせしてしまいます。セサルに出産を知らせるつもりのなかったソーチャの知らないところでそんなことが行われていたのでした。病院側はもちろん責任問題に発展することを恐れ,確証を持って赤ん坊を正しい両親の元に返すことが求められており,血液型やDNA検査が必要であることはもっともなことではありますが,産後すぐのソーチャは病院側がそんな対応をとることは思ってもみませんでした。ソーチャはセサルのセカンドネームをとって「エンリケ」と赤ん坊を呼び,アイルランド風に「リッキー」という相性も考えていました。そして父親欄にセサルの名前を記入していたために病院はセサルに連絡を取ったのでした。
 一方怪我が落ち着き結婚式を間近に母親が式の準備に忙しくしているところで,ソーチャが事故後自分の元を勝手に退職してしまったことに腹を立てていました。「ソーチャは秘書として働いていた間,ビジネスライクな姿勢を崩さなかったので,二人の関係が上司と部下の枠を出ることはなかった。」というのがセサルの記憶だったのです。そんな時セサルの携帯電話にロンドンの病院から連絡が入り,赤ん坊取り違えの確証を得たいので血液のサンプルを送ってくれと言われ,「記憶のない1週間の内に子供が出来てしまったのだろうか?」と思い至ります。記憶が戻ったわけではなく類推したセサルはロンドンに飛ぶのでした。セサルと出会った「ソーチャはずっと前から,セサルと愛しあう瞬間を思い描いてきた。それなのに,その記憶をセサルと共有することができないなんて。」という状況に,読者はその哀れさにぐっと引き込まれていきます。第2章のこのロンドンの病院での事務的な看護師の対応やセサルとの再会で動揺するソーチャの気持ちの揺れの対比がすばらしく効いています。セサル自身は愛情の薄い両親の元で育ったために愛する男女の間でどんな会話が必要なのかという見本がなく育ちました。ディエガとの結婚もそんな家同士の結びつきに過ぎないのは分かっていましたが,結婚とはそうしたものだという思いしかなかったのです。赤ん坊に接するソーチャの態度を見て「セサルは赤ん坊を抱いたことがなかった。それにいつか自分に子供が出来ても,育児は妻や使用人がするものだと思っていた。そう,子供というのは誰から面倒を見てくれる存在でしかない」と思っていたセサルはソーチャがエンリケに授乳する様子を見てふと赤ん坊と母親という存在に新しい感情が芽生えつつあることに気づくのでした。かつて有能な秘書のソーチャが一度だけ取り乱したことがありました。アイルランドに住む7歳の姪が数時間行方不明になったと連絡が来たときです。その時のソーチャの愛情の深さにセサルは感動したものでした。セサルがなぜ出産を知らせてくれなかったかと問い詰めると,病院に見舞いに行ってもセサル側の家族もディエガも会わせてくれなかったと訴えられます。「あの日,私たちはその話をしたのよ。あなたは結婚をためらっているとわたしに打ち明けた。だから婚約を破棄することにしたのかと思ったの」とソーチャに打ち明けられて愕然とするセサル。「結婚式は取りやめた」と話すセサルは,ソーチャに「わたしはそんなことをして欲しいなんて言ってないわ。あなたに何かを望んでいるわけではないから心配しないで」とはっきり言い返されてしまいます。「息子のために何かしたいのなら,それはあなた次第よ。でもわたしはシングルマザーとしてエンリケを育てていくわ」と毅然として言うソーチャにセサルはある決意をするのでした。二人の結婚に至るにはなお紆余曲折があるのですが,セサルの事故と1週間分の記憶喪失を埋めるように過去と現在が何度も往復して物語られるのが,充実感をもたらします。そしてセサルがソーチャとエンリケに対して愛に溢れた家庭を築いていけるのだろうかというのが終末までストーリーを引っ張っていくのです。そういう意味で本作はセサルの成長譚というべき作品かも知れません。苦労人ソーチャが世の酸いも甘いも知り,そして秘書と雇い主という関係から夫婦の関係,母親,父親としてエンリケにどう対応していったらよいまで含めて,精神的にセサルよりずっと大人でお姉さん的な存在であり,男性にとってある意味頼りがいのある女性として描かれているのが,女性読者からしたらあまり気持ちのいいものではなくなるのかも知れません。そしてさらにディエガの罠がソーチャに仕掛けられたとき,セサルはソーチャに本物の愛情を感じているのを実感していきます。内容の濃い秀作です。


タグ:ロマンス
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脅迫された花嫁 [ジャクリーン・バード]

SHALOCKMEMO1466
脅迫された花嫁 A Most Passionate Revenge
( Passion 8 ) 2000」
ジャクリーン・バード 漆原 麗




HQB-809
17.06/¥670/208p

HR-200
(地中海の恋人
08.11/¥600/156p
R-1801
02.09/¥672/156p


 原題は「ある最も情熱的な復讐」
 ヒロイン:ロザリン(ローズ)・メイ(29歳)/医師/長身,長い脚,金褐色の髪,鮮やかな緑色の瞳/
 ヒーロー:ハビエル・バルデスピノ(39歳)/スペイン人銀行頭取/身長193センチ,たくましい体,ハンサムな顔立ち,漆黒の髪,焦げ茶色で興奮すると金色に輝く瞳/
 現代のムーア人の略奪婚とでも言えそうなストーリーです。夫ハビエルのツンデレぶりが炸裂することも当世風ですが,かといって激しいだけのロマンスストーリーかというとそんなことはなく,「お医者さんと看護婦さんごっこをしたい?」と最後の方の一句にあるように,コメディタッチの部分が時々顔を出し,それがちょっとおしゃれで可愛らしい雰囲気を一つの底流として忍ばせる結果になり,本作をあたたかい雰囲気に仕上げています。スペイン人の頑固で誇り高い,しかも伝統を大切にする国民性を体現するバルデスピノ一族。「193センチのたくましい体にハンサムな顔立ちに漆黒の髪。焦げ茶色の瞳」のハビエルは10年前,大学入学の資金稼ぎをしていたアルバイトでモデルをしていたロザリン(ローズ)と出会い,互いに目眩く一夜を過ごします。しかし,二人の間を裂いたのはハビエルの親友セバスチャンでした。セバスチャンはハビエルに憧れる妹カティアの気持ちをなんとか達成させたいと,ハビエルとロザリンが結ばれないように,二人の間に互いに疑心を抱かせるように嘘を重ねたのでした。結果,不幸な事故で大火傷を負ったハビエルが入院している間にカティアに看護をさせ,数ヶ月後に二人を夫婦にしてしまいます。一方傷心のロザリンはイギリスに帰って医師になるための大学生活を送りますが,妊娠に気付き,ハビエルに連絡を取ろうとしますが,間にセバスチャンが入り込み,ハビエルが婚約し,結婚間近だと,そしてハビエルが愛しているのはカティアだと嘘をつくのでした。この時電話に出たのがセバスチャンであったことも偶然であり,その偶然を生かしたセバスチャンの陰謀勝ちだったわけですが,電話の内容を聞いたロザリンはそのショックで流産してしまい,以来ハビエルには一切連絡を取ろうとしませんでした。そして見事医者になったロザリンは,医者だった両親と同じように世界中を飛び回り海外医療援助機関の医者として,3年間殆ど休暇も取らずに緊急の治療を必要としている人々に手を差し伸べてきたのでした。そんなロザリンの様子を見ていた上司が3カ月間の休暇をとるよう彼女に命じます。それを待ちかねていたのは,両親亡き後彼女の世話をしてくれた叔父夫婦の娘で従妹のアンでした。アンは恋人ジェイミーとの結婚を許してもらうためにジェイミーの一家の長であり,従兄の男性を叔父夫婦と一緒に迎えて欲しいと頼むのです。その従兄こそ,あのハビエルでした。当初10年前の19歳のころとはまったく落ち着き方も異なる医師としてのロザリンに気づかないでいる様子のハビエルにホッとしたロザリンですが,どうしても自分を捨てて流産の原因となったハビエルに冷たい態度をとってしまうのでした。叔父夫婦やアンになんとかハビエルに誠実に対応して欲しいと頼み込まれ,もう29歳になった自分がいつまでも19歳の時を引きずってはいけないと思い直し,普通の会話を心がけますが・・・。その後,ハビエルやジェイミーの祖父ドン・パブロ・オルテガ・バルデスピノが79歳で心臓が弱く病気がちで旅行ができず,婚約の挨拶にスペインに行くときに独身のアンがジェイミーと行動を共にすることはスペインではゆるされないので,お目付役としてロザリンについて行って欲しいと頼まれたとき,たとえ数日でもハビエルと行動を共にするのは気持ち的に自信がないと考えたロザリンはその要請を断ろうとするのですが,一家の財政的な部分はハビエルがすべて把握しており,自分たちの結婚のためにはハビエルの言うことには逆らえないと必死で頼み込むアンの気持ちに負けて,ロザリンは仕方なく一行について行くことになるのでした。そして,10年前のことを逆に恨んでいるハビエルにより強引にプロポーズされ,祖父がハビエルとロザリンの結婚によって少しでも息を長らえることができると説得されると医師としてその申し出を断ることができなくなり・・・。と急速にストーリーが進展していくのですが,ハビエルの亡妻カティアの存在,そして時々現れるイザベルというハビエルに甘えてくる女性の存在などに嫉妬を感じる自分の気持ちにロザリンは未だにハビエルを愛し続けていることに気づいていくのです。時に冷たく自分の思いどおりに人を動かそうとするハビエルと,時に限りなく優しくなるハビエル,そして激しく欲望をぶつけてくるハビエルと時々に違った姿を見せるハビエルに戸惑うロザリンですが,どんなハビエルにも自分は愛を感じてしまうことにロザリンは幸せを感じていくのでした。そして,ついに祖父のドン・パブロを看取ることになってしまうロザリン。その葬儀のあとのパーティで,ロザリンとハビエルとセバスチャンの秘密が明かされていくのです。
 絶世の美女でありながらそのことに気づいていないロザリンの天然さと愛情深さ,ツンデレながら絶対的なカリスマ性を持ちながら後悔を背負って10年を過ごしてきたハビエルの心の傷を中心テーマとして描き上げたジャクリーン・バードらしいイチオシ作品です。


タグ:ロマンス
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シンデレラの最後の恋 [スカーレット・ウィルソン]

SHALOCKMEMO1465
シンデレラの最後の恋 Holiday with the Millionaire
(愛しの億万長者 1) 2016」
スカーレット・ウィルソン 八坂よしみ





 原題は「億万長者と休日を」
 ヒロイン:ララ・キャラウェイ(26歳)/ナニー/甘い物好き,青い瞳,女らしい曲線,長い脚,ブロンドの巻毛,シェフィールドの出身,かわいらしい,誇り高いが自分に自信がない/
 ヒーロー:ルーベン・タイラー(?歳)/スポーツ・エージェント/アイルランド訛りの英語,筋肉質,豊かで黒っぽい髪,暗褐色の瞳,端整な顔立ち,引き締まった腹部,イートン校出身,両親の不仲がトラウマ
 まさかのダブルブッキング?雇い主家族がバカンスで留守にする間,コナー夫妻の豪邸の管理をする名目で住んでいていいと言われた息子トリスタンのナニーのララ・キャラウェイですが,そこに見知らぬイケメンがやって来ます。ルーベン・タイラー。スポーツエージェントとして世界を飛び回る富豪です。どうやら雇い主夫婦が互いに了承を得ないままどちらにもバカンス中の豪邸に住む許可を出してしまったようです。ララは恋人ジョシュに裏切られ傷心を抱えたまま友人だった夫人アディソンに誘われてナニーを務めることになったのですが,今は住む家を自分を裏切った元恋人とパートナーに乗っ取られてしまい帰る場所もありません。強盗が忍び込んだと思い込んだララは今のソファでくつろぐルーベン・タイラーを後ろから殴り,すぐに警察を呼びます。互いの誤解が解けたのはしばらく経ってからでした。かくも天然なララにルーベンは恋をしてしまいます。しかも,恋人が他の女性と一緒にいるところを見て動転して家を飛びだしてきたばかりのララは満足に着る物さえもってくる暇がありませんでした。夫人のものを借りて着ているに過ぎません。しかもしばらく同居を余儀なくされた相手の男性タイラーはすこぶる付きのイケメン。失恋の痛手から立ち直る暇もなく,すぐに別の男性に気を許してはいけないと,自分に言い聞かせるララでした。ちょっとドタバタ・ラブロマンス的に始まった本作ですが。やがて,ララが昔から夢見ていた豪華地中海クルーズにタイラーも同行することになり,二人のロマンスが次第にクルーズの最中に進展していくことになります。初めに予約していたのとは違う豪華なスイートルームをルーベンが押さえ,しかも着る物さえ,ルーベンがお金を出してくれるという夢のような展開に次第にララの気持ちもほぐれてきます。2週間後には再びナニーとして働き,もうルーベンとは出会うこともないだろうと,気持ちを許すことを拒みつつ,しかしルーベンの幼少期の不幸な生い立ちを聞くにつれ,同情と愛情を感じてしまうララ。そして周囲の人たちを振り向かせる女性としての魅力を振りまきながら,学歴のない自分に自信が持てずに,自分の美しさに気づいていないララに,ルーベンはすっかり心を奪われ,それでもララの将来への夢を捨てずに前向きに行こうとしていく姿に尊敬の念と,それを見守り助けてあげたいという気持ちを抱きながら,欲望にも苛まれていくルーベンの複雑な心境が素晴らしく描かれています。あたたかくちょっぴり愛らしい極上ロマンスです。


タグ:イマージュ
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天使を抱いたシンデレラ [キャット・シールド]

SHALOCKMEMO1464
天使を抱いたシンデレラ Secret Child, Royal Scandal
( Sherdana Royals 3 ) 2016」
キャット・シールド 結城みちる





 原題は「秘密の子供と王室の醜聞」
 ヒロイン:ノエル・デュポン(27歳?)/ウエディングドレス・デザイナー/つややかなダークブラウンの髪,小柄でスレンダー,薄茶色の目(虹彩は緑色をおびている)/
 ヒーロー:クリスティアン・アレッサンドロ(30歳)/シェルダーナ大公国の第三王子/金色の目/
 訳者結城みちるさんの初仕事。ここまでシェルダーナ大公国の後継者を巡る問題も第1作「プリンスの望まれぬ花嫁SHALOCKMEMO1332)」「王家の花嫁の条件(SHALOCKMEMO1415)」と続き,いよいよ三つ子の最後クリスティアンの物語となるわけですが,長男ガブリエルの妻オリヴィア,次男ニックの妻ブルックいずれも苦労の末愛を育んでいきます。妹アリアナもいますが,これは続編が書かれるのでしょうか。また大公位を継ぐのは誰になるのでしょうか。そんな期待を持ちながらじっくりと本作を読みました。
 5年前に事故で右半身に負った火傷の跡が肩や首,頬に残っているクリスティアン。ニックとブルックの結婚式で,花嫁のそばに付き添っている小柄でスレンダーな女性,ノエル・デュポンは高名なウエディングドレス・デザイナーです。彼女は長男の嫁オリヴィアのドレスデザインにも関わっていたのですが,クリスティアンとノエルはかつて関係を持ったことがあるのでした。5年前。シェルダーナに生まれデザイナーになるためにパリに渡り,高名なデザイナーについて学び,それからたった2年で頭角を現してイタリアの王子のウエディングドレスのデザインを手がけ一躍有名になっていたのです。それからは,各界の有名人のドレスデザインを手がけ,今では世界中の女性がノエルのドレスを求めるようになっています。「ノエル・デュポン。アレッサンドロ大公家で最も気まぐれな王子の心をなだめることができた唯一の女性」と評されているノエルは大きな秘密を抱えています。「末っ子のクリスティアンは甘やかされて育ち,その愚行はタブロイド紙を度々賑わせている。」つまり三つ子の中で最もスキャンダラスな王子というわけです。5年前浅はかな行動のせいで事故に巻き込まれ体と心に傷を負い,30歳の今,国のために後継者を作らなければならないという立場に立たされているのです。アレッサンドロ大公家が大公位を維持し続けるには,三人の王子の中で誰かが男子をもうける必要があります。妻の条件はヨーロッパの貴族階級出身かシェルダーナ国籍の女性ちいうものです。クリスティアンの母はヨーロッパの貴族階級の中から長いお妃候補のリストを作っていると妹のアリアナに脅かされ,「自分の妻を探すのに誰の助けも要らないよ」と言い返しはしますが,二人の兄たちが次々と王位を放棄し愛する相手を選んでしまった今,自分に期待が一身に集まっていることも十分承知しています。さらに5年ぶりに出会ったノエルは,よそよそしい振る舞いでクリスティアンをいらだたせています。「わたしはあなたにとって都合のいい女だったのよ。付き合っていた2年間など何の意味もなかったかのように突然」捨てられたと非難され,クリスティアンは友情から始まった二人の関係を,そして信頼できるノエルを,率直さと穏やかな優しさを併せ持つノエルに癒やしと慰めを求めたくなるのでした。「きみが必要なんだ」と打ち明けるクリスティアンに「もう,昔のわたしとは違うのよ」とクリスティアンの前を去って行くノエル。ノエルの秘密とは,クリスティアンとの間の息子マークの存在でした。母親と同居して息子の世話を頼み,仕事に打ち込んできたこの数年,クリスティアンにはいずれ分かってしまうと怖れを抱きつつも,マークに父親の存在を問われたときはいないと答えるしかなかったのです。もう少し成長したらその存在をクリスティアンに告げようと思ってはいましたが,5年前に自分は捨てられたという思いが強く,なかなか機会も決心もないままに現在に至ってしまったのでした。深い金色の目は父親そっくり。顔立ちも父親そっくりです。一目でアレッサンドロ家の血を引いていることは明白な息子。クリスティアンに再会して,マーくその存在が知られるのではと落ち着きません。母親からも反抗期を迎えた孫息子に男親の存在が必要なのよと言われてしまいます。結婚式が行われた日の夜の8時35分突然玄関ドアをノックする音がし,クリスティアンが訪ねてきます。今息子と母は2階に上がったばかり,なんとか息子が見つかる前に追い出さなくては,と終末のデートを約束して追い払おうとした瞬間,マークが2階から降りてきてしまいます。「殿下,わたしの息子マークです」というと「きみの息子だって?僕たちの息子だろう」とすぐに見抜かれてしまったのです。金色の目とダークブラウンの髪というアレッサンドロ一族の特徴を備えたマークを見てクリスティアンはすぐに気づいたのでした。さらにクリスティアンを見返し「ぼくが追い払ってあげる」と母親をかばうマークの大公然とした行動にクリスティアンはすぐにマークの父親だと打ち明けたくなるのですが,必至にそれを止めようとするノエルの様子に,一時は引きます。マークが二階に引っ込んだ後,二人は話し合いを持たざるを得ませんでした。「ぼくはマークの父親として認められたい」「息子にわたしと同じ苦しみを味わって欲しくないわ」と二人の意見は食い違います。ノエルは5年前自分がクリスティアンに捨てられたことを指し,いずれ息子もわたし同様父親から捨てられるかも知れないという疑いを捨てることはできなかったのです。
 それからは,クリスティアンによるマークとノエルへの働きかけが激しくなります。しかしノエルは5年前と同じようにクリスティアンへの愛を忘れたわけではありません。「あの子はきみだけの子供じゃない。アレッサンドロ家の血を引く者だ。シェルダーナ大公家の血をね。」と,ノエルへのプロポーズをするクリスティアン。しかし,ノエルはこれは便宜的な結婚に過ぎないと思い込んでいます。クリスティアンとマーク,ノエルの三人はそれからなにかと一緒に行動するようになります。そしてニューヨークからの大きな仕事の依頼があり,ノエルはマークを連れてニューヨークに行こうとするのですが,マークがグズグズしている間に,クリスティアンがやって来て一緒に行くと言い出すのです。ノエルが仕事をしている日中はぼくがマークの面倒を見ようと・・・。マークもまた初めはクリスティアンに敵対心を持っていたのに何日も一緒に過ごす内にクリスティアンをプリンス・パパと呼び,幼いながらも王子である自分の父親という存在に折り合いを付けるようになっていたのです。クリスティアンからのプロポーズを断り続けているノエル。その気持ちを大きく変えたのは,あの5年前になぜクリスティアンが自分の前から去ってしまったのかと言うことの本当の理由を知ったときでした。当時クリスティアンの仲間たちが,ノエルに対して良からぬ関心を持ち,それを偶然聞いてしまったクリスティアンは,ノエルの才能を生かしてパリに行くことを勧めることによって難を逃れようとしていたのでした。ニューヨークで昔ノエルの評判を落とす記事を書いた女性記者がノエルの才能はクリスティアンの力があったからこそ認められたに過ぎないと言ってきたことに疑問を感じ,クリスティアンを問い詰めて分かったことでした。ついにノエルはクリスティアンのプロポーズを受け入れます。シリーズ最終作であればエピローグで大団円となるところですが,なにか尻切れトンボのような感が否めません。これはきっと続編が書かれる気配です。


タグ:ディザイア
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億万長者とかりそめの愛を [アニー・ウエスト]

SHALOCKMEMO1463
億万長者とかりそめの愛を Seducing His Enemy's Daughter 2015」
アニー・ウエスト 知花 凜





 原題は「敵の娘にそそのかされて」
 ヒロイン:エラ・サンダーソン(26歳)/訪問看護師/180センチに近い身長,すらりと伸びた脚,スリムだがくびれのある理想的な体型/
 ヒーロー:ドナート・サラザール(30代半ば)/企業買収の実業家/彫りの深い端正な顔,すっきりとした唇,長いまつげに縁取られた藍色の目,おおらかな笑い声/
 逃げた姉のフェリシティの身代わりとなったエラ。弟ロブも。亡くなった大伯母ビーがなんとも多大な影響を・・・。「選択の余地はない。おまえもよくわかっているだろう」という父の脅しにも近い言葉。それは「娘を自分の思いどおりにさせたいときの父の常套手段」でした。「わたしは変わった。フェリシティも,ロブも変わった。それなのに父は自分のこどもたちの変化にまったく気づいていない」,こんな父をもった三人きょうだい。しかも「父にとって,真ん中の子供はどうでもいい存在だ」とエラは「良心のかけらもない父親から逃げたい一心で,十代で家を飛びだし」ます。「相手はドナート・サラザールだぞ」と父の脅し文句はさらに続きます。「お前たちが結婚すれば,われわれの仕事上の繋がりは強固になる」「サラザールの援助がなければ,わたしの身は破滅する。それにエラ,わたしは家族との絆も強めたいと思っているんだ」と,手を変え品を変え,サンダーソン家に嫁ぐようエラを説得するのでした。「人生で本当に大切な物はお金では買えない。だが父にそう言い返したところで鼻で笑われるだけだ。」と訪問看護師として平凡な生活を送るエラは諦めの気持ちでした。しかしドナートにあった途端「この人は,(父)レグ・サンダーソンの言いなりになるような男性ではない。」「ドナート・サラザールは我が道を行く男。一匹狼タイプに違いない」そして「美しい」とエラは感じてしまいます。「美の化身」「自然が織りなす風景を連想させる雄々しい美しさ」「危険な匂いがする」男性と父のパーティで出会ったとき,エラはドナートに「君は美しい。怒ると銀色に輝く瞳も,威勢のいい言葉が次々と飛びだす唇も,悩ましげに揺れるヒップも,胸も,そして長い脚も,美しいとしか表現のしようがない」と手放しの賛辞を与えられ,「だって,父の思いつきはどう考えても常軌を逸しているもの」と言い,「フェリシティはあなたとは結婚しないのよ」とあくまで自分より美しいフェリシティにはパートナーをすでに得ていることを理由にドナートの誘いを断ろうとするのですが・・・。「遂に積年の恨みを晴らすときが来た。復讐は蜜の味と言うが,エラというおまけがついた今,その味はより甘美なものとなるだろう」,実は,ドナートがサンダーソン家に近づいたのには理由があったのです。ドナートはエラが去った後,エラの父レグ・サンダーソンが,「それはつまり,気に入ったということか?あのエラを?」とエラの美しさをまったく認めていないことに腹立たしさを覚えます。「尻軽」ではなく「頭の回転が速く,率直でもある」エラを,社交欄の記事で喧伝されている姉フェリシティの影に隠れてその存在すら今日まで知らなかったエラのことをよく知りたいと思うようになっていました。レグに問われるままに「結婚は」「したいと思っている」と答え,「こいつは,自ら進んで悪名高い男の腕の中に娘を押し込もうとしている。」ことにさらに腹を立て,復讐心がさらに高まるのでした。そしてエラへの連絡に携帯番号を聞いたのに,父親であるレグは娘の番号を自分の携帯電話に登録さえしていなかったことを知ります。ドナートの計画はエラとの結婚式を盛大なものにし,突然中止させてサンダーソンの資産を払底させ,騙されたことに気付いたときに復讐が果たされるというものでした。経済的に相手をどん底に突き落とす。その手段としてエラを活用しようとしていたのです。翌朝突然電話を寄越したドナートにサラは二度と会うつもりはないといいます。昨夜帰宅してからインターネットで調べたドナートの過去。「十代の頃に罪を犯して刑務所に入っていた」「彼の魂胆は分かっている。誘惑しようとしているのだ」。しかし次のドナートの言葉はエラを震撼させます。「僕の援助がなければ,きみの父親は破産する。彼は自分が生き残るためにけっこおんばなしを持ちかけてきた。きみが僕と結婚しなければ彼には1セントも入らない。レグ・サンダーソンは今まで築き上げてきたすべてを失い地に落ちるんだ。それでもいいのか?」結局,ドナートの方が1枚も2枚も上手だったのです。そしてシドニーの宿になっているドナートの友人宅に訪ねることになってしまいます。次々に繰り出されるドナートの誘惑。エラもまたドナートが欲しくてたまらなくなります。丁々発止の駆け引きの間,ドナートは純粋にエラに惹かれてしまっている自分に戸惑います。二人は瞬く間に恍惚の中に飛び込んでしまうのでした。そして,互いの生い立ちを話し合うことになります。ドナートはなぜ地味な自分と結婚したがっているのか,という問いがいつも頭から離れないエラ。自分を悪党だといいながらも,インターネットで調べた限り彼のスタッフが誰も辞めたがらないことからして見かけとは違う部分をもっているはずだと,看護師をしている経験から彼の人格を見抜いたエラ。「インターネットの記事を思い起こした。まだ十代だったドナートは40歳の男性を殴り,相手は病院へ運ばれたのだ」「あなたには守りたい人がいたのね?」「ぼくはただのろくでなしだよ」「彼は少年時代に負った傷を抱えて生きている」琴に気付き,エラは大胆で衝動的な行動を取っていきます。「彼とは体だけの関係」と心の中でつぶやきつつ,大粒の涙を流すのでした。この切ない感が溢れた場面が本作の読みどころの一つです。そんな時,レグからエラに電話が入ります。事業を立ち直らせるため,弟が蓄えた資金をつぎ込もうとする父。2週間後も二人はまだ会い続けています。クライミングや買い物など一緒に過ごすうちにどんどんドナートに惹かれていくエラ。そして時々見せる傷ついた心にエラはますます惹かれていきます。看護師としてのやさしさがドナートの心の傷を癒やしたくなっていくようです。ドナートもまた「お金でわたしは買えないわよ」とエラに言われたとき,自分の復讐にエラを利用するという考えに嫌気がさしていくのです。しかし親しくなればなるほど互いに子供時代の触れられたくない話題に触れそうになる微妙な会話に,互いに警戒心を抱いてしまう二人でした。しかし,二人は婚約し,結婚式に向けた準備に取りかかります。姉フェリシティとの電話で,姉がエラに申し訳ないと思っていることを打ち明け,頭のいいエラのようになりたかったといわれたことで姉妹の絆を感じるのでした。一方金銭面でドナートと言い争いになってしまったエラはドナートの過去を問いかけます。本物の恋人としてドナートの存在を感じ始めていたエラはやはり将来のことをどうしても頭に描いてしまうのです。経済的取引によるいわゆる便宜的な動機から始まった二人の関係。でも興味本位ではなくどうしてもドナートの本当の姿を知りたいと思うようになっていたのでした。そして12歳で母を失い,面倒を見てくれていた父親代わりにも死なれ,養護施設を転々としていた十代。そして母に暴力を振るった男性を殴って刑務所に入った過去。刑務所での生活と学んだことで出所後に大成功を収めたこと。そんな十代の頃のドナート少年に同情し,大人になった大胆不敵で情け容赦ない大物実業家を愛してしまったことにエラは幸福感をもっていました。そんなエラとの毎日の生活に「自分の中の何かが変わったのか。」と思い始めるドナート。そんなドナートにエラは自分の父のことを打ち明け始めます。「取引内容を記載した書類があっても,たとえあなたがそれに同意したとしても,決して父を信用しないで」とドナートを気遣うエラは弟の遺産に父が手を付けたことを打ち明けます。それはすでにドナートにとっては自明の事実だったのですが,「レグ・サンダーソンの犯した数々の犯罪が明るみに出たら」エラも傷つくのではないかと心が痛むのでした。今は,目的のためにエラを利用していることは忘れよう。
 ウエディングドレスを取りにいって,着ることのないドレスの素晴らしさにため息をつきながら,「でも,もしも本当に結婚するのなら・・・。もしも本物の恋人同士だったら・・・。」ともしもが頭の中で渦巻くエラ。「わたしは彼に強く惹かれている」ことを,「彼に恋をしている」ことを確信したエラは,これ以上偽りを続けられないと思います。「ドナートはロブを助けると言ってくれた」「お金の不安が消えた今,もうこれ以上演技をする必要はない。」と思う一方「ドナートは結婚を望んでいる?」「彼もわたしのことが好きなの?」と期待を打ち消すことができなくなっていました。その時ドナートにかかってきた電話が聞こえてきて,父を騙そうとしているドナートの企みに気づきます。ついに「きみの父親への復讐だ」と打ち明けるドナート。さぁ,いよいよ大詰めでエラはどちらを信用するのでしょうか。父か愛する人か・・・。
 月初めに読み終わっていた本作ですが,SHALOCKMEMOにまとめる余裕がなくて,今になってしまいました。改めてストーリーを追ってみて本作のスピード感溢れる,そして簡潔に二人の気持ちの動きが描かれた本作を一気読みしていたのだと気づきました。間違いなしのイチオシ作品です。


タグ:ロマンス
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氷の富豪が授けた天使 [アンナ・クリアリー]

SHALOCKMEMO1462
氷の富豪が授けた天使 The Night That Started It All 2013」
アンナ・クリアリー 土屋 恵





 原題は「すべてが始まった夜」
 ヒロイン:シャリ・レイシー(28歳)/絵本作家/グリーンの瞳,ブロンド,なめらかな脚/
 ヒーロー:リュック・バレンティン(36歳)/「ダビオン社」重役/長身,黒い瞳/
 2011年7月に「禁じられたスクープ」が邦訳されてから2016年4月に「侯爵に言えない秘密(SHALOCKMEMO1226)2009」まで4年半邦訳のなかったアンナ・クリアリーですが,ここのところ立て続けに邦訳が出ています。シリーズものや短編作品が多い中で非シリーズ作となっているようです。
 魅力的なヒロインが登場する彼女の作品ですが,本作のヒロインはシャリ・レイシー。ヒーローやヒロインの名前のリストを作ろうと考えたときもありますが,なかなか時間が取れずにいます。そのなかでも,シャリというヒロイン名はあまりないのではないでしょうか。オーストラリア作家のアンナ・クリアリーですが,豪州ではありふれた名前なのでしょうか。どちらかというとイギリスのビクトリア朝風の名前がかいま見られる豪州ですが,「シャリ」って有名人いたのかな?あるパーティで出会ったヒーロー,リュックとシャリ。一夜の関係を結びますが,後で知った事実,リュックはシャリの元婚約者の従兄弟だった。という設定です。シャリの人間性を疑いつつもシャリの魅力に嵌まってしまうリュックとのロマンスというねじれ現象がどう解決されるのかを描いているので「氷の富豪が授けた天使」という邦題が作品内容を見事に言い表していると思いました。会社の金を使い込んで逃亡したレミー・シェニエールはシャリの兄ニールの妻エイミーと双子のきょうだい。そしてリュックはエイミーとレミーのいとこ(男女が交じっているため,きょうだい,いとこをひらがな表記),双子の母親マリスとリュックの母親ラレーヌは姉妹の関係ですが,ちょっと関係が入り組んでいるので,混乱してしまいがちです。リュックにはマノンという恋人がいたのですが,妊娠に対する拒絶反応から二人は別れてしまいました。パリの本社からシドニー支社にやってきたリュックはレミーの不在を知らされます。数日間連絡が取れないと言います。会社の口座の残高不足を説明させ,横領の事実を突きつけようと勢い込んでやって来たのです。レミーのアパートを訪ねてみるとメイドだというシャリが応対しますが,体よく追い払われてしまいます。リュック自身,かつてスキャンダル記事に悩まされたことがあるのですが,今回の社員の使い込みによって会社に与える損害は金額に留まらずイメージダウンに繋がってしまうことは必死です。できれば本格的捜査が入る前に問題解決を図りたいところです。一方,昨日レミーに暴力を振るわれたシャリは顔に青あざができてしまっています。関係が悪化して豪勢なアパートから引っ越す準備をしていた矢先の出来事だったのでレミーとの決別を決意していたシャリでした。しかし兄ニールの40歳の誕生日パーティには何をさておいても参加しなければなりません。絵本作家のシャリはアザを隠すために右の頬骨の上に蛙の絵を描くという奇抜な格好でパーティに参加します。100人を超える友人たちが集まっているニールとエミリーの屋敷のパーティでリュックとシャリは出会います。昨日のアパートではインターホンの応対だけだったため顔は合わせていません。エミリーにレミーが来ないと言うのも辛そうなシャリの様子をエミリーは心配そうに見守ります。シャリを見かけたリュックはゾクゾクするような興奮が背筋を走り抜けます。魅力的な瞳は男の心を奪う瞳だと興奮を覚えてしまうリュック。視線を感じたシャリですが,高級そうなスーツに黒いシルクシャツ,長身で均整の取れた体をしている見知らぬ男性が兄ニールのそばに立っていて,自分に視線を向けているのです。兄に誕生日のお祝いの言葉をかけると,シャリはリュックに紹介されて驚くのでした。自分の婚約者だったレミーのいとこ,昨日アパートを訪ねてきた男性だと気づいたのです。かつて女性とのなんらかのスキャンダルをきいたことを思いだしたシャリは,リュックにエミリーとは似ていないのねといいますが,自分はシェニエール一族ではなくバレンティン一族だと説明されます。魅力的なリュックの深い声と唇につい引き寄せられそうになる自分に戸惑うシャリ。シャリの奇抜な格好を見たリュックはシャリを「刺激的で,セクシーで,遊び心のある女性」と表面的な判断をしてしまいます。しかし「鈍感で,内気で,退屈な女性」とシャリは自分を評したのです。外のテラスに誘われ,二人は欲望にさそわれるままに近くのボートハウスで体を重ねるのでした。その時使用したのはシャリのバッグの中に入っていた小さな包み。それは何年か前に路上で渡されたものですでに使用期限を過ぎていたものだったのです。たった一夜の出来事がその後の二人の運命をすっかり変えてしまいます。一度家に戻って翌朝パリに戻るというリュックの滞在先のホテルで逢おうとしていたとき,リュックはシャリが昨日アパートにいた女性だということに気づいたのでした。シャリとレミーとの関係を知ったリュックはすっかりシャリへの不信感にとらわれてしまいます。リュックに非難されてシャリはパーティ会場から逃げだし,アパートに逃げ帰ります。アパートの前で待ち伏せしていたリュックに化粧落として青あざに気づかれたシャリはレミーに暴力を振るわれたことを打ち明けざるを得なくなりました。数週間後,レミーが事故で命を亡くしたことを兄に告げられたシャリは,胃の中のものを戻してしまいます。双子のきょうだいを亡くしたエミリーを気遣うシャリ。しかしシャリはレミーの死を悼む気持ちはなく,反ってリュックへの激しい感情は止められずにいるんのでした。一方パリに戻ったリュックもレミーの事故死の報に接しますが,シャリへの心の揺らぎは消えずに残っていたのです。レミーの告別式でリュックとシャリは再会します。10歳の時に母親の葬儀で葬儀に対してトラウマを負って以来,歳の離れた兄が親代わりとしてシャリを支えてきました。兄が妊娠している妻を気遣いレミーの葬儀にはシャリに参加して欲しいと頼まれたのを断ることができなかったのです。そして葬儀の最中に気分が悪くなりあわてて外へ走り出て戻しているときリュックが追いかけてきます。レミーの母親マリスを始め,婚約者の死を悼んでいると周囲の人たちは同情してくれたのですが,リュックに連れ出されてリッツホテルに連れて行かれます。車中でのキスは二人の欲望の再燃を告げる結果となりました。「はっきりさせておきたいの。シドニーでのことはすべて,一夜限りのことだった,と。お互いに,すべて忘れるべきだと思う」とシャリはリュックを敬遠するのですが,いつのまにかリュックはスイートルームを取り,そこで再び二人の熱い思いは燃え上がるのでした。翌朝再び吐き気を催したシャリはさすがに自分の体の変調に気付き始めていました。そしてキットでの検査で陽性が出たことに呆然としてしまいます。「私は子供を産みたいの?」と疑問形。シングルマザーになる覚悟などもなく,経済的不安も大きい状態で自分の母親が生活を維持するのに大きな苦労をしていたことが思い出されます。リュックに伝えるべきだろうか・・・?絵本作家であるシャリにとってパリの美術館巡りは大きな経験でした。2日間の滞在の予定を変更し,リッツでの1週間の滞在という夢のような日常は,いずれ妊娠の発覚とともに消え去るのだろうと予想されます。「不安は増すばかりだった。今でこそリュックは好意を抱いてくれている。でも妊娠を打ち明けたらどうなるだろう?たちまち手のひらを返したように冷たくなるかも知れない。」と甘い考えをもってしまうシャリですが,読者はここできっと妊娠の事実を知ればリュックはレミーの子供かと疑いシャリを非難するだろうと想像してしまいます。それより,シャリは自分とリュックの将来に期待を持ってしまっており,リュックのかつての恋人マノンのことなどをのんびりと聞いているのです。リュックの母親ラレーヌのもとに連れて行かれて,周囲はレミーの婚約者としてシャリを見ていることに気付き,リュックの子供を身ごもっている自分がいたたまれなくなってしまいます。そしてサイドボードに置かれた壺を見た途端,シャリはレミーに受けた暴行のフラッシュバックに襲われ気を失ってしまうのでした。医師の診察を受けるまでもなくリュックの母親に妊娠を気づかれてしまうシャリ。さぁ二人はどうなる?
 シドニーとパリ,地球の反対側で暮らす二人に将来はあるのか。リュックはどんな決意をするのでしょうか。そしてシャリは?魅力的な二人の愛の行方を,見事に描ききった秀作です。絵本作家らしいシャリの末尾の言葉が,とても洒落ています。


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